【クレ海+イーグル】の棚

「Can't go back my mission」
幼い頃、初めて見たあの色の名前を、きっと忘れることはない。
青と言ってしまえばそれきりなのだけれど、
そんな二音で表現するのが惜しいほどに、それは美しい色だった。
コックピットと自分の手は、目指した青とはまるで逆の、どす黒い赤色に染まっている。
体の底から上がってくる血液が少し腹立たしくもある。
血を吐き出す力があるなら、その分を少しでも、少しでも出力エネルギーに回してくれと願う。
愛機の腕が、かろうじて動いた。
この心を止めることなど、できなかった。
これでよかった。
セフィーロにたどり着くまではもたないと言われていた体が、ここまでもってくれた。
最後に、素敵な友人もできた。
幸せな人生だったと、たしかに思う。
後悔はしていない。
ただ、願わくば―
(FTOを駄目にしてしまってすみません)
ザズはきっと、大泣きをするだろう。まだ少し未熟なところがあるけれど、素直でいい子だから。
未成熟の精神にこんな形で影を落としてしまうことが申し訳ないし、悔いと言えば悔いになる。
それに―
(きっと、ジェオはものすごく、それはもうものすごく怒ってしまって泣くことも難しいでしょうから、どうか支えてあげてください)
自分が彼らの心に空けてしまう穴の大きさがどれほどのものなのか。
それは立場を逆にして考えれば容易に想像はついた。
〝命をかける〟ことは、存外簡単なようで存外残酷なことかもしれない。
すみません。国を頼みます。
父さんも、どうかお元気で。
眩い閃光のなか、痛みも苦しさも消え
いよいよあの世へ来たのかと。
ただ白い。光だけの世界。
地獄にしては美しすぎるし、
天国だとしたら人選を誤っているのではないか。
光の中、ぼんやりと人影が見えた。
自分よりもずいぶん低身長の、少女の姿が。
少女が、自分の名を静かに呼んだ。
金色の髪、かわいらしい声に、碧色の瞳。
ああ、と思う。
いよいよここが天国なのかどうかがわからなくなって、少し困っていると少女は尋ねた。
〝やりなおせるならば、どのような選択をしますか〟と。
それは確かに自分に向けられた声なのだけれど、少女が、自分自身に問いを投げているように見えなくもなかった。
「エメロード姫……」
焼けたはずの喉から、変わらぬ自分の声が発音されたことにイーグルは少し驚いた。
「やりなおさせてくれるんですか?」
冗談めいて尋ねると、少女は困ったようにはにかんだ。
〝それはできません。私にはそんな力はありませんから〟
でしょうね。微笑んでそんな返事をしたあと、イーグルは口を結び真面目な面持ちを見せ、今度は真摯たる声で言った。
「僕は……」
言いかけて、自分の指先が透けて見えていることに気付いた。
その時は近い。
来世があるのなら、自分が何を望むのか。
考える時間は、もう必要なかった。
「僕は、戦士としての死を選べたことを誇りに思っています」
― だからどうか
友たちに幸いを
― また巡り会えるなら、あなた達がいい
オートザムに祝福を
「Can't go back my mission」
end