闇の感覚(マイケル)
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「ん……」
ネムリが目を覚ますと、薄暗い、見慣れない天井があった。
ぼんやりと揺れるランタンの光が顔に影を作る。
起き上がり周りを見渡すと、木製の簡素なテーブルと、椅子が見えた。
寝ていたベッドのすぐ側のチェストの上には、何も入ってない空の小瓶が置かれている。
「あっ…」
脳内に昨日の痴態がフラッシュバックした。
マイケルの腕の中に閉じ込められ、身体を震わせてあられもない声を上げ続けていた自身の姿と、思っていた以上に逞しく力強いマイケルの身体、微かに見えた口元から溢れる荒い呼吸
ーっ…!!… ネムリっ!!ー
ボンッと音が出るなら出ていたであろうくらい、ネムリは一瞬で顔を真っ赤にした。
マイケルの掠れた囁き声が脳内でリピートされて、たまらずネムリは顔を手で覆い隠してベッドに頭を埋める。
とんでもないことをされたし、言ってしまったような気がする…
ベッドで悶絶していると、近くでカチャン、と食器のような音がした。
「……」
「あっ……」
テーブルの上にマイケルが料理を並べていたようだ。
ネムリはとっさに身体を隠そうとして布団を手繰り寄せる。
ちらりと視界に映る胸元には、昨日の情事を思い起こさせる赤い痕が点々と見えて、また顔が熱くなった。
マイケルがこちらに歩いてくる。
布団を握り締め縮こまるネムリの頭をそっと撫で、白いマスクの唇の辺りがネムリの額に触れる。
ゴム越しの柔らかい、不思議な感触。
額に手を当てていると、ベッド傍に置いてあるノートにマイケルが文字を書いていく。
ボールペンをチェストに置くと、ノートをこちらに見せてくる。
ーおはよう。よく眠れた?ー
この殺人鬼は何か尋ねたり、相手の様子を伺う時に首を傾げる癖があるらしい。
現に今も首を傾げながらこちらを見つめている。
「…なんとか…一応」
鈍痛を訴える腰を押さえながら、ネムリは答えた。
ーご飯食べれそう?ー
ノートを見せながら、マイケルが布団を握りしめるネムリの手を握る。
「…いただきます。」
訝しみながらもネムリは頷く。
昨日のことがあり、食事にも何か盛られている可能性はある。
しかし、この状況下、生きるも死ぬも彼に握られている状態で、食事を拒むことは得策とは言えないだろう。
ぐぅぅ…
思案するネムリの耳に間抜けな音が聞こえた。
そう。決して空腹だから我慢できないとかじゃない!
…決して
少し恥ずかしくなっていると、目の前のマイケルが少し目線をずらして、ネムリと違う方を向いている。
よくよく見ると肩が少し震えている。
「…もしかして、笑ってる?」
「……ッ………」
マスクの口元を押さえるように手を当て、目線を逸らしているマイケル。
「も、もう!笑わないでっ!!」
気恥ずかしくて、ついポカリとマイケルの胸を叩いてしまった。
マイケルにトントンと肩を叩かれる。
その間も彼の肩は小刻みに震えていた。
マイケルから渡された白いシャツを着て、ネムリは料理が並んだテーブルの前に座った。
テーブルの上には新鮮そうなサラダと湯気のでているあったかそうなスープ、こんがりと焼けたトーストが置いてあった。
「…おいしそ」
思わず声が溢れていた。
いつも通りなら、昨日の儀式の後でみんなで夕食を取っていた筈だ。
一食分食べ逃し、尚且つ激しい運動を余儀なくされた身としては、空腹が限界をを迎えるのも仕方がない。
「……」
マイケルも向いの席に座る。
自分にはちょうどいいサイズの椅子も、マイケルが座るととても小さい椅子のように見えた。
「いただきます」
両手を合わせてからフォークを手に取る。
まずは新鮮なサラダから。
フォークを刺すと鮮度抜群のレタスからパリッと小気味いい音がする。
一緒に瑞々しいトマトも併せて口に入れる。
シーザードレッシングの風味と軽い野菜の食感が、空腹の胃袋に吸い込まれていく。
こんなにサラダって美味しかったっけ?
少し感動すらしてしまった。
さて、次はトーストでも、と思いつつ、ふとマイケルの方を見ると、食器にすら手をつける様子がなく、こちらをじっと凝視している。
「…な、なに?」
マイケルはまたノートを手に取り文字を走らせる。
ーさっきの動作は一体どういう意味?ー
「へ?」
きょとんとしていると、マイケルが両手を合わせて頭を下げてから、首を傾げた。
「食事の前の挨拶だけど…え?しないの?」
マイケルが小さく頷いた。
「あ、そっか。…海外とかだとお祈りなんだっけ?」
マイケルがまた頷く。
そしてまたノートに文字を書いていく。
ークリスチャンならね。僕はしないー
「そ、そうなんだ…。
えっと、私の元居た日本、ええと、ジャパン??では、こうやって挨拶するのが、食事の前のマナーなの」
ノートにまた文字が増える。
ー「いただきます」って?日本も何かお祈りしてるの?ー
「少し違うかな。日本だとね、食事って他のものの命を食べさせてもらって生きていくって考え方があるみたい。だから、『命をいただきます。ありがとうございます』って感謝の意味で、手を合わせていただきますっていうんだよ。」
マイケルはまた首を傾げた。
痛くないのだろうか?と思うほど長い間そのままじっとしていた。
しばらくして、またノートを取る。
ーよく分からない考えだね。命は奪うものでしかないのにー
背中がスッと冷えた気がした。
彼と、私は違う。根本的な部分が違う。
彼に抱かれたことで絆されていたことを思い知らされた。
彼は殺人鬼で、私は生存者。
相容れない存在だということを。
私の持っている一般的な倫理観と彼はかけ離れていることを。
危ないところだった。
抱かれたからって気を許しちゃいけない。
彼の想いと、私の想いも、恐らく同じではないのだろう。
折り重なって倒れていたみんなの姿が脳裏をよぎった。
このままここにいちゃいけない。
このままじゃ、多分私の心は取り返しのつかないことになってしまう。
不思議そうに首を傾げたまま、マイケルはこちらを見ていた。
そしてネムリがやったのと同じように、手を合わせて軽く頭を下げてから、マスクを少しずらすと食事を始めた。
形だけの行為、それはいただきますの挨拶なのか。
それとも昨日の…
ネムリは気を紛らわそうとスープを口に流し込んだ。
あんなにあったかそうだったスープは、どこか冷たく、苦い味がした。
ネムリが目を覚ますと、薄暗い、見慣れない天井があった。
ぼんやりと揺れるランタンの光が顔に影を作る。
起き上がり周りを見渡すと、木製の簡素なテーブルと、椅子が見えた。
寝ていたベッドのすぐ側のチェストの上には、何も入ってない空の小瓶が置かれている。
「あっ…」
脳内に昨日の痴態がフラッシュバックした。
マイケルの腕の中に閉じ込められ、身体を震わせてあられもない声を上げ続けていた自身の姿と、思っていた以上に逞しく力強いマイケルの身体、微かに見えた口元から溢れる荒い呼吸
ーっ…!!… ネムリっ!!ー
ボンッと音が出るなら出ていたであろうくらい、ネムリは一瞬で顔を真っ赤にした。
マイケルの掠れた囁き声が脳内でリピートされて、たまらずネムリは顔を手で覆い隠してベッドに頭を埋める。
とんでもないことをされたし、言ってしまったような気がする…
ベッドで悶絶していると、近くでカチャン、と食器のような音がした。
「……」
「あっ……」
テーブルの上にマイケルが料理を並べていたようだ。
ネムリはとっさに身体を隠そうとして布団を手繰り寄せる。
ちらりと視界に映る胸元には、昨日の情事を思い起こさせる赤い痕が点々と見えて、また顔が熱くなった。
マイケルがこちらに歩いてくる。
布団を握り締め縮こまるネムリの頭をそっと撫で、白いマスクの唇の辺りがネムリの額に触れる。
ゴム越しの柔らかい、不思議な感触。
額に手を当てていると、ベッド傍に置いてあるノートにマイケルが文字を書いていく。
ボールペンをチェストに置くと、ノートをこちらに見せてくる。
ーおはよう。よく眠れた?ー
この殺人鬼は何か尋ねたり、相手の様子を伺う時に首を傾げる癖があるらしい。
現に今も首を傾げながらこちらを見つめている。
「…なんとか…一応」
鈍痛を訴える腰を押さえながら、ネムリは答えた。
ーご飯食べれそう?ー
ノートを見せながら、マイケルが布団を握りしめるネムリの手を握る。
「…いただきます。」
訝しみながらもネムリは頷く。
昨日のことがあり、食事にも何か盛られている可能性はある。
しかし、この状況下、生きるも死ぬも彼に握られている状態で、食事を拒むことは得策とは言えないだろう。
ぐぅぅ…
思案するネムリの耳に間抜けな音が聞こえた。
そう。決して空腹だから我慢できないとかじゃない!
…決して
少し恥ずかしくなっていると、目の前のマイケルが少し目線をずらして、ネムリと違う方を向いている。
よくよく見ると肩が少し震えている。
「…もしかして、笑ってる?」
「……ッ………」
マスクの口元を押さえるように手を当て、目線を逸らしているマイケル。
「も、もう!笑わないでっ!!」
気恥ずかしくて、ついポカリとマイケルの胸を叩いてしまった。
マイケルにトントンと肩を叩かれる。
その間も彼の肩は小刻みに震えていた。
マイケルから渡された白いシャツを着て、ネムリは料理が並んだテーブルの前に座った。
テーブルの上には新鮮そうなサラダと湯気のでているあったかそうなスープ、こんがりと焼けたトーストが置いてあった。
「…おいしそ」
思わず声が溢れていた。
いつも通りなら、昨日の儀式の後でみんなで夕食を取っていた筈だ。
一食分食べ逃し、尚且つ激しい運動を余儀なくされた身としては、空腹が限界をを迎えるのも仕方がない。
「……」
マイケルも向いの席に座る。
自分にはちょうどいいサイズの椅子も、マイケルが座るととても小さい椅子のように見えた。
「いただきます」
両手を合わせてからフォークを手に取る。
まずは新鮮なサラダから。
フォークを刺すと鮮度抜群のレタスからパリッと小気味いい音がする。
一緒に瑞々しいトマトも併せて口に入れる。
シーザードレッシングの風味と軽い野菜の食感が、空腹の胃袋に吸い込まれていく。
こんなにサラダって美味しかったっけ?
少し感動すらしてしまった。
さて、次はトーストでも、と思いつつ、ふとマイケルの方を見ると、食器にすら手をつける様子がなく、こちらをじっと凝視している。
「…な、なに?」
マイケルはまたノートを手に取り文字を走らせる。
ーさっきの動作は一体どういう意味?ー
「へ?」
きょとんとしていると、マイケルが両手を合わせて頭を下げてから、首を傾げた。
「食事の前の挨拶だけど…え?しないの?」
マイケルが小さく頷いた。
「あ、そっか。…海外とかだとお祈りなんだっけ?」
マイケルがまた頷く。
そしてまたノートに文字を書いていく。
ークリスチャンならね。僕はしないー
「そ、そうなんだ…。
えっと、私の元居た日本、ええと、ジャパン??では、こうやって挨拶するのが、食事の前のマナーなの」
ノートにまた文字が増える。
ー「いただきます」って?日本も何かお祈りしてるの?ー
「少し違うかな。日本だとね、食事って他のものの命を食べさせてもらって生きていくって考え方があるみたい。だから、『命をいただきます。ありがとうございます』って感謝の意味で、手を合わせていただきますっていうんだよ。」
マイケルはまた首を傾げた。
痛くないのだろうか?と思うほど長い間そのままじっとしていた。
しばらくして、またノートを取る。
ーよく分からない考えだね。命は奪うものでしかないのにー
背中がスッと冷えた気がした。
彼と、私は違う。根本的な部分が違う。
彼に抱かれたことで絆されていたことを思い知らされた。
彼は殺人鬼で、私は生存者。
相容れない存在だということを。
私の持っている一般的な倫理観と彼はかけ離れていることを。
危ないところだった。
抱かれたからって気を許しちゃいけない。
彼の想いと、私の想いも、恐らく同じではないのだろう。
折り重なって倒れていたみんなの姿が脳裏をよぎった。
このままここにいちゃいけない。
このままじゃ、多分私の心は取り返しのつかないことになってしまう。
不思議そうに首を傾げたまま、マイケルはこちらを見ていた。
そしてネムリがやったのと同じように、手を合わせて軽く頭を下げてから、マスクを少しずらすと食事を始めた。
形だけの行為、それはいただきますの挨拶なのか。
それとも昨日の…
ネムリは気を紛らわそうとスープを口に流し込んだ。
あんなにあったかそうだったスープは、どこか冷たく、苦い味がした。