◆まとめ◆クレ海&ジェオイ
「私甘いものって苦手なのよ」
クリームチーズの中に大量の砂糖を投入しながら海は言った。
固く凍ったアイスクリームのようなツンとした声色と言い方。敵を作ることを恐れないのか、それともこんなことくらいでは敵が出来るとも思っていないのか。どちらにせよジェオはそんな彼女の生き方を好ましく思っている。
「〝こっち〟の材料で作るケーキの味見役がほしくて。だから、あなたは最高ね」
「そりゃ光栄」
「ケーキに百点ってないじゃない?」
「お?」
「スポンジを均一に焼き上げたり舌あたりの良いクリームを練り上げるのはあたりまえ。その及第点から百点満点に持っていくのって、不可能でしょ? 誰かにとってのおいしいは誰かにとっての甘すぎかもしれないし。誰かにとっての物足りないは誰かにとったらおいしいかもしれないもの」
「なるほどね」
味覚とはそういうものなのだから仕方がない。
海と自分で一つのケーキを作れば、それはターゲットとする人によっては不足もしくは過分になる。
「まあでも、そっち同士の味覚が一致してるならいいんじゃねえか」
「そっち同士?」
「おっと、無自覚か」
ジェオが言ってしばらく、海の、クリームチーズを混ぜる手が止まった。
「別に」
ツンとした言い方は溶解しかけたアイスクリームを思わせる。これはジャパニーズツンデレというものらしい。風から聞いた。
「そっちはいいわよね。ねえ、両想いってどんな感じ? こんなふうに女子と二人で部屋にこもっていても平気なくらいあなたたちの間には信頼関係があるってことなんでしょ?」
アイスの温度で海が言う。
「いいな」
呟いた声には「ずるい」というニュアンスが含まれていなくもなかった。
この世で叶う恋の数は決まっている。そう言わんばかりに。
何もこちらとて楽をして交際に至れたわけではないのだけれど。そんなことを1ミリほど言いたくなったがこらえ、ボウルの中にレモンシロップを数滴垂らしてやった。
「ごめんなさい」
「いいよ」
シロップを投入し終えたジェオがニッと笑った。
「私も……両想いになりたい」
呟いた涙がクリームに入っては大変なので、ジェオはボウルをそっと取り上げた。
「まあ、そうだな」
海のかわりに、クリームをなめらかにしながらジェオは言葉を探した。
「次は甘くないケーキを作ろうぜ」
海が頷く。レースのエプロンに涙が一粒落ちた。
クリームチーズの中に大量の砂糖を投入しながら海は言った。
固く凍ったアイスクリームのようなツンとした声色と言い方。敵を作ることを恐れないのか、それともこんなことくらいでは敵が出来るとも思っていないのか。どちらにせよジェオはそんな彼女の生き方を好ましく思っている。
「〝こっち〟の材料で作るケーキの味見役がほしくて。だから、あなたは最高ね」
「そりゃ光栄」
「ケーキに百点ってないじゃない?」
「お?」
「スポンジを均一に焼き上げたり舌あたりの良いクリームを練り上げるのはあたりまえ。その及第点から百点満点に持っていくのって、不可能でしょ? 誰かにとってのおいしいは誰かにとっての甘すぎかもしれないし。誰かにとっての物足りないは誰かにとったらおいしいかもしれないもの」
「なるほどね」
味覚とはそういうものなのだから仕方がない。
海と自分で一つのケーキを作れば、それはターゲットとする人によっては不足もしくは過分になる。
「まあでも、そっち同士の味覚が一致してるならいいんじゃねえか」
「そっち同士?」
「おっと、無自覚か」
ジェオが言ってしばらく、海の、クリームチーズを混ぜる手が止まった。
「別に」
ツンとした言い方は溶解しかけたアイスクリームを思わせる。これはジャパニーズツンデレというものらしい。風から聞いた。
「そっちはいいわよね。ねえ、両想いってどんな感じ? こんなふうに女子と二人で部屋にこもっていても平気なくらいあなたたちの間には信頼関係があるってことなんでしょ?」
アイスの温度で海が言う。
「いいな」
呟いた声には「ずるい」というニュアンスが含まれていなくもなかった。
この世で叶う恋の数は決まっている。そう言わんばかりに。
何もこちらとて楽をして交際に至れたわけではないのだけれど。そんなことを1ミリほど言いたくなったがこらえ、ボウルの中にレモンシロップを数滴垂らしてやった。
「ごめんなさい」
「いいよ」
シロップを投入し終えたジェオがニッと笑った。
「私も……両想いになりたい」
呟いた涙がクリームに入っては大変なので、ジェオはボウルをそっと取り上げた。
「まあ、そうだな」
海のかわりに、クリームをなめらかにしながらジェオは言葉を探した。
「次は甘くないケーキを作ろうぜ」
海が頷く。レースのエプロンに涙が一粒落ちた。