マフィアの花と蝶

鴎外に任務の報告を終えた二人は部屋を出て、長い廊下を歩いていた。

「首領、ご機嫌だったわね。私達の任務が成功したからかしら?」
「…」
「次はどんな任務が…あっ、でも。私と花圃ちゃんなら大丈夫よね」

三宅は無口な性格であり、あまり話さない。しかし綾女は慣れているのか、三宅に明るく話しかけていた。その時、向かい側から一人の男が歩いて来た。

「…三宅さん、綾女。お疲れ様です」
「お疲れ様です、芥川さん」

歩いて来た男は、芥川 龍之介。ポートマフィアの構成員だ。綾女の先輩であり、三宅の部下。声をかけてきた芥川に対し、三宅は何も返さず、代わりに綾女が言葉を返した。

「任務の帰りか?」
「はい。今回も大成功だったんです。ね、花圃ちゃん」
「綾女、何度も言っているが三宅さんは上司だぞ」
「でも、花圃ちゃんは良いって…」
「だからって…」
「良い」

芥川と綾女の会話に、三宅が口を挟んだ。

「別に、気にしてない。タメ口でも、敬語でも。どっちでもいい」
「三宅さん…」

芥川は小さくため息をついた。

「…それじゃあ。私はもう行く」
「え、行くって、何処に…」

二人を置いてその場を去っていく三宅。三宅に問いかけようとした芥川だが、その問いに彼女が答えてくれる事はなかった。

「多分、あの場所ですよ」

代わりに、綾女が微笑みながらそう答えた。二人は三宅の後ろ姿を、ジッと見つめていた。
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