闇の感覚〜after〜
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「ふーんふーふふーん♪」
寝巻き姿で髪をタオルで拭きながら、ネムリはバスルームから出てきた。
家事もひと段落、お風呂も終えて就寝前のリラックスタイムだ。
どうしようかなぁ、とタオルを首に掛けていると、トントンと後ろから肩を叩かれた。
「んみゅ!?」
振り返り様に、ほっぺたをつん、と突かれて、間抜けな声が出てしまった。
振り返った先、お風呂上りなのにすでにいつものマスクを被ったマイケルが、両肩を震わせながらこちらを見つめている。
「も、もう!マイケルったら!」
頬を膨らませて突かれた頬を抑えていると、マイケルがよしよしと頭を撫でてきた。
ネムリが首にかけていたタオルを手に取ると、わしわしと髪を拭い始める。
「んっ…ありがと」
大きな手で優しくタオルで髪を拭く感覚は、とても安心感があって、心地よかった。
ネムリは目を細めて、そっと背後に立つマイケルの胸へともたれ掛かる。
マイケルはマスクの下で笑みを溢すと、ネムリを抱きしめた。
ネムリは愉快そうにマイケルの腕の中でふふと笑った。
ネムリの髪がすっかり乾いた頃、マイケルはネムリの髪を撫でると、抱きしめた身体を離した。
「ん?どうかした?マイケル」
ネムリが振り向くと、マイケルはじっとネムリを見つめた後、キッチンの方へ向かっていった。
一緒に居る時間が長いからこそ、ネムリは先ほどのマイケルの視線が何を言いたいか分かるようになっていた。
マイケルの目は、少し待っていて、と言っていた。
ネムリは頬杖をついて、大きな後ろ姿を見守った。
ガチャリと冷蔵庫を開ける音がして、マイケルが戻ってきた。
マイケルの手には赤と白のワインボトルと、綺麗なペアグラスがあった。
マイケルはネムリの方へとゆっくりやってきて、手にもった晩酌セットを差し出した。
ネムリは穏やかな笑みを浮かべてそれらを受け取る。
「いいね、マイケル。たまには呑もっか」
マイケルが微かに頷いてネムリの向かいの椅子に座る。
今度はネムリが入れ替わりに席を立ってキッチンに向かう。
冷蔵庫からチーズと、サラミを取り出してお気に入りの絵皿に盛り付ける。
そのまま持って行こうとして、ネムリはふと冷蔵庫にまだぴったりのご馳走が残っていたのを思い出した。
もう一度冷蔵庫の扉を開け、昨日作ったお手製のスモークチキンを皿に乗せていく。
軽くバジルを振りかけて、お皿の端にマヨネーズを添えて。
鼻腔を擽る燻煙の香りに、ネムリは自然と笑顔になった。
二人の酒宴を彩る名脇役たちを手に、ネムリもテーブルへと戻ってきた。
ニコニコと笑うネムリを眺め、マイケルもまたマスクの下で笑みを溢す。
食卓の上には、ペアのグラスと赤と白の対比が鮮やかなワインボトルが2本、絵皿に彩られたチーズとサラミ。
そしてお手製のスモークチキンが乗ったお皿がテーブルを彩っていた。
ネムリは赤ワインのボトルを手に取ると、マイケルがこちらに傾けているグラスの中へと徐々に色味を増していく鮮やかな赤色のワインをゆっくりと注いだ。
今度はマイケルが白ワインのボトルを手に取り、ネムリ両手を添えてこちらへ差し出すグラスの中へ薄らと黄金色に色づく透明な白色のワインを注ぎ返す。
伸ばした手の間、互いを見つめる眼差しの間で、カチン、とグラスが口付けを交わした。
「ふふっ。乾杯」
微笑みを交わし、二人はそれぞれのグラスに口をつける。
ゆっくりと口に含み、喉を微かに鳴らして嚥下していく。
鼻腔を抜けていく豊潤な香りに、ネムリはうっとりと目を細める。
そんなネムリを見つめて、マイケルもまた同じ様に目を細めた。
「美味しいね。」
ネムリの呟きに、お手製のスモークチキンを頬張っていたマイケルが大きく頷いた。
もう一つ、また一つと手を伸ばすマイケルの姿が、とても愛しく感じた。
にこやかで、穏やかな時間が過ぎていく。
ネムリが話し、マイケルがそれに頷く。
目線でネムリに愛を語り、今度はネムリが目を細めて見つめ返す。
そしてまたお互いを見つめて、フッと笑みをこぼした。
「…幸せだね。マイケル」
お互いに示し合わせる必要すらなく、またカチンとグラスの音が二人だけの幸せな部屋に響いた。