幽霊とウサギ(ゴスフェ)
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「あーこれもいい!あ、でもこれも捨てがたい!んっんー迷うなぁ…」
さっきから目の前で仮面の男の人、ゴスフェさんが色々な洋服を手に取っては放り投げてを繰り返し続けている。
色とりどりの様々な種類の洋服が、真っ黒なゴスフェさんによってベッドの上でひらひらと舞っている。
私はただただ呆気にとられてその様子を眺めるしかなかった…
「あ、あの…ゴスフェさん…?」
遠慮がちにネムリが洋服に夢中のゴーストフェイスに声をかける。
ゴーストフェイスは未だに洋服の選別を続けながら、目線だけをネムリに向けた。
「んー?ごめんねぇ。もう少し待っててー。なんせネムリに似合いそうな服がそりゃあもう沢山あり過ぎてて俺様困っちゃう!なんちってー」
めちゃくちゃ楽しそうに浮かれて騒いでいるゴーストフェイスの姿に、ネムリは口を噤むしかなかった。
出会ってまだそんなに経ってないとはいえ、聞いたことのない一人称まで出てきて、一体私はどうしたらいいんだろう…
不安げにワンピースの裾を握りしめて、俯いていると、よし決めた!!とやたら力強い声がして、ネムリはびくりと肩を竦めて顔を上げた。
ゴーストフェイスが手に持っていたのは、今着ているのと色違いのような、黒いホルターネックのワンピースだった。
声色からして、おそらく笑顔なのだろう。
真っ直ぐに洋服を差し出してくる様子に、ネムリはおずおずとその服へと手を伸ばそうとした。
すると、ゴーストフェイスはひょいと洋服を頭上に持ち上げた。
「え…?」
ハイテンションなゴーストフェイスに怯えつつ洋服を受け取ろうとしたのに、洋服は遥か頭上、ネムリの手の届かないところにあって、ネムリは首を傾げる。
なんとか手を伸ばして受け取ろうとすると、さらに頭上に持ち上げられる。
困惑もあるものの、ネムリはその場でぴょんぴょんと洋服に向かって飛び跳ねる。
「む…ん!…な、なんで…?」
「っ!!!!!はぁあ…かっわいいなぁネムリ…」
自分に向かって本当のウサギのように跳ねるネムリの姿に、ゴーストフェイスは仮面で覆われた口元に手を当てて身悶える。
ネムリは困惑で眉を寄せて上目遣いでゴーストフェイスを見上げる。
身悶えしていたゴーストフェイスに我慢などできるはずもなく、すぐさま手に持つ洋服ごとネムリの身体を抱きしめて小躍りしだした。
「きゃっ!?や、な、なに?」
突然の浮遊間に落とされないようにネムリは慌ててゴーストフェイスにしがみつく。
その反応にゴーストフェイスはさらに上機嫌になってぎゅうぎゅうとネムリを抱きしめた。
「っはぁあヤバイ。マジでヤバイわネムリ…可愛すぎて俺もうほんっとうに堪んない…」
白色の硬い感触の仮面越しに頬擦りされて、ネムリは困り顔のまま、ゴーストフェイスを見つめ返した。
「あ、あの…服…なんで?」
「んー?決まってるじゃない。俺が着せたいから」
急に低く囁くような声が耳元で聞こえた。
「へ…?」
瞬きをしている間に、首の後ろで結ばれたリボンがするりと解かれ、背中側からジー、とファスナーの落ちていく音がする。
片手でネムリを抱きしめたまま、とても器用にゴーストフェイスはネムリの服を脱がせようとしていく。
ネムリは慌ててゴーストフェイスに掴まっていた手を離し、胸元から下されそうな衣服を抑えようとする。
「やっ!?…きゅ、きゅうに何…」
「ネムリは知らないかなぁ?男が服を送る意味」
「い、意味…?」
意味も何も、ネムリはいきなりこの場所に連れてこられた身だ。
服どころか、衣食住の全てを目の前のこの男に頼らざるを得ない。
服を贈られる意味だとか、考える余地など最初から無いのだが…。
ネムリは頭にクエスチョンマークを浮かべたままゴスフェに問いかける。
「い、意味って…なんですか…?」
ゴーストフェイスは答えない。
無防備にさらされている首元に肉食獣が喰らいつくように口づけ、赤い痕を散らした。
「んっ!…な、何…」
首筋からじわりと広がる甘い痺れに身体をビクつかせるネムリに、ゴーストフェイスは喉を鳴らすようにして低く笑う。
耳元に寄せた唇が熱い吐息と共にそっと囁きかける。
「んー…脱がせるため、でしょ」
見開かれたネムリの目を見つめながら、ゴーストフェイスはワンピースをするすると引っ張っていく。
「あっ…そ、んな…」
いとも簡単にワンピースがネムリの身体から離れ、露わになった身体を隠そうとする。
しかし、ゴーストフェイスが抱きしめるせいでネムリはうまく身動きが取れない。
ま、また…ああいうことされるの?
つい先日、ゴーストフェイスに抱かれた時を思い出し、ネムリの顔がほんのり赤く染まる。
好きかどうかは全く分からないけど、不思議と嫌な気持ちにはならない。
僅かに期待すら滲ませる瞳で、ネムリはゴーストフェイスを見つめる。
ゴーストフェイスはネムリに仮面の下で笑いかけると、ばさりと上からワンピースを被せる。
「っふぇ!?」
「はい。ネムリばーんざい!」
「むっ…ふぁ!?」
目をパチパチさせ未だ混乱の治らないまま、ネムリはゴーストフェイスに言われるままに両手を上げ、気づいた時には黒いワンピースを身に纏っていた。
「え?…あれ?…え?」
「んっんー?どーしたの?ネムリそーんな驚いた顔して」
くく、とゴーストフェイスは笑う。
邪な期待をしてしまった自分がなんだか恥ずかしくて、ネムリは顔を赤らめて目を逸らす。
ゴーストフェイスは、んー?といいながらそんなネムリに擦り寄る。その声色からニヤついているのがありありと伺える。
「なぁにぃ?ネムリ?もしかして、期待してた?こういうコト…」
うなじに生暖かい感触がして、何かがぬるりと滑っていく。
続々と背骨を駆ける感覚に、ネムリは思わず仰反る。
「ひゃうっ!?ん、やぁ…」
ふるりと震えたネムリの肩をべろりと舐め上げ、チュッとリップ音を立ててゴーストフェイスはまた笑った。
「んー!かぁわいい。このまま食べちゃいたいけど…」
「はっ…んっ…きゃっ!?」
吐息を溢して目を潤ませるネムリを、ゴーストフェイスは再び抱き上げる。
ネムリの額にそっと口付けてから、ゴーストフェイスは素早く仮面を被り直した。
「お披露目が済んでから、たっぷり可愛がってあげるからね。」
「お、お披露目…?」
「そ!お披露目。俺だけの可愛いウサギちゃんを自慢してやりたい奴がいるんだよねぇ。他の奴にも見せてやりたいし」
ゴーストフェイス以外の人に会う…ってこと?
一体どんな人がいるというのだろう…
突然連れてこられ、名前を無くし、ゴーストフェイス以外頼るものがいない今の状況で、不安にならないわけがない。
反射的にネムリはゴーストフェイスの服をギュッと握りしめる。
怯えるネムリの姿に内心身悶えしつつも、ゴーストフェイスは縮こまるネムリをしっかりと抱きしめ、上機嫌で部屋を出て行った。