マフィアの花と蝶

「戻ったかね。ご苦労様。」

任務を終えた二人は、所属しているポートマフィアの本部へと戻り、ボスである森 鴎外の部屋へと足を運んだ。
ポートマフィアとは、港湾都市横浜を縄張りにする凶悪マフィア。
関東一円に多数存在する非合法組織間での抗争を生き残った屈強な闇組織で、数十を超える傘下の団体を抱え、保護した企業や商店からの上納金、買い付けた密輸商品での非合法商売、麻薬売買や闇カジノなどを財源に街を闇から取り仕切っている集団だ。そして、殺しの仕事も行う。

「今日も大活躍だったみたいだね。結果は…まぁ、聞くまでもないか。」

鴎外はフッと笑みをこぼした。

「私と花圃ちゃんのペアですもの。当然です。」

綾女は鴎外にそう言葉を返す。対する三宅は口を開かない。

「君達二人の仕事ぶりには目を見張るものがある。それに、君達の仕事はやはり美しいね。マフィアが仕事をした、とは考え難い。」

鴎外の言葉に、綾女は小さく笑いをこぼした。

「三宅君はどうかね?何か思う所は?」
「…別に…」

三宅は一言、ポツリとそう言葉を返す。

「私が何故、二人を組ませたか分かるかい?」

鴎外は二人にそう問いかける。

「花圃ちゃんから色々学ぶ為、ではないのですか?」

綾女は三宅と相棒という間柄だが、三宅は幹部、綾女は構成員。つまり、綾女にとって三宅は上司でもある。その為、綾女は成長する為に三宅と組んでいるのだと思っていた。

「それもあるけどね。それだけではない。一番美しいからだよ。花は何か思うでもなく、無心で蝶を招く。 蝶の方もまた、無心で花を尋ねる。 そんな風に、無心でする仕事こそが一番美しい。そうは思わないかい?」
「美しい…ですか…蝶と花だからか、相性がいいとは感じています。」

綾女の異能力 蝶々結び。
三宅の異能力 みだれ咲。

蝶を操る綾女と植物全般を操る三宅は、性格だけではなく能力も相性が良かった。

「花圃君も、綾女君と相性がいいと感じているかい?」
「…楽。」
「フフッ、大事な事だね。」

鴎外はフッと小さく笑いをこぼした。
1/2ページ
スキ