いつもの、あのゆっくりと指に触れる長い長い儀式のような行為が、結構大事なものだったことを知る。
野ネズミより心拍の速い動物を思い出せない。

クレフは私をずっと抱きしめたままでいてくれた。それが嬉しい。

気なんか使ってほしくない。
あなたが抱きしめたいと思ったら、たとえ私が嫌がったってそうしてほしい。そんな我儘なことを思う。

その時ふいに、クレフの大きな手が髪にもぐりこんできた。

知らない感覚がぞわぞわと上がってくる。
「クレ……、ん、あっ…ぁ、優し、ぃの……だめっ…」
こんな愛撫は知らない。
繊細で柔らかくて、肌から直接愛情を注がれるみたいな。

これって、増設メモリ（イーグル）のせい？
少し<感度設定（・・・・）>を下げないとまずい。

「ね、待ってってば……！」
「待たない。どうせ何か良からぬことを考えているだろう」
元刑事の勘は恐ろしい。曖昧で柔らかい刺激に、私の頭（回路）はもうぐちゃぐちゃになりかけていた。

「そん、…な、だって……これ…、」
クレフは頂から唇をちゅっと離し、唾液に濡れるそこを指でつんとつついた。
「ひゃっ……」
「かわいいな、ウミ」

「だめ…っ　声、でちゃ……」
パジャマの上から胸の先をついばみながら、クレフが手のひらで私の口を塞いだ。
息ができない。
ほどこされる甘い愛撫に、息が上がる。なのに酸素はまるで足りない。
酸欠すらも気持ち良い。生殺を握られてしまっているような感覚に頭がくらくらして、クレフが入ってきただけでイきそうになる。

水音が響かないように、ベッドが軋まないように。
後ろからきつく抱きしめられて、大きな手で口をふさがれて。