DbD短編
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珍しく儀式のない穏やかな午後。
自室でのんびりと読書を楽しんでいたネムリの部屋へ、ドタドタと足音が近づいて来た。
「ネムリ!!みてー!!イッパイできたー!!」
「ポップコーン作ッテー!!!」
バターン!と激しく扉が開いたかと思うと、予想通りの2人が部屋に飛び込んできて、ネムリは笑顔で彼らを出迎えた。
先頭には大きな籠一杯のトウモロコシを嬉しそうに差し出すヒルビリー。
ネムリの周りを楽しげにピョンピョンと跳ね回って抱きついてくるハグ。
ネムリはハグを抱きしめながらヒルビリーの籠を覗き込む。
綺麗に乾燥させたトウモロコシの山が籠から溢れ返るほど詰められていた。
「すごい量だねヒルビリー!これ全部ポップコーンにするの?」
「うん!イッパイ食べたい!」
「ハグモ負ケナイー!イッパイ食ベルー!」
はしゃぐ二人を宥めつつ、みんなでキッチンへと移動していった。
ポップコーン!ポップコーン!と歌いながらキッチンに向かう二人の後ろをついていく。
暫く歩くと、反対側から廊下を歩いていたレイスがこちらに気づいたようで、手を振りながらやってきた。
「やぁみんな!ご機嫌だけどどうしたの?」
「レイス!ポップコーン食べるの!」
「ポップコーンナノ!!」
「ポップコーン?」
首を傾げるレイスにネムリはクスリと笑う。
「ヒルビリーのトウモロコシで作ることになったの」
「へぇ。え?この量全部を?」
レイスの光る目がまんまるに見開かれていた。
「レイスも食べようよ!!」
「ミンナデタベルノー!」
嬉しそうにキャッキャとはしゃぐ二人にレイスは苦笑いを浮かべていた。
「ふ、二人とも!ポップコーンって少しのトウモロコシでもとんでもない数できるんだけど、こんな籠いっぱいで本当に大丈夫かい?」
「食べられるよー!」
「食ベタイモンー!」
少し離れて様子を見ていたネムリがクスリと笑った。
「大丈夫よレイス。私が見てるからちゃんと量は調整するわ」
「あ、なんだ。それなら大丈夫だね。」
ほっとしたようにレイスが肩を落とした。
レイスも加えた4人でキッチンへと向かう。
はしゃいで止まらない二人に、レイスと協力してエプロンを着せていく。
「じゃあ二人とも!ポップコーン作っていくから、まずは乾燥させたトウモロコシの実を外して、こっちのお鍋の中に入れていってくれる?」
ネムリはよいしょ、と言って大きな寸胴鍋を持ち出した。
「「はーい!(ハーイ!)」」
二人は元気よく返事して凄まじい速さでトウモロコシの実を剥いでいく。
流石は力自慢のヒルビリーと、手が大きくパワーも強いハグだ。
レイスとネムリが見つめる中、あっという間に大きな寸胴鍋がポップコーンの素で一杯に満たされた。
「二人ともありがとう!
じゃあ、私とレイスで、ポップコーンにする下準備してくるね!」
レイスと片方づつ鍋を持ち、隣の部屋へと移動する。
「ほ、本当にとんでもない量だね」
「ね!すごい量!」
ネムリは小さなボウルを使って鍋の中からポップコーンの素を救いとった。
「はいレイス!これ、二人のところに持っていってくれる?」
「ん?ボク?別にいいけどなんで?」
レイスがきょとん、と首を傾げた。
「ポップコーンにするには特別な処理が必要で、一気には出来ない。私がその処理をしてるからってことにしといて?」
そうすれば、量減らしても二人には怪しまれないでしょ?
とネムリはニコニコと笑う。
「なるほど!リョーカイ!」
レイスはニコっと笑ってボウル片手にキッチンへと戻っていった。
「レイス戻ってきた!」
「レイス遅イー!!」
バグがぴょん!とレイスに抱きつく。
レイスはボウルを落とさないように気をつけながら、ハグを受け止めた。
「っと!危ないよハグ」
ヨシヨシと頭を撫でてやると嬉しそうに喉をグルグル鳴らしていた。
「あれー?ネムリはー?」
「ホントダッ!ネムリ居ナイ!!」
二人はキョロキョロと一斉にネムリを探そうとした。
隣の部屋に行こうとする二人をレイスが慌てて止める。
「いや!ネムリはいまポップコーンを作る下準備を、隣でしてくれてるんだ!一気にはできないし、すごく集中しなきゃ行けないから、ボクが一先ずできた分だけ運んできたんだよ」
そう言って手に持ったボウルを二人に見せる。
二人はまじまじとレイスの持つボウルを覗き込んだ。
「少ないー!」
「もっと欲しいぃ!」
「大丈夫!ネムリができたら持ってきてくれるから!」
二人を宥めて、レイスはコンロへと向かう。
「どうやるのー?」
「ハグモヤルー!」
「火を使うし危ないから、最初は見ててね」
レイスはフライパンの中にポップコーンの素を少量加えて火をつけた。
その後蓋をしてすぐにフライパンの中からぱちっぱち!と弾けるような音がしてきた。
「パチパチいってるー!!」
「熱を加えるとこうやって弾けるから蓋をしておくんだ」
「出来ター?」.
「ハグもう少し待ってね。」
次第に音は激しくなり、爆発音に近い破裂音が断続的に響いた。
「そろそろかな?」
レイスがそっと蓋を持ち上げると、中から出来立てのポップコーンが溢れ出した。
まるで蓋を持ち上げるように次々と盛り上がってくる様子に、二人は歓声をあげてはしゃいでいた。
「すごいいっぱい!!!」
「美味シソウナノー!!」
出来上がったポップコーンを皿の上に乗せ軽く塩を振りかけてやると、二人は夢中でばくむしゃとポップコーンを食べ出した。
レイスもひょいとポップコーンを摘んで口に入れる。
カリッと軽やかな食感と共に、出来立ての香ばしい香りとほのかな塩味、後からふんわりと広がるとうもろこしの甘味が口一杯に広がる。
「うん。これは美味しいなぁ」
思わず笑みが溢れると、ヒルビリーが嬉しそうにニコッと笑った。
ボウル一杯分で作ったポップコーンは、あっという間に無くなった。
「これはたしかにかなり食べれちゃいそうだな」
「もっと食べるー!」
「食ベルー!!」
早く早く!と二人に急かされ、レイスはボウルを持って隣の部屋に慌てて入った。
「ネムリ〜!もう食べ切っちゃった!」
「えっ!?もう!?」
部屋でポップコーン用のフレーバーシーズニングを準備しようとしていたネムリは驚いた。
ボウル一杯分なら、それなりの量になるはずと思っていたのに。
「じゃあボウル一番おっきいのにしようか」
「お願い。ん?ネムリ一体なにしてるの?」
「これ?ポップコーンにかけるフレーバーのパウダー作ろうと思って…あ」
手元を確認して、ネムリが声を上げた。
「どうしたの?」
「部屋に材料一つ残して来ちゃった…ちょっと取りに行ってくる!」
パタパタとネムリが部屋を出ていった。
レイスは手にした小さなボウルと、ネムリから渡された大きめのボウル両方にポップコーンの素を掬いとると部屋を後にした。
キッチンへと戻ってきたレイスは再びポップコーン作りを始める。
その後ろで、ヒルビリーとハグはヒソヒソと話していた。
「ネムリ戻ってこないね」
「ネムリト一緒ニ食ベタイヨネ」
「僕ネムリのお手伝い行ってくる!」
「ジャアハグ、レイスノオ手伝イスル!」
二人はニコッと笑って頷くと、ヒルビリーは隣部屋へ、ハグはレイスに駆け寄った。
「レイス!ハグ何カオ手伝イ出来ナイ?」
「あ、本当?じゃあ何枚かお皿取って来てくれるかい?」
フライパンから目を離さず、レイスはハグへと声を掛けた。
分カッター!とハグが元気よく返事する後ろで、ヒルビリーが隣の部屋へと向かったのに気づかないまま…
「ネムリ〜?居ないのー?」
いつもならなぁに?と明るい声が聞こえるのに、部屋はシーンとしてて返事がない。
部屋の中をうろついて、机の下も覗いたけど、ネムリはどこにも居なかった。
「おかしいなぁ…ん?」
ふとヒルビリーが見ると、鍋いっぱいのポップコーンの素が置いてあった。
そうか!きっと準備が終わって、ネムリは一休みしに行ったんだ!
じゃあその間に作っておいてあげよう!
ヒルビリーはウキウキと鍋を抱えて部屋へと戻っていった。
戻ってきたヒルビリーに気づいたハグが一目散に駆け寄る。
「ヒルビリー!ネムリ居タ?」
「ネムリは居なかった!きっと一休みしに行ったんだと思う!ほら!」
ヒルビリーが大きな鍋をハグに見せる。
ハグは目をキラキラ輝かせた。
「ワア沢山!!ネムリオ疲レ様ナノネ!」
「うん!僕らでポップコーン作ってびっくりさせよ!!」
ヒルビリーとハグはウキウキしながら空いているコンロに鍋をどかりと置く。
「ん?何か音しなかった?」
レイスは首を傾げた。
何かガタンって言ったような…
ふと横を見ると何だか見たことのある大鍋が…
「え!?あれ!?ちょっと待って何でコレがここに!?」
「お手伝いしたんだー!」
「ネムリヲポップコーンデビックリサセルノー!」
「は、ハグッ!!待っ!!!」
かちり、とコンロの点火音がした…
所変わって同時刻のリビング。
トラッパーは愛用のトラバサミの手入れ、ドクターはいつもの開口具を外して、読書をしながらコーヒーを嗜んで居た。
すぐ近くの窓際では、デススリンガーが窓際に銛付きの愛銃を立て掛けて葉巻を蒸かしている。
静かで穏やかな午後のひと時、
…だった。
ドドドドドドン!!!!
バチバチバチ!!!パパパパパパァアンン!!!!
突然響いた戦場のような爆音に、
「い゛っでえええ!!」
「ぅおあッフェエッつうううう!!!!!」
「がっ!?づつつつう」
トラッパーは驚いて自身の手をトラバサミで挟み、ドクターは顔面に熱々のコーヒーをぶっ掛け、デススリンガーは窓からずり落ち窓枠にしこたま頭をぶつけていた。
「っでで畜生…おいデススリンガー!!暴発させんな!!」
トラバサミを外し、若干涙目でトラッパーが吠える。
「んっなわけ無ぇだろうがっ!!俺の銃はそこにあんだろ!指一本触れちゃあいなかったぜ!?」
帽子越しでも分かるほど、頭にコブをこさえたデススリンガーも、後頭部を撫でつつ喧嘩腰に返す。
「あ゛っづづづづ」
ドクターだけ顔面を押さえて地面をのたうちまわっていた。
開瞼器をつけていたせいで眼球にまでモロに熱いコーヒーがかかり、灼熱に焼かれる苦しみがドクターにさらに追い討ちをかけていた。
あまりの苦しみように、トラッパーとデススリンガーは言い争うのを辞め、ドクターの介抱に回ることにした。
「おいドクター、大丈夫か?」
「ぐっぐぐぐぐ…」
「あんたぁ一番深刻そうだな…ほれタオル」
濡らしたタオルをデススリンガーがドクターの顔に当ててやる。
「ひ、ひどい目に遭いましたよ…」
フゥウウ…とタオル越しにくぐもった溜息を吐いた。
「何だったんだ?あの音は」
「さあなぁ…ただあの音は何があったに違いねぇだろ」
トラッパーとデススリンガーが話し込んでいると、再び
パァン!!パパパパパァン!!!
頭上で爆発音がした。
ドクターだけがヒィ!と反射的に震えている。
「う、上からですねェ…」
「おいまずいぞ。上ってぇとネムリたちが居なかったか?」
「そいつぁヤベェ!!」
3人は慌てて上の階へと向かった。
同じ頃に、自室に戻っていたネムリと、ネムリの部屋でくつろいで居たマイケルも爆発音を聞いて、急いで音のする方へと走っていた。
もっとも、走っていたのはネムリを横抱きにしたマイケルだけだが。
「ま、マイケル!あのね?大丈夫!!あれ多分銃とかじゃないし!!下ろして大丈夫よ!?」
マイケルに抱き上げられながら、ネムリはわたわたと慌てていた。
マイケルにとっては心配半分、役得半分で決して彼女を離そうとはしなかった。
「「「あっ!!!」」
「わっ!!みんな!」
「………」
ちょうど階下から駆け上がってきた3人と、ネムリたちが廊下でかち合った。
「お前達無事かっ!!」
トラッパーが血相変えてネムリ達に詰め寄る。
「オイネムリ。あんたぁ怪我でもしたのか?」
横抱きにされたネムリを見てデススリンガーは、眉をしかめる。
「怪我ですか?ならば私が見ましょう」
そう言ってドクターがネムリに触れようとすると
「……………」
「ハァ…。マイケル、彼女を診せて下さい。」
ドクターが回り込もうとするも、マイケルはフイと反対を向いて彼女を見せまいと庇い続ける。
「あ、あの!私怪我してないし大丈夫!!」
マイケルの腕の中でネムリが声を上げる。
「本当ですか?かなり激しい銃撃戦の音が有りましたが…流れ弾がかするだけでも十分化膿してしまう可能性はあるんですよ?」
心配そうに、諭すようにドクターが話す。
ネムリは冷や汗タラタラだった。
「え、えっとね!?あれは銃声なんかじゃなくて」
パパパパパパパン!!!パパパパン!!!!
だ、誰か助けてぇえええ!!!!!!
「おい今の声っ!!」
「レイスの声じゃありませんでした?」
「やっぱヤベェんじゃあねぇか!?」
3人は一気に音のする方へと駆け出す。
それぞれ武器をしっかりと持って。
「あわわわわ…まずいことになってるかも…マイケル!急ごう!」
「………」
心配なのか、マイケルは本当に大丈夫なのか?と首を傾げてネムリを見つめる。
「大丈夫!本当に銃声じゃなくて、あれ多分料理の音なの」
そう言われて、渋々と言ったようにマイケルは歩き出した。
急いでってば!!とネムリに急かされて、早歩きで進む。
音がしているのはどうやらキッチンかららしい。
勢いよく、先頭のトラッパーがドアを、打ち破る。
「レイスッ!!!無事かッ!!!!」
「怪我はありませんかッ!!」
「お前ェら伏せてろ!!オレが討ち取ってやらぁ!!」
三人が武器を構えて飛び込んだ先では、想像を絶する光景が、広がっていた。
コンロを中心に真っ白なポップコーンが激しい破裂音をさせながら、際限なく次々と鍋から溢れ出してキッチンのシンクや、床へとこぼれ周囲を真っ白に染め上げていく。
部屋の大半がポップコーンで埋まる中、ハグとヒルビリーが、嬉しそうにキャッキャとはしゃぎながらもっしもっしとポップコーンを食べている。
発生源のコンロのすぐ近くではポップコーンに埋まったレイスが助けてぇぇ!と半泣きで悲鳴を上げている。
「……は?」
「これは…一体…」
「何がどうしてこうなったァ!?」
唖然と固まる三人の近くにやっと到着したマイケルと、ネムリもその惨状を見て固まった。
「あちゃあ…やっぱり」
硬直するマイケルの腕の中でネムリはこめかみを押さえて溜息を吐いた。
「あっ!みんなも来た!」
「トラッパー達モポップコーン食ベニ来タ?パーティナノ!!ポップコーンパーティ!!」
ヒルビリーとハグは無邪気に騒いでいる。
そんな二人に
「…っ!!紛らわしい事すんじゃねぇえ!!!馬鹿野郎ぉっ!!!!」
ドクターではなく、トラッパーの雷が落ちた。
その後は何とかレイスを救出し、二人に危ないから気をつけてねと注意した後、全員で美味しくポップコーンを食べたのでした。
沢山あったポップコーンの素は、本当にその殆どがヒルビリーとハグの胃袋に納められたことに、ネムリとレイスは心底驚いたのだった。
自室でのんびりと読書を楽しんでいたネムリの部屋へ、ドタドタと足音が近づいて来た。
「ネムリ!!みてー!!イッパイできたー!!」
「ポップコーン作ッテー!!!」
バターン!と激しく扉が開いたかと思うと、予想通りの2人が部屋に飛び込んできて、ネムリは笑顔で彼らを出迎えた。
先頭には大きな籠一杯のトウモロコシを嬉しそうに差し出すヒルビリー。
ネムリの周りを楽しげにピョンピョンと跳ね回って抱きついてくるハグ。
ネムリはハグを抱きしめながらヒルビリーの籠を覗き込む。
綺麗に乾燥させたトウモロコシの山が籠から溢れ返るほど詰められていた。
「すごい量だねヒルビリー!これ全部ポップコーンにするの?」
「うん!イッパイ食べたい!」
「ハグモ負ケナイー!イッパイ食ベルー!」
はしゃぐ二人を宥めつつ、みんなでキッチンへと移動していった。
ポップコーン!ポップコーン!と歌いながらキッチンに向かう二人の後ろをついていく。
暫く歩くと、反対側から廊下を歩いていたレイスがこちらに気づいたようで、手を振りながらやってきた。
「やぁみんな!ご機嫌だけどどうしたの?」
「レイス!ポップコーン食べるの!」
「ポップコーンナノ!!」
「ポップコーン?」
首を傾げるレイスにネムリはクスリと笑う。
「ヒルビリーのトウモロコシで作ることになったの」
「へぇ。え?この量全部を?」
レイスの光る目がまんまるに見開かれていた。
「レイスも食べようよ!!」
「ミンナデタベルノー!」
嬉しそうにキャッキャとはしゃぐ二人にレイスは苦笑いを浮かべていた。
「ふ、二人とも!ポップコーンって少しのトウモロコシでもとんでもない数できるんだけど、こんな籠いっぱいで本当に大丈夫かい?」
「食べられるよー!」
「食ベタイモンー!」
少し離れて様子を見ていたネムリがクスリと笑った。
「大丈夫よレイス。私が見てるからちゃんと量は調整するわ」
「あ、なんだ。それなら大丈夫だね。」
ほっとしたようにレイスが肩を落とした。
レイスも加えた4人でキッチンへと向かう。
はしゃいで止まらない二人に、レイスと協力してエプロンを着せていく。
「じゃあ二人とも!ポップコーン作っていくから、まずは乾燥させたトウモロコシの実を外して、こっちのお鍋の中に入れていってくれる?」
ネムリはよいしょ、と言って大きな寸胴鍋を持ち出した。
「「はーい!(ハーイ!)」」
二人は元気よく返事して凄まじい速さでトウモロコシの実を剥いでいく。
流石は力自慢のヒルビリーと、手が大きくパワーも強いハグだ。
レイスとネムリが見つめる中、あっという間に大きな寸胴鍋がポップコーンの素で一杯に満たされた。
「二人ともありがとう!
じゃあ、私とレイスで、ポップコーンにする下準備してくるね!」
レイスと片方づつ鍋を持ち、隣の部屋へと移動する。
「ほ、本当にとんでもない量だね」
「ね!すごい量!」
ネムリは小さなボウルを使って鍋の中からポップコーンの素を救いとった。
「はいレイス!これ、二人のところに持っていってくれる?」
「ん?ボク?別にいいけどなんで?」
レイスがきょとん、と首を傾げた。
「ポップコーンにするには特別な処理が必要で、一気には出来ない。私がその処理をしてるからってことにしといて?」
そうすれば、量減らしても二人には怪しまれないでしょ?
とネムリはニコニコと笑う。
「なるほど!リョーカイ!」
レイスはニコっと笑ってボウル片手にキッチンへと戻っていった。
「レイス戻ってきた!」
「レイス遅イー!!」
バグがぴょん!とレイスに抱きつく。
レイスはボウルを落とさないように気をつけながら、ハグを受け止めた。
「っと!危ないよハグ」
ヨシヨシと頭を撫でてやると嬉しそうに喉をグルグル鳴らしていた。
「あれー?ネムリはー?」
「ホントダッ!ネムリ居ナイ!!」
二人はキョロキョロと一斉にネムリを探そうとした。
隣の部屋に行こうとする二人をレイスが慌てて止める。
「いや!ネムリはいまポップコーンを作る下準備を、隣でしてくれてるんだ!一気にはできないし、すごく集中しなきゃ行けないから、ボクが一先ずできた分だけ運んできたんだよ」
そう言って手に持ったボウルを二人に見せる。
二人はまじまじとレイスの持つボウルを覗き込んだ。
「少ないー!」
「もっと欲しいぃ!」
「大丈夫!ネムリができたら持ってきてくれるから!」
二人を宥めて、レイスはコンロへと向かう。
「どうやるのー?」
「ハグモヤルー!」
「火を使うし危ないから、最初は見ててね」
レイスはフライパンの中にポップコーンの素を少量加えて火をつけた。
その後蓋をしてすぐにフライパンの中からぱちっぱち!と弾けるような音がしてきた。
「パチパチいってるー!!」
「熱を加えるとこうやって弾けるから蓋をしておくんだ」
「出来ター?」.
「ハグもう少し待ってね。」
次第に音は激しくなり、爆発音に近い破裂音が断続的に響いた。
「そろそろかな?」
レイスがそっと蓋を持ち上げると、中から出来立てのポップコーンが溢れ出した。
まるで蓋を持ち上げるように次々と盛り上がってくる様子に、二人は歓声をあげてはしゃいでいた。
「すごいいっぱい!!!」
「美味シソウナノー!!」
出来上がったポップコーンを皿の上に乗せ軽く塩を振りかけてやると、二人は夢中でばくむしゃとポップコーンを食べ出した。
レイスもひょいとポップコーンを摘んで口に入れる。
カリッと軽やかな食感と共に、出来立ての香ばしい香りとほのかな塩味、後からふんわりと広がるとうもろこしの甘味が口一杯に広がる。
「うん。これは美味しいなぁ」
思わず笑みが溢れると、ヒルビリーが嬉しそうにニコッと笑った。
ボウル一杯分で作ったポップコーンは、あっという間に無くなった。
「これはたしかにかなり食べれちゃいそうだな」
「もっと食べるー!」
「食ベルー!!」
早く早く!と二人に急かされ、レイスはボウルを持って隣の部屋に慌てて入った。
「ネムリ〜!もう食べ切っちゃった!」
「えっ!?もう!?」
部屋でポップコーン用のフレーバーシーズニングを準備しようとしていたネムリは驚いた。
ボウル一杯分なら、それなりの量になるはずと思っていたのに。
「じゃあボウル一番おっきいのにしようか」
「お願い。ん?ネムリ一体なにしてるの?」
「これ?ポップコーンにかけるフレーバーのパウダー作ろうと思って…あ」
手元を確認して、ネムリが声を上げた。
「どうしたの?」
「部屋に材料一つ残して来ちゃった…ちょっと取りに行ってくる!」
パタパタとネムリが部屋を出ていった。
レイスは手にした小さなボウルと、ネムリから渡された大きめのボウル両方にポップコーンの素を掬いとると部屋を後にした。
キッチンへと戻ってきたレイスは再びポップコーン作りを始める。
その後ろで、ヒルビリーとハグはヒソヒソと話していた。
「ネムリ戻ってこないね」
「ネムリト一緒ニ食ベタイヨネ」
「僕ネムリのお手伝い行ってくる!」
「ジャアハグ、レイスノオ手伝イスル!」
二人はニコッと笑って頷くと、ヒルビリーは隣部屋へ、ハグはレイスに駆け寄った。
「レイス!ハグ何カオ手伝イ出来ナイ?」
「あ、本当?じゃあ何枚かお皿取って来てくれるかい?」
フライパンから目を離さず、レイスはハグへと声を掛けた。
分カッター!とハグが元気よく返事する後ろで、ヒルビリーが隣の部屋へと向かったのに気づかないまま…
「ネムリ〜?居ないのー?」
いつもならなぁに?と明るい声が聞こえるのに、部屋はシーンとしてて返事がない。
部屋の中をうろついて、机の下も覗いたけど、ネムリはどこにも居なかった。
「おかしいなぁ…ん?」
ふとヒルビリーが見ると、鍋いっぱいのポップコーンの素が置いてあった。
そうか!きっと準備が終わって、ネムリは一休みしに行ったんだ!
じゃあその間に作っておいてあげよう!
ヒルビリーはウキウキと鍋を抱えて部屋へと戻っていった。
戻ってきたヒルビリーに気づいたハグが一目散に駆け寄る。
「ヒルビリー!ネムリ居タ?」
「ネムリは居なかった!きっと一休みしに行ったんだと思う!ほら!」
ヒルビリーが大きな鍋をハグに見せる。
ハグは目をキラキラ輝かせた。
「ワア沢山!!ネムリオ疲レ様ナノネ!」
「うん!僕らでポップコーン作ってびっくりさせよ!!」
ヒルビリーとハグはウキウキしながら空いているコンロに鍋をどかりと置く。
「ん?何か音しなかった?」
レイスは首を傾げた。
何かガタンって言ったような…
ふと横を見ると何だか見たことのある大鍋が…
「え!?あれ!?ちょっと待って何でコレがここに!?」
「お手伝いしたんだー!」
「ネムリヲポップコーンデビックリサセルノー!」
「は、ハグッ!!待っ!!!」
かちり、とコンロの点火音がした…
所変わって同時刻のリビング。
トラッパーは愛用のトラバサミの手入れ、ドクターはいつもの開口具を外して、読書をしながらコーヒーを嗜んで居た。
すぐ近くの窓際では、デススリンガーが窓際に銛付きの愛銃を立て掛けて葉巻を蒸かしている。
静かで穏やかな午後のひと時、
…だった。
ドドドドドドン!!!!
バチバチバチ!!!パパパパパパァアンン!!!!
突然響いた戦場のような爆音に、
「い゛っでえええ!!」
「ぅおあッフェエッつうううう!!!!!」
「がっ!?づつつつう」
トラッパーは驚いて自身の手をトラバサミで挟み、ドクターは顔面に熱々のコーヒーをぶっ掛け、デススリンガーは窓からずり落ち窓枠にしこたま頭をぶつけていた。
「っでで畜生…おいデススリンガー!!暴発させんな!!」
トラバサミを外し、若干涙目でトラッパーが吠える。
「んっなわけ無ぇだろうがっ!!俺の銃はそこにあんだろ!指一本触れちゃあいなかったぜ!?」
帽子越しでも分かるほど、頭にコブをこさえたデススリンガーも、後頭部を撫でつつ喧嘩腰に返す。
「あ゛っづづづづ」
ドクターだけ顔面を押さえて地面をのたうちまわっていた。
開瞼器をつけていたせいで眼球にまでモロに熱いコーヒーがかかり、灼熱に焼かれる苦しみがドクターにさらに追い討ちをかけていた。
あまりの苦しみように、トラッパーとデススリンガーは言い争うのを辞め、ドクターの介抱に回ることにした。
「おいドクター、大丈夫か?」
「ぐっぐぐぐぐ…」
「あんたぁ一番深刻そうだな…ほれタオル」
濡らしたタオルをデススリンガーがドクターの顔に当ててやる。
「ひ、ひどい目に遭いましたよ…」
フゥウウ…とタオル越しにくぐもった溜息を吐いた。
「何だったんだ?あの音は」
「さあなぁ…ただあの音は何があったに違いねぇだろ」
トラッパーとデススリンガーが話し込んでいると、再び
パァン!!パパパパパァン!!!
頭上で爆発音がした。
ドクターだけがヒィ!と反射的に震えている。
「う、上からですねェ…」
「おいまずいぞ。上ってぇとネムリたちが居なかったか?」
「そいつぁヤベェ!!」
3人は慌てて上の階へと向かった。
同じ頃に、自室に戻っていたネムリと、ネムリの部屋でくつろいで居たマイケルも爆発音を聞いて、急いで音のする方へと走っていた。
もっとも、走っていたのはネムリを横抱きにしたマイケルだけだが。
「ま、マイケル!あのね?大丈夫!!あれ多分銃とかじゃないし!!下ろして大丈夫よ!?」
マイケルに抱き上げられながら、ネムリはわたわたと慌てていた。
マイケルにとっては心配半分、役得半分で決して彼女を離そうとはしなかった。
「「「あっ!!!」」
「わっ!!みんな!」
「………」
ちょうど階下から駆け上がってきた3人と、ネムリたちが廊下でかち合った。
「お前達無事かっ!!」
トラッパーが血相変えてネムリ達に詰め寄る。
「オイネムリ。あんたぁ怪我でもしたのか?」
横抱きにされたネムリを見てデススリンガーは、眉をしかめる。
「怪我ですか?ならば私が見ましょう」
そう言ってドクターがネムリに触れようとすると
「……………」
「ハァ…。マイケル、彼女を診せて下さい。」
ドクターが回り込もうとするも、マイケルはフイと反対を向いて彼女を見せまいと庇い続ける。
「あ、あの!私怪我してないし大丈夫!!」
マイケルの腕の中でネムリが声を上げる。
「本当ですか?かなり激しい銃撃戦の音が有りましたが…流れ弾がかするだけでも十分化膿してしまう可能性はあるんですよ?」
心配そうに、諭すようにドクターが話す。
ネムリは冷や汗タラタラだった。
「え、えっとね!?あれは銃声なんかじゃなくて」
パパパパパパパン!!!パパパパン!!!!
だ、誰か助けてぇえええ!!!!!!
「おい今の声っ!!」
「レイスの声じゃありませんでした?」
「やっぱヤベェんじゃあねぇか!?」
3人は一気に音のする方へと駆け出す。
それぞれ武器をしっかりと持って。
「あわわわわ…まずいことになってるかも…マイケル!急ごう!」
「………」
心配なのか、マイケルは本当に大丈夫なのか?と首を傾げてネムリを見つめる。
「大丈夫!本当に銃声じゃなくて、あれ多分料理の音なの」
そう言われて、渋々と言ったようにマイケルは歩き出した。
急いでってば!!とネムリに急かされて、早歩きで進む。
音がしているのはどうやらキッチンかららしい。
勢いよく、先頭のトラッパーがドアを、打ち破る。
「レイスッ!!!無事かッ!!!!」
「怪我はありませんかッ!!」
「お前ェら伏せてろ!!オレが討ち取ってやらぁ!!」
三人が武器を構えて飛び込んだ先では、想像を絶する光景が、広がっていた。
コンロを中心に真っ白なポップコーンが激しい破裂音をさせながら、際限なく次々と鍋から溢れ出してキッチンのシンクや、床へとこぼれ周囲を真っ白に染め上げていく。
部屋の大半がポップコーンで埋まる中、ハグとヒルビリーが、嬉しそうにキャッキャとはしゃぎながらもっしもっしとポップコーンを食べている。
発生源のコンロのすぐ近くではポップコーンに埋まったレイスが助けてぇぇ!と半泣きで悲鳴を上げている。
「……は?」
「これは…一体…」
「何がどうしてこうなったァ!?」
唖然と固まる三人の近くにやっと到着したマイケルと、ネムリもその惨状を見て固まった。
「あちゃあ…やっぱり」
硬直するマイケルの腕の中でネムリはこめかみを押さえて溜息を吐いた。
「あっ!みんなも来た!」
「トラッパー達モポップコーン食ベニ来タ?パーティナノ!!ポップコーンパーティ!!」
ヒルビリーとハグは無邪気に騒いでいる。
そんな二人に
「…っ!!紛らわしい事すんじゃねぇえ!!!馬鹿野郎ぉっ!!!!」
ドクターではなく、トラッパーの雷が落ちた。
その後は何とかレイスを救出し、二人に危ないから気をつけてねと注意した後、全員で美味しくポップコーンを食べたのでした。
沢山あったポップコーンの素は、本当にその殆どがヒルビリーとハグの胃袋に納められたことに、ネムリとレイスは心底驚いたのだった。