【クレ海+イーグル】の棚





「世界の終わり」




この国の余命が決まった。

我が国の高性能機器によって弾き出された〝その期限〟までの誤差はせいぜい一、二秒程度のもので、何度大気調査をしても何度国家会議を開いてもそれは変わらなかった。

他国への移住申し込みがキャンセル待ちの枠まで埋まると、次に列がなされたのは尊厳尊重計画への申し込みだった。
提案・議決をしておきながら政治人たちはその回転の早さに驚く。
埋葬はない。それが申し込みの条件だった。早い話が安楽死だ。
始めの頃は顔色を悪くしていた実施担当者も、そのうちに平然として「もはやバーチャル。ゲームか何かをやっている気分だよ」とまで言い出し始めた。彼らには移住の優先権が与えられている。


外の世界と死後の世界へ。
一日に何百もの人口を減らしながら、オートザムは足早に終焉を迎えていく。
ガランとした――というのは国に対する表現として適切ではないがジェオ・メトロはたしかにそう感じていた――国を眺めながら、グラスをテーブルに置く。
船酔いなどするわけもないが、飲めない酒を口にしたので気分が悪い。
船内のフロアに根を生やしたようなボールチェアに腰を掛け、イーグルは同じく窓の外を眺めていた。
〝景色〟は〝地形〟になり、〝地形〟は星に変わっていく。
蝕まれた地表ももはや見えなくなると、イーグルは目を閉じ、膝の上で両手を組んだ。

「お前のせいじゃねえ」
痩せた頬を指の腹で撫で、ここ数か月で何百回と言った言葉をジェオが口にするとイーグルは静かに微笑んだ。

この国の最期を見届ける義務があります、とイーグルは言った。
最後の一人になるまできっとあの国にいたかったに違いない。

しかし、
ビジョン家長子の乗船は、命令よりも強い性質のものだった。
仲間の命を人質にされては、首を縦に振るしかなかった。
とはいえ、たとえ国に残ったところでどのみち死んでしまうのだから、ループする思考に頭がじんじんとしびれる。
まるで永遠を取り扱っているような気分だ。生きることも死ぬこともできない。
生と死の中間地点に漂い続けた数か月間だった。

酒をあおる。


「見つけた」とザズが言った。それから、恐ろしいほどに長い単語を口にし、それはどうやら目当ての星群の正式名称のようだった。
「新しい星、良い所だといいな」
ジェオとイーグルは頷くともなく、曖昧に反応を返した。
船首が前を向く。船が角度を変えるとオペレーターが乗組員たちに着席を促した。

船は間もなく〝新しい星〟に上陸する。

6/6ページ
スキ