闇の感覚(マイケル)
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気まずい食事を終え、ネムリは再びベッドの上へと戻っていた。
誘拐されて監禁されている身だ。
やることや、やらなければいけないことなど何もない。
やりたいこと、ならあるけれど…。
ちらり、と外へと続く階段を見やる。
階段の上は相変わらず大きなチェストに塞がれたままで、外の様子など何もわからない。
一体どうしたらいいんだろう…。
思案に暮れる中、座り込んだベッドが、ぎしり、と軋んだ。
弾かれるように顔を上げると、ネムリを覗き込むようにしてマイケルがベッドに腰掛けていた。
「なっ、なぁに?」
「……」
マイケルはなにも答えずただじっとネムリを見つめる。
一体、なにを考えているのだろう。
いつも筆談などで意思表示をしてきたので、こんな風に無言で来られると、ネムリはどうしていいかわからなかった。
「一体、何なの?」
「……」
「きゃっ!」
何の前触れもなく、マイケルが身体を抱きしめてくる。
頬に白いマスクの口の部分が何度も触れる。
冷たくてふにっとした感触がなんだか不思議だった。
「んっ!冷たっ!」
「……!!」
思っていたよりマスクの冷たさに震えていると、マイケルがビクッとした後固まってしまった。
何故かガーン、と効果音が聞こえてくるような気がする。
暫く硬直したのち、またも前触れなく、マイケルはネムリを横抱きにして抱え上げた。
「わっ!!も、もう。何なの急に…」
「……♪」
何だかよくわからないが、マイケルは足取り軽く、すこし楽しげな様子で部屋を歩いていく。
運ばれる形でこっそりと周囲の様子を見る。
キッチンには食パンの入った袋や野菜などの食材が並べられている。
あ、そっか。当たり前だけど、あのご飯作ってくれたのって、マイケルだったのか…。
まさかあの包丁じゃないよね!?
儀式愛用の血塗れ包丁じゃないことを願いつつ、シンクの中に小綺麗な包丁とまな板があるのを見て、ちゃんと分けてくれていたことに心底ほっとした。
運ばれるままダイニングテーブルを通り過ぎると、昨日は気づかなかったが、古ぼけた扉が見えた。
扉のすぐ隣にはクローゼットらしき家具もある。
何?あの扉…
見慣れない木の扉の奥に何があるのか、ネムリにはわからない。
昨日この部屋に連れてこられたばかりでわかるわけがないのだが、得体が知れなくて身体が震えた。
彼は間違いなく、殺人鬼なのだ。
あの部屋が拷問部屋なり、死体置き場になっている可能性も無いとは言えない。
くん、と鼻を動かしてみる。
幸い血のような臭いは何もしない。ドアが閉まっているので、その奥が血溜まりだとしたらどうしようもないが…。
怯えを出すまいと、ネムリは自分の身体をそっと抱きしめる。
マイケルはネムリの怯えになど気づくはずもなく、片手でネムリを抱え直すと謎の扉を開け放った。
「えっ…バスルーム…?」
開かれた扉の先は、青いタイルの敷き詰められた小綺麗なバスルームだった。
パチリ、と音がして中が明るくなる。
リビング?らしき部屋と比べるとランタンではなく蛍光灯が付いてるせいかかなり明るく感じる。
バスタブの縁に腰かける形で降ろされる。
その直後に、
かちり。
静かに、しかし確かに響く音がした。
「えっ!?」
音の方を見ると、後ろ手にマイケルがドアの鍵を締めていた。
そのままゆっくりとこちらに向かってくる。
「やっ、こ、こないでっ」
後ずさるも背中はすぐ冷たいタイルに触れる。
「ひゃっ!?」
あまりの冷たさに反射的に壁から身体を離すと、すぐ目の前まで迫ってきていたマイケルに抱きつく形になってしまった。
「…!!!」
にじり寄ってきていたマイケルが固まる。
「あっ、ご、ごめんなさ」
慌てて離れようとすると、そのままギュッと抱きしめられる。
顔に当たるマスクが冷たい。
ずらそうと身動ぐと、ふと暖かく柔らかいものが頬に触れた。
「んっ…」
いつの間にマスクをずらしたのか、マイケルの素の唇が、ネムリの頬に口づけていた。
マスクとは全く違う、暖かく柔らかい、人の感触。
頬に目尻に、鼻先に、次々に口づけが降り注ぎ、最後にそっと唇に触れてきた。
「んんっ…ふっ…」
あまりにも優しい口付けだった。
愛しく、慈しむように柔らかく触れる口付けの雨。
彼が殺人鬼で、自分が彼の囚われであることなど一瞬忘れてしまうほど、ネムリはマイケルとの口付けに夢中になっていた。
「あっ…マイケル」
唇が離れたときに、とっさに唇から溢れたのは、別れを惜しむような縋るような声だった。
マイケルの唇が、今度はネムリの首筋に触れる。
「んっ!!やっ…くすぐった」
身を捩るも、首筋への口付けは止まらない。
滑るように鎖骨へ、微かに開いた胸元の隙間へと口付けられる。
甘くくすぐったい感覚に、ネムリは押し留めるようにマイケルの頭に手を添える。
マイケルからすれば、抱きしめ返されたような感覚だった。
口元に笑みを浮かべ、マイケルはネムリの胸元に唇で紅い華を咲かせる。
「んんっ!あっ…」
チリッとした痛みと、甘いじんわりとした痺れが体に広がっていく。
過敏になった首筋を、マイケルの舌が伝っていく。
柔らかく熱い舌が、まるでネムリの首筋に喰らい付くように執拗に這う。
その度にネムリの身体は震え、救いを求めるように、マイケルの頭にしがみつく。
「あっ…ぁあん…」
ピクピクと身体を震わせている間に、ネムリの着ていたシャツは全てはだけ、かろうじて袖が腕に纏わり付くのみとなっていた。
熱を持ち出した身体から、いとも容易く最後の衣が剥がされていく。
ネムリの胸元に舌を這わせたまま、マイケルも自身の服へと手をかける。
このままじゃっ…
流されちゃいけない、と辛うじて頭の端に残った理性が警鐘を鳴らす。
拒もうと手を伸ばすも、
「やっ!?あっああっ!!」
胸の先端に唇が触れただけで、力が抜けてしまう。
伸ばした手は力なく、マイケルの胸板に添えられただけに終わった。
掌に感じる、マイケルの身体。
昨日抱かれたときには感じなかった、マイケルの素肌はとても熱を持っていた。
日に当たらないからだろうか、マイケルの肌はとても白く、滑らかだ。
筋肉のついた、引き締まった逞しい身体に、ネムリは無意識に感嘆のため息を吐いていた。
着ていた繋ぎを腰まで脱ぐと、マイケルはネムリを抱きしめてきた。
熱い身体同士が隙間なく触れ合い、硬い胸板の間でネムリの胸が柔らかく潰される。
「んっ!」
胸の先端が擦れるだけで、ぴくり、体が震えた。
そっと見上げた先、マイケルの唇がネムリに迫ってくる。
拒まなきゃ…
拒まなきゃいけない…のに…
ネムリはそっと目を閉じた。
ぬるり、と唇を這う熱い舌。
微かに唇を開くと、舌が口内へと滑り込んでくる。
くちゅりくちゅりと、舌が絡み合うイヤらしい水音が、バスルームのタイルに反響して響いている。
マイケルの手が耳を塞いでくる。
脳内まで掻き回すように、口内を蹂躙する快楽の音にネムリは目を潤ませ、重なり合う唇の隙間から熱い吐息を溢す。
「ひゃっ…あっふぅ…ッん」
唇を貪りつつ、マイケルの手が胸に触れる。
何度も形を確かめるように揉まれ、時折先端を爪先が掠めていく。
腹の奥がドクンと脈打つように何度も震え、ネムリは身体を蝕む熱と軽い目眩に襲われていた。
「あっあぁ…マイケルっ…マイケル」
「……ハッ…」
お互い荒い呼吸で、相手を求め合う。
マイケルの指が下腹部に触れ、何の前触れもなく、ずぷりとネムリの中に沈んだ。
「やっあぁ!!!」
中を蠢く指の感触に、ネムリは甘い悲鳴を上げる。
浅い部分を何度も引っ掻くように指が出入りする。
その度にイヤらしい水音が反響し、腹の奥がまた疼いてしまう。
「.あっ!!んんん!やぁ!ま、いけるぅ!!だッ…めぇ!」
悶えるネムリの耳元にマイケルの熱い吐息が掛かる。
ーわかる?指3本も入って…イヤらしくて、可愛い… ネムリー
「やあっ!!そ、な…っ!言…っちゃ、やだぁ!」
キュン、と今まで以上に中が反応してしまった。
意識しなくても、勝手に身体がマイケルの指を締め上げてしまう。
その度に身体は貪欲に快感を貪り、またマイケルの指を締め付けて勝手に上り詰めていく。
「はぁっ…あっあ!マイケルっ!も、だめぇ!」
ガクガクと足が震えだし、あと一歩、快楽の頂へ足を踏み出そうとした途端、ずるり、とマイケルの指が中から出て行った。
「.はぅ!…え?っん…ぁあ」
身体を襲う虚無感と、抑えようのない疼きがネムリの身体を勝手に震わせる。
あと一歩のところで繋ぎ止められたネムリの身体では、熱い劣情の炎が燻っていた。
「あっ…なんで…」
マイケルの口元がにやりと笑っていた。
もどかしそうにマイケルは自身に纏わり付く衣類を脱ぎ捨てていく。
目の前で露わになっていくマイケルの身体。
いやでも視界に入るそそり勃つマイケルのそれを、ネムリはついじっと見つめてしまう。
自身を物欲しそうに見つめるネムリに、マイケルも昂りが止まらなかった。
バスタブに腰かけるネムリの足の間に自身の体をねじ込む。
あっ、と微かな嬌声がネムリの唇から溢れる。
期待の先走りで濡れる先端が、つつくようにネムリの花弁に触れる。
くちゅり、と触れ合った部分が音を立てる。
抗えない身体の熱に、ネムリの腰が勝手に揺らめく。
「んんっ…はッ」
熱の篭る腹部がうずいて堪らない。
物欲しげにひくつくそこをより焦らすように、マイケルの熱い肉棒がぐちゅぐちゅと音を立てながらなぞる。
熱い先端が快感の芽をかするだけで、ネムリの口から甘い悲鳴が上がる。
「やっあっ…」
「……ハァッ…ッ!」
お互いとっくに身体は限界のはずなのに、なおもマイケルはネムリの花弁を押し開こうとはしない。
堪らない…
欲しい…
腹の奥の奥、蜜が溢れ出る部分が疼いて疼いてどうしようもない。
ネムリの唇から、熱い吐息と共に欲望がこぼれ出る。
「まいけるぅ…も、だめ。欲しいっ…っん…い、れてぇ」
ネムリは自らの花弁に手を触れ、指先でくちゅりと入口を押し開く。
マイケルの聞き出したくて仕方なかった一言が、蠱惑的で淫らな仕草と共に溢れ出た。
ネムリの唇が物欲しげに溢れた吐息を、マイケルの舌が絡めとり、吸い上げる。
唇を舐めて顔を離すと同時に、ゆっくりと、ネムリの花弁を押し開いて、マイケルが入ってくる。
待ちわびた刺激にネムリから、はぁと溜息が溢れた。
狭い肉壺はより奥へとマイケルを誘い込むように、締め付けながら蠢く。
マイケルもまた荒々しく息を吐き、抗い難い肉欲に溺れていた。
視界に広がるのは、うっとりと恍惚とした顔でマイケルを受け入れるネムリの姿。
このまま欲に身を任せ、思う存分腰を打ち付けてしまいたい。
しかしマイケルは歯を食いしばって、入口の浅い部分で挿入を止めゆるゆると軽く揺するように腰を動かす。
「あっああっ…んぅう…や、やぁあ」
「…ッ……ッ!…ハッ」
「やっあぁ…ま、いけるっ…!それぇ…ッやっ」
もっと奥に欲しい。
浅い部分の挿入だけでは全然物足りなくて、ネムリは腰を持ち上げ、より奥へとマイケルを加え込もうと身を捩る。
堪らず目からこぼれ落ちる快楽の涙を、マイケルは舌で舐めとる。
そのまま耳元にフッと息を吹きかけ、ネムリの背にぞわぞわと快感が走る。
「んんっやぁあ…も、もう許してぇ」
耳朶を噛み、熱くぬめる舌が耳を犯す。
脳内にこだまする欲に濡れ切った水音に、子宮が疼いてまた蜜をこぼしてしまう。
尚も浅瀬のみをゆっくりと出入りする肉棒に、理性が蕩け切ったのはネムリの方だった。
力なく開いたままだった足が、ゆっくりと白蛇のような動きでマイケルの足に絡みつく。
そのまま、より奥へ加え込もうと、足が抱え込むように、マイケルの腰を抱き寄せようとする。
「やぁっ…まいけるぅ…も、無理なの…おく…おくまでッ…頂戴ッ…あっ…おくっ…ずぷずぶしてぇえッ」
蕩け切った懇願に、待ってましたとばかりに勢いよくマイケルが最奥を貫いた。
「かッ!?…ハッぁあああ!!!」
衝撃に一瞬息が詰まる。
その直後に身体を貫く凄まじい絶頂に、ネムリの身体はビクビクと跳ねた。
マイケルを包み込むネムリの肉壺も、全てを喰らい尽くし、絞り尽くそうと凄まじい収縮を繰り返す。
直ぐにでも吐精したくなるのをなんとか堪え、マイケルは貪るように腰を打ち付けた。
「きゃぅううん!?ひゃっ…ふぅああぅ!!あっあぁッ!!」
「ッ!!ッハッ…ハァッ!!…ッア…!!」
快楽の頂きから戻ることなく、ネムリの身体は何度も絶頂の階段を際限なく駆け上がっていく。
その度にネムリの中は激しく唸り、マイケルの全てを飲み込もうとしてくる。
激しい吐息の合間に、マイケルのくぐもった低い声が漏れる。
マイケルのマスクの隙間から溢れ出た汗が、ネムリの涙で濡れた頬を伝う。
熱い…
思わずネムリはマイケルの頬へ手を伸ばしていた。
ネムリの手が、マイケルのマスクの内側へと滑り込む。
一瞬びくつくものの、マイケルは律動を緩めることなく、ネムリの好きにさせている。
マスクの内側は、まるで湯に手をつけているほど熱かった。
汗ばんだ肌が、未だ見たことのないマイケルの柔らかい髪がネムリの掌に纏わり付く。
そのままマスクを外そうとすると、
ズンッ!!
「きゃっ!?あっぁああああ!!!」
腰を掴まれ、最奥の入り口を肉棒で貫かれてしまった。
手から力が抜けてしまう。
「やっ…あっ!?かおっ、だ、め…?」
マイケルは滑り落ちたネムリの手を掴むと、その掌にちゅっ、と音を立てて口付けた。
理由はわからない。
熱と快楽に飲み込まれたネムリに、理性的な判断などできるはずもなかった。
でも、このとき確かにネムリの心には寂しいという感情が浮かんでいた。
待ちに待った快楽を与えられ、奥深くまで繋がって、隙間もないほど肌を重ね合わせているのに、ネムリはなぜか満たされない寂寥感で胸が締め付けられていた。
ネムリはきゅっと口を閉じると、荒い息を溢すマイケルの口に、初めて自分から口付けた。
白いマスクの下、ネムリには見えないマイケルの目が、驚きで見開かれていた。
「んっ…マイケル…っ…ハッ…つづき…しよ?」
唇の端からこぼれ落ちる唾液を舐めとり、ネムリが妖艶に微笑む。
愛しい人からの誘惑に抗う術など、マイケルは持ち合わせてはいない。
いや、むしろ不要だった。
滾りに滾った情欲を、全てぶつけきるようにマイケルはネムリの蜜壺を穿つ。
「あっはぁああん!!んっんうう!!あっあっあぁあ!!」
「グッ!!ッ…ハッ…ハッァ…ッ!!」
「ま、いけるっ!!まいけるぅうっ!!あっ!!イイッ!!イックぅう…ッ!!」
「ッア…!!…ッネムリ!!…ッ!!!」
強く強く抱きしめ合って、ネムリとマイケルは同時に果てた。
どくりどくりと激しく注がれる子種を、全て飲み干すようにネムリの蜜壺がきゅうきゅうと絞り尽くす。
お互い荒い息のまま、ピタリと抱き合う。
胸元にもたれ掛かるネムリの額にマイケルが口付ける。
「んっ…」
小さく吐息を漏らし、薄らとネムリが目を開いてマイケルを見つめる。
マイケルの口元は緩く弧を描き、真っ暗なマスクの隙間から覗く目が、じっとネムリを見つめ返している。
未だ情事の熱に浮かされたまま、ネムリは無意識に微笑みを浮かべ、マイケルの口元にキスをしようとした。
ちゅ…
しかし、触れた先はマイケルの口元ではなく、顎の辺りだった。
ぷに、と柔らかい感触がマイケルの顎に当たる。
朦朧とした意識では身長差など到底頭にはなかったのだろう。
そんな仕草も可愛くて、マイケルはネムリの汗ばんだ髪をかき上げ、撫でる。
こっち…というようにトン、と自身の唇を指差すも…
「すー…」
「…!?」
先程まで薄らと開いていた目は、今は固く閉ざされ、妖艶に微笑んでいた口元からはすやすやと穏やかな寝息が聞こえていた。
なんだか肩透かしを喰らったような気分がした。
それでも嬉しくて、内から込み上げてくるような幸福感に耐えきれず、つい口元が緩んでしまった。
自分からそっと、眠るネムリの唇に口付け、マイケルは直ぐそばのバスタブの蛇口を捻った。
誘拐されて監禁されている身だ。
やることや、やらなければいけないことなど何もない。
やりたいこと、ならあるけれど…。
ちらり、と外へと続く階段を見やる。
階段の上は相変わらず大きなチェストに塞がれたままで、外の様子など何もわからない。
一体どうしたらいいんだろう…。
思案に暮れる中、座り込んだベッドが、ぎしり、と軋んだ。
弾かれるように顔を上げると、ネムリを覗き込むようにしてマイケルがベッドに腰掛けていた。
「なっ、なぁに?」
「……」
マイケルはなにも答えずただじっとネムリを見つめる。
一体、なにを考えているのだろう。
いつも筆談などで意思表示をしてきたので、こんな風に無言で来られると、ネムリはどうしていいかわからなかった。
「一体、何なの?」
「……」
「きゃっ!」
何の前触れもなく、マイケルが身体を抱きしめてくる。
頬に白いマスクの口の部分が何度も触れる。
冷たくてふにっとした感触がなんだか不思議だった。
「んっ!冷たっ!」
「……!!」
思っていたよりマスクの冷たさに震えていると、マイケルがビクッとした後固まってしまった。
何故かガーン、と効果音が聞こえてくるような気がする。
暫く硬直したのち、またも前触れなく、マイケルはネムリを横抱きにして抱え上げた。
「わっ!!も、もう。何なの急に…」
「……♪」
何だかよくわからないが、マイケルは足取り軽く、すこし楽しげな様子で部屋を歩いていく。
運ばれる形でこっそりと周囲の様子を見る。
キッチンには食パンの入った袋や野菜などの食材が並べられている。
あ、そっか。当たり前だけど、あのご飯作ってくれたのって、マイケルだったのか…。
まさかあの包丁じゃないよね!?
儀式愛用の血塗れ包丁じゃないことを願いつつ、シンクの中に小綺麗な包丁とまな板があるのを見て、ちゃんと分けてくれていたことに心底ほっとした。
運ばれるままダイニングテーブルを通り過ぎると、昨日は気づかなかったが、古ぼけた扉が見えた。
扉のすぐ隣にはクローゼットらしき家具もある。
何?あの扉…
見慣れない木の扉の奥に何があるのか、ネムリにはわからない。
昨日この部屋に連れてこられたばかりでわかるわけがないのだが、得体が知れなくて身体が震えた。
彼は間違いなく、殺人鬼なのだ。
あの部屋が拷問部屋なり、死体置き場になっている可能性も無いとは言えない。
くん、と鼻を動かしてみる。
幸い血のような臭いは何もしない。ドアが閉まっているので、その奥が血溜まりだとしたらどうしようもないが…。
怯えを出すまいと、ネムリは自分の身体をそっと抱きしめる。
マイケルはネムリの怯えになど気づくはずもなく、片手でネムリを抱え直すと謎の扉を開け放った。
「えっ…バスルーム…?」
開かれた扉の先は、青いタイルの敷き詰められた小綺麗なバスルームだった。
パチリ、と音がして中が明るくなる。
リビング?らしき部屋と比べるとランタンではなく蛍光灯が付いてるせいかかなり明るく感じる。
バスタブの縁に腰かける形で降ろされる。
その直後に、
かちり。
静かに、しかし確かに響く音がした。
「えっ!?」
音の方を見ると、後ろ手にマイケルがドアの鍵を締めていた。
そのままゆっくりとこちらに向かってくる。
「やっ、こ、こないでっ」
後ずさるも背中はすぐ冷たいタイルに触れる。
「ひゃっ!?」
あまりの冷たさに反射的に壁から身体を離すと、すぐ目の前まで迫ってきていたマイケルに抱きつく形になってしまった。
「…!!!」
にじり寄ってきていたマイケルが固まる。
「あっ、ご、ごめんなさ」
慌てて離れようとすると、そのままギュッと抱きしめられる。
顔に当たるマスクが冷たい。
ずらそうと身動ぐと、ふと暖かく柔らかいものが頬に触れた。
「んっ…」
いつの間にマスクをずらしたのか、マイケルの素の唇が、ネムリの頬に口づけていた。
マスクとは全く違う、暖かく柔らかい、人の感触。
頬に目尻に、鼻先に、次々に口づけが降り注ぎ、最後にそっと唇に触れてきた。
「んんっ…ふっ…」
あまりにも優しい口付けだった。
愛しく、慈しむように柔らかく触れる口付けの雨。
彼が殺人鬼で、自分が彼の囚われであることなど一瞬忘れてしまうほど、ネムリはマイケルとの口付けに夢中になっていた。
「あっ…マイケル」
唇が離れたときに、とっさに唇から溢れたのは、別れを惜しむような縋るような声だった。
マイケルの唇が、今度はネムリの首筋に触れる。
「んっ!!やっ…くすぐった」
身を捩るも、首筋への口付けは止まらない。
滑るように鎖骨へ、微かに開いた胸元の隙間へと口付けられる。
甘くくすぐったい感覚に、ネムリは押し留めるようにマイケルの頭に手を添える。
マイケルからすれば、抱きしめ返されたような感覚だった。
口元に笑みを浮かべ、マイケルはネムリの胸元に唇で紅い華を咲かせる。
「んんっ!あっ…」
チリッとした痛みと、甘いじんわりとした痺れが体に広がっていく。
過敏になった首筋を、マイケルの舌が伝っていく。
柔らかく熱い舌が、まるでネムリの首筋に喰らい付くように執拗に這う。
その度にネムリの身体は震え、救いを求めるように、マイケルの頭にしがみつく。
「あっ…ぁあん…」
ピクピクと身体を震わせている間に、ネムリの着ていたシャツは全てはだけ、かろうじて袖が腕に纏わり付くのみとなっていた。
熱を持ち出した身体から、いとも容易く最後の衣が剥がされていく。
ネムリの胸元に舌を這わせたまま、マイケルも自身の服へと手をかける。
このままじゃっ…
流されちゃいけない、と辛うじて頭の端に残った理性が警鐘を鳴らす。
拒もうと手を伸ばすも、
「やっ!?あっああっ!!」
胸の先端に唇が触れただけで、力が抜けてしまう。
伸ばした手は力なく、マイケルの胸板に添えられただけに終わった。
掌に感じる、マイケルの身体。
昨日抱かれたときには感じなかった、マイケルの素肌はとても熱を持っていた。
日に当たらないからだろうか、マイケルの肌はとても白く、滑らかだ。
筋肉のついた、引き締まった逞しい身体に、ネムリは無意識に感嘆のため息を吐いていた。
着ていた繋ぎを腰まで脱ぐと、マイケルはネムリを抱きしめてきた。
熱い身体同士が隙間なく触れ合い、硬い胸板の間でネムリの胸が柔らかく潰される。
「んっ!」
胸の先端が擦れるだけで、ぴくり、体が震えた。
そっと見上げた先、マイケルの唇がネムリに迫ってくる。
拒まなきゃ…
拒まなきゃいけない…のに…
ネムリはそっと目を閉じた。
ぬるり、と唇を這う熱い舌。
微かに唇を開くと、舌が口内へと滑り込んでくる。
くちゅりくちゅりと、舌が絡み合うイヤらしい水音が、バスルームのタイルに反響して響いている。
マイケルの手が耳を塞いでくる。
脳内まで掻き回すように、口内を蹂躙する快楽の音にネムリは目を潤ませ、重なり合う唇の隙間から熱い吐息を溢す。
「ひゃっ…あっふぅ…ッん」
唇を貪りつつ、マイケルの手が胸に触れる。
何度も形を確かめるように揉まれ、時折先端を爪先が掠めていく。
腹の奥がドクンと脈打つように何度も震え、ネムリは身体を蝕む熱と軽い目眩に襲われていた。
「あっあぁ…マイケルっ…マイケル」
「……ハッ…」
お互い荒い呼吸で、相手を求め合う。
マイケルの指が下腹部に触れ、何の前触れもなく、ずぷりとネムリの中に沈んだ。
「やっあぁ!!!」
中を蠢く指の感触に、ネムリは甘い悲鳴を上げる。
浅い部分を何度も引っ掻くように指が出入りする。
その度にイヤらしい水音が反響し、腹の奥がまた疼いてしまう。
「.あっ!!んんん!やぁ!ま、いけるぅ!!だッ…めぇ!」
悶えるネムリの耳元にマイケルの熱い吐息が掛かる。
ーわかる?指3本も入って…イヤらしくて、可愛い… ネムリー
「やあっ!!そ、な…っ!言…っちゃ、やだぁ!」
キュン、と今まで以上に中が反応してしまった。
意識しなくても、勝手に身体がマイケルの指を締め上げてしまう。
その度に身体は貪欲に快感を貪り、またマイケルの指を締め付けて勝手に上り詰めていく。
「はぁっ…あっあ!マイケルっ!も、だめぇ!」
ガクガクと足が震えだし、あと一歩、快楽の頂へ足を踏み出そうとした途端、ずるり、とマイケルの指が中から出て行った。
「.はぅ!…え?っん…ぁあ」
身体を襲う虚無感と、抑えようのない疼きがネムリの身体を勝手に震わせる。
あと一歩のところで繋ぎ止められたネムリの身体では、熱い劣情の炎が燻っていた。
「あっ…なんで…」
マイケルの口元がにやりと笑っていた。
もどかしそうにマイケルは自身に纏わり付く衣類を脱ぎ捨てていく。
目の前で露わになっていくマイケルの身体。
いやでも視界に入るそそり勃つマイケルのそれを、ネムリはついじっと見つめてしまう。
自身を物欲しそうに見つめるネムリに、マイケルも昂りが止まらなかった。
バスタブに腰かけるネムリの足の間に自身の体をねじ込む。
あっ、と微かな嬌声がネムリの唇から溢れる。
期待の先走りで濡れる先端が、つつくようにネムリの花弁に触れる。
くちゅり、と触れ合った部分が音を立てる。
抗えない身体の熱に、ネムリの腰が勝手に揺らめく。
「んんっ…はッ」
熱の篭る腹部がうずいて堪らない。
物欲しげにひくつくそこをより焦らすように、マイケルの熱い肉棒がぐちゅぐちゅと音を立てながらなぞる。
熱い先端が快感の芽をかするだけで、ネムリの口から甘い悲鳴が上がる。
「やっあっ…」
「……ハァッ…ッ!」
お互いとっくに身体は限界のはずなのに、なおもマイケルはネムリの花弁を押し開こうとはしない。
堪らない…
欲しい…
腹の奥の奥、蜜が溢れ出る部分が疼いて疼いてどうしようもない。
ネムリの唇から、熱い吐息と共に欲望がこぼれ出る。
「まいけるぅ…も、だめ。欲しいっ…っん…い、れてぇ」
ネムリは自らの花弁に手を触れ、指先でくちゅりと入口を押し開く。
マイケルの聞き出したくて仕方なかった一言が、蠱惑的で淫らな仕草と共に溢れ出た。
ネムリの唇が物欲しげに溢れた吐息を、マイケルの舌が絡めとり、吸い上げる。
唇を舐めて顔を離すと同時に、ゆっくりと、ネムリの花弁を押し開いて、マイケルが入ってくる。
待ちわびた刺激にネムリから、はぁと溜息が溢れた。
狭い肉壺はより奥へとマイケルを誘い込むように、締め付けながら蠢く。
マイケルもまた荒々しく息を吐き、抗い難い肉欲に溺れていた。
視界に広がるのは、うっとりと恍惚とした顔でマイケルを受け入れるネムリの姿。
このまま欲に身を任せ、思う存分腰を打ち付けてしまいたい。
しかしマイケルは歯を食いしばって、入口の浅い部分で挿入を止めゆるゆると軽く揺するように腰を動かす。
「あっああっ…んぅう…や、やぁあ」
「…ッ……ッ!…ハッ」
「やっあぁ…ま、いけるっ…!それぇ…ッやっ」
もっと奥に欲しい。
浅い部分の挿入だけでは全然物足りなくて、ネムリは腰を持ち上げ、より奥へとマイケルを加え込もうと身を捩る。
堪らず目からこぼれ落ちる快楽の涙を、マイケルは舌で舐めとる。
そのまま耳元にフッと息を吹きかけ、ネムリの背にぞわぞわと快感が走る。
「んんっやぁあ…も、もう許してぇ」
耳朶を噛み、熱くぬめる舌が耳を犯す。
脳内にこだまする欲に濡れ切った水音に、子宮が疼いてまた蜜をこぼしてしまう。
尚も浅瀬のみをゆっくりと出入りする肉棒に、理性が蕩け切ったのはネムリの方だった。
力なく開いたままだった足が、ゆっくりと白蛇のような動きでマイケルの足に絡みつく。
そのまま、より奥へ加え込もうと、足が抱え込むように、マイケルの腰を抱き寄せようとする。
「やぁっ…まいけるぅ…も、無理なの…おく…おくまでッ…頂戴ッ…あっ…おくっ…ずぷずぶしてぇえッ」
蕩け切った懇願に、待ってましたとばかりに勢いよくマイケルが最奥を貫いた。
「かッ!?…ハッぁあああ!!!」
衝撃に一瞬息が詰まる。
その直後に身体を貫く凄まじい絶頂に、ネムリの身体はビクビクと跳ねた。
マイケルを包み込むネムリの肉壺も、全てを喰らい尽くし、絞り尽くそうと凄まじい収縮を繰り返す。
直ぐにでも吐精したくなるのをなんとか堪え、マイケルは貪るように腰を打ち付けた。
「きゃぅううん!?ひゃっ…ふぅああぅ!!あっあぁッ!!」
「ッ!!ッハッ…ハァッ!!…ッア…!!」
快楽の頂きから戻ることなく、ネムリの身体は何度も絶頂の階段を際限なく駆け上がっていく。
その度にネムリの中は激しく唸り、マイケルの全てを飲み込もうとしてくる。
激しい吐息の合間に、マイケルのくぐもった低い声が漏れる。
マイケルのマスクの隙間から溢れ出た汗が、ネムリの涙で濡れた頬を伝う。
熱い…
思わずネムリはマイケルの頬へ手を伸ばしていた。
ネムリの手が、マイケルのマスクの内側へと滑り込む。
一瞬びくつくものの、マイケルは律動を緩めることなく、ネムリの好きにさせている。
マスクの内側は、まるで湯に手をつけているほど熱かった。
汗ばんだ肌が、未だ見たことのないマイケルの柔らかい髪がネムリの掌に纏わり付く。
そのままマスクを外そうとすると、
ズンッ!!
「きゃっ!?あっぁああああ!!!」
腰を掴まれ、最奥の入り口を肉棒で貫かれてしまった。
手から力が抜けてしまう。
「やっ…あっ!?かおっ、だ、め…?」
マイケルは滑り落ちたネムリの手を掴むと、その掌にちゅっ、と音を立てて口付けた。
理由はわからない。
熱と快楽に飲み込まれたネムリに、理性的な判断などできるはずもなかった。
でも、このとき確かにネムリの心には寂しいという感情が浮かんでいた。
待ちに待った快楽を与えられ、奥深くまで繋がって、隙間もないほど肌を重ね合わせているのに、ネムリはなぜか満たされない寂寥感で胸が締め付けられていた。
ネムリはきゅっと口を閉じると、荒い息を溢すマイケルの口に、初めて自分から口付けた。
白いマスクの下、ネムリには見えないマイケルの目が、驚きで見開かれていた。
「んっ…マイケル…っ…ハッ…つづき…しよ?」
唇の端からこぼれ落ちる唾液を舐めとり、ネムリが妖艶に微笑む。
愛しい人からの誘惑に抗う術など、マイケルは持ち合わせてはいない。
いや、むしろ不要だった。
滾りに滾った情欲を、全てぶつけきるようにマイケルはネムリの蜜壺を穿つ。
「あっはぁああん!!んっんうう!!あっあっあぁあ!!」
「グッ!!ッ…ハッ…ハッァ…ッ!!」
「ま、いけるっ!!まいけるぅうっ!!あっ!!イイッ!!イックぅう…ッ!!」
「ッア…!!…ッネムリ!!…ッ!!!」
強く強く抱きしめ合って、ネムリとマイケルは同時に果てた。
どくりどくりと激しく注がれる子種を、全て飲み干すようにネムリの蜜壺がきゅうきゅうと絞り尽くす。
お互い荒い息のまま、ピタリと抱き合う。
胸元にもたれ掛かるネムリの額にマイケルが口付ける。
「んっ…」
小さく吐息を漏らし、薄らとネムリが目を開いてマイケルを見つめる。
マイケルの口元は緩く弧を描き、真っ暗なマスクの隙間から覗く目が、じっとネムリを見つめ返している。
未だ情事の熱に浮かされたまま、ネムリは無意識に微笑みを浮かべ、マイケルの口元にキスをしようとした。
ちゅ…
しかし、触れた先はマイケルの口元ではなく、顎の辺りだった。
ぷに、と柔らかい感触がマイケルの顎に当たる。
朦朧とした意識では身長差など到底頭にはなかったのだろう。
そんな仕草も可愛くて、マイケルはネムリの汗ばんだ髪をかき上げ、撫でる。
こっち…というようにトン、と自身の唇を指差すも…
「すー…」
「…!?」
先程まで薄らと開いていた目は、今は固く閉ざされ、妖艶に微笑んでいた口元からはすやすやと穏やかな寝息が聞こえていた。
なんだか肩透かしを喰らったような気分がした。
それでも嬉しくて、内から込み上げてくるような幸福感に耐えきれず、つい口元が緩んでしまった。
自分からそっと、眠るネムリの唇に口付け、マイケルは直ぐそばのバスタブの蛇口を捻った。