DbD短編
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背後を伺いながら、足を動かす。
幸い、まだ一撃も喰らってはいない。
ぜーぜーと息を吐きながら、ネムリはちらりと後ろを見る。
まだ少し距離はあるものの、もう直ぐ後ろに、包丁を逆手に持った白いマスクの殺人鬼が見える。
ぞくり、と背筋を走る震えに気づかないフリをして、ネムリは視界を遮るレンガの壁が入り組んだ、迷路の中へと駆け込んだ。
「どうしよう…このままじゃ…」
肩で息をしたまま、必死に足を動かす。
壁伝いに進みながら、曲がった直ぐそばに、ロッカーが見えた。
「っよし!!ここにっ…」
そっと扉を開け、中に入る。
物音を立てないようにロッカーの扉を閉め、手を組んで祈るように目を閉じた。
どうかっ…見つかりませんように!見つかりませんように!見つかりませんようにっ!
ザッザッ…と、ロッカーの直ぐ近くを、誰かが歩く音がする。
ギュッと身体を縮こめて、息を止める。
ザッザッ…足音はどんどんとロッカーに近づいてくる。
足音がほんの直ぐそばで聞こえる。
ラバーマスク越しの荒い呼吸音も、まるで耳元でしているかのように鮮明に響いた。
ロッカーの隙間から、一瞬真っ白な顔と、銀色に光るナイフが見えた。
悲鳴が溢れそうになって必死に口を手で塞ぐ。
震えそうな身体を押さえつけ、息を押し殺してロッカーの扉を見つめ続けた。
とてつもなく長く感じた一瞬だったが、次第に足音が離れていく。
物音が聞こえなくなり、ほっとして肩を落とした。
ほっとした直後に、開くはずの無いロッカーの扉が、バタンと音を立てて開いた。
真っ白なマスクの大男が、ロッカーを塞ぐようにこちらを覗き込んでくる。
「っひっ!?…きゃあっ!?」
ダン!!と何かを叩きつけるような音が顔の直ぐ隣でして、身体がすくんでしまった。
恐怖で見開いたネムリの目に至近距離で真っ白なマスクが映り込んでくる。
大きな手が近づいてきくる。
首元に近づいてくる手、多分、首を絞めるつもりだ…。
反射的に後ずさろうとしたが、狭いロッカー内に逃げ場所なんてない。
ただでさえ狭い中、マイケルの片手がネムリの顔の直ぐ横に、まるで身動きすら防ごうとするように入り込んでいるせいで、何もできない。
怖い…っでもこのままだとやられる。
でも…
一思いにやられるくらいなら、足掻けるだけ足掻いてみるしかない!
「っええいっ!!!!」
どうにでもなれっ!とヤケクソな気持ちもあったが、ネムリは思いっきり、目の前に迫るマイケルに体当たりした。
体当たり、と思ったのはネムリ本人だけで、実際はマイケルの胸に飛び込んだだけだった。
マイケルにしてみれば、突然ネムリが胸の中に飛び込んできたことに、とっさに対応も出来ず固まってしまった。
「んんっ!?あれ?あれ?…な、なんともない…感じ…です?」
徐々に泣きそうになりながら、ネムリは頭上にあるマイケルの顔を見上げる。
白いマスクが首を傾げてじっとネムリを見下ろしている。
今度こそ、終わった…
「…だ、ダメ…ですか…?」
勝手に声が震えて、視界が歪んでいくのがわかる。
泣いたってどうしようもないってわかってるのに…。
怖いのと情けないのとで、ネムリは思わず顔を下げた。
その行動は必然的に、マイケルの胸に顔を埋めることになる。
マイケルは、困惑していた。
今まで向けられたことのない感情を目の前の女から向けられていることにただ困惑していた。
いつも通りの儀式でロッカーに逃げ込んだ生存者を引きづりだし、フックに運ぼうとロッカーを開けたその時だった。
女は目を見開いてじっとマイケルの瞳を見つめると、突然マイケルの胸の中に倒れ込むように飛び込んできたのだ。
今まで獲物が恐怖に怯え逃げていくことはあっても、向こうから飛び込んでくることなど一度たりともなかった。
ふわりと飛び込んできた女の体は頼りないくらい細く、柔らかかった。
鼻腔をくすぐるほのかに甘い香りに、思わず息を飲んだ。
予想外の展開にナイフを振り下ろすのと忘れて硬直していると、囁くような小さな声がした?
「なんとも……感じ…です…?」
小さな声でハッキリとは聞こえなかったが、
なんとも…感じないです…?
そう言ったように聞こえた。
女は潤んだ瞳で縋るようにマイケルを見上げる。
私の気持ち…わかりませんか…?
そんな声が聞こえたような気がしてマイケルは首を傾げた。
この女は何を言いたいんだろう?
興味が湧いて、殺すのを待って見つめていると、女の瞳が徐々に潤んでいき、涙が溢れ出す。
震える淡い桜色の唇が、声にならない言葉を紡ごうとしていた。
私じゃ…
「…だ、ダメ…ですか?」
私じゃ、貴方の恋人にはなれませんか…?
また、声にならない声が聞こえた。
衝撃にマイケルが硬直していると、目にいっぱいの涙を溜めた女のは、何か諦めたようにマイケルの胸に顔を埋めた。
マスクの奥で、マイケルは目を見開いて、今目の前で真っ直ぐな想いをぶつけてくる女を見つめていた。
未だかつて、こんなに真っ直ぐに想いをぶつけられたことなどあっただろうか?
こんなにいじらしく、愛らしいと思う女など、存在しただろうか?
目の前のこの女が、妙に気になって、欲しくて仕方なくなった。
マイケルは包丁を握った手を離し、両の手で彼女の背中を強く抱き竦めた。
「っきゃっ!?」
しばらく固まっていたマイケルが、動き出してそのままネムリの背中に手を回した。
あ、これ担がれるっ!!
もがこうとする前に、マイケルの両腕にギュッと力が籠る。
「ひゃっ!?…な、なに?」
そのまま担がれると思ったら、マイケルはまたそのまま固まってしまった。
手のひらの感触がしていることから、どうやらナイフは持っていないらしい。
担ぎ上げられるでもなく、ナイフで刺されることもなく、ただマイケルに抱きしめられているような状態がしばらく続いた。
「えっと…見逃してくれるってことで…いいの?」
ネムリが恐る恐る様子を伺うと、マイケルの荒い呼吸音が一瞬止まった。
いつもの儀式の時のように、じぃっと心の奥底まで覗き込まれているように感じた。
しまった!失言だったかもっ…
慌ててごまかそうとしたがもう遅かった。
「きゃっ!?や、やぁ!!は、離してっ!」
ネムリを抱きしめたまま、マイケルは何処かに向けて歩き出す。
もがこうとするも、両手はマイケルの胸と自分の体の間に挟まれて動かせないし、足は完全に宙に浮いていてブラブラと揺らすくらいしか出来ない。
「ねぇ、離してよっ!お願いっ!!」
せめてもの抵抗に声を上げるが、マイケルはラバーマスク越しに荒い呼吸音をさせるだけで、なにも言わない。
ただ、また強く身体を抱きしめられた。
あぁ…助からない…吊られるっ…
またネムリの目から涙が溢れてくる。
恐怖と諦めで俯くと、ボソボソと何か聞こえる。
耳を、すましてみても、不明瞭で何の音なのかわからない。
頭上から聞こえてくる謎の音に、ネムリは微かに眉を潜めて顔を上げる。
マイケルが耳元へと口を寄せる。
不明瞭な音は、耳の直ぐそばでやっと囁き声とわかった。
ー…僕は君が欲しい…大丈夫、離さない…ー
「…ふぇ?…は!?い、いったい何を!?」
今殺人鬼から聞こえるはずの無い言葉を聞いた気がする。
なんだか一瞬、この世界に似つかわしくない甘ったるい雰囲気がしたような気がする。
まるで、まるで恋人に愛を囁くような…
「な、何を言ってるの?」
赤くなりかけた顔を誤魔化すように、ネムリはマイケルから身を離そうと無意味な足掻きを続ける。
マイケルはその様子をじっと見つめた。
恥ずかしがっている様子も嫌いじゃない。
むしろ、とても愛おしい…。
マスクの奥でマイケルは自身も気づかないうちに笑みを溢していた。
初めての恋の幸せに浸りながらマイケルはネムリを抱きしめて、自身の住居へと足取り軽く歩き出した。
「ま、まって!どこいくの!?ねぇってばぁ!」
殺人鬼に勘違いされた可哀想な彼女の悲鳴は、そのまま虚しく森に木霊して消えていった。
幸い、まだ一撃も喰らってはいない。
ぜーぜーと息を吐きながら、ネムリはちらりと後ろを見る。
まだ少し距離はあるものの、もう直ぐ後ろに、包丁を逆手に持った白いマスクの殺人鬼が見える。
ぞくり、と背筋を走る震えに気づかないフリをして、ネムリは視界を遮るレンガの壁が入り組んだ、迷路の中へと駆け込んだ。
「どうしよう…このままじゃ…」
肩で息をしたまま、必死に足を動かす。
壁伝いに進みながら、曲がった直ぐそばに、ロッカーが見えた。
「っよし!!ここにっ…」
そっと扉を開け、中に入る。
物音を立てないようにロッカーの扉を閉め、手を組んで祈るように目を閉じた。
どうかっ…見つかりませんように!見つかりませんように!見つかりませんようにっ!
ザッザッ…と、ロッカーの直ぐ近くを、誰かが歩く音がする。
ギュッと身体を縮こめて、息を止める。
ザッザッ…足音はどんどんとロッカーに近づいてくる。
足音がほんの直ぐそばで聞こえる。
ラバーマスク越しの荒い呼吸音も、まるで耳元でしているかのように鮮明に響いた。
ロッカーの隙間から、一瞬真っ白な顔と、銀色に光るナイフが見えた。
悲鳴が溢れそうになって必死に口を手で塞ぐ。
震えそうな身体を押さえつけ、息を押し殺してロッカーの扉を見つめ続けた。
とてつもなく長く感じた一瞬だったが、次第に足音が離れていく。
物音が聞こえなくなり、ほっとして肩を落とした。
ほっとした直後に、開くはずの無いロッカーの扉が、バタンと音を立てて開いた。
真っ白なマスクの大男が、ロッカーを塞ぐようにこちらを覗き込んでくる。
「っひっ!?…きゃあっ!?」
ダン!!と何かを叩きつけるような音が顔の直ぐ隣でして、身体がすくんでしまった。
恐怖で見開いたネムリの目に至近距離で真っ白なマスクが映り込んでくる。
大きな手が近づいてきくる。
首元に近づいてくる手、多分、首を絞めるつもりだ…。
反射的に後ずさろうとしたが、狭いロッカー内に逃げ場所なんてない。
ただでさえ狭い中、マイケルの片手がネムリの顔の直ぐ横に、まるで身動きすら防ごうとするように入り込んでいるせいで、何もできない。
怖い…っでもこのままだとやられる。
でも…
一思いにやられるくらいなら、足掻けるだけ足掻いてみるしかない!
「っええいっ!!!!」
どうにでもなれっ!とヤケクソな気持ちもあったが、ネムリは思いっきり、目の前に迫るマイケルに体当たりした。
体当たり、と思ったのはネムリ本人だけで、実際はマイケルの胸に飛び込んだだけだった。
マイケルにしてみれば、突然ネムリが胸の中に飛び込んできたことに、とっさに対応も出来ず固まってしまった。
「んんっ!?あれ?あれ?…な、なんともない…感じ…です?」
徐々に泣きそうになりながら、ネムリは頭上にあるマイケルの顔を見上げる。
白いマスクが首を傾げてじっとネムリを見下ろしている。
今度こそ、終わった…
「…だ、ダメ…ですか…?」
勝手に声が震えて、視界が歪んでいくのがわかる。
泣いたってどうしようもないってわかってるのに…。
怖いのと情けないのとで、ネムリは思わず顔を下げた。
その行動は必然的に、マイケルの胸に顔を埋めることになる。
マイケルは、困惑していた。
今まで向けられたことのない感情を目の前の女から向けられていることにただ困惑していた。
いつも通りの儀式でロッカーに逃げ込んだ生存者を引きづりだし、フックに運ぼうとロッカーを開けたその時だった。
女は目を見開いてじっとマイケルの瞳を見つめると、突然マイケルの胸の中に倒れ込むように飛び込んできたのだ。
今まで獲物が恐怖に怯え逃げていくことはあっても、向こうから飛び込んでくることなど一度たりともなかった。
ふわりと飛び込んできた女の体は頼りないくらい細く、柔らかかった。
鼻腔をくすぐるほのかに甘い香りに、思わず息を飲んだ。
予想外の展開にナイフを振り下ろすのと忘れて硬直していると、囁くような小さな声がした?
「なんとも……感じ…です…?」
小さな声でハッキリとは聞こえなかったが、
なんとも…感じないです…?
そう言ったように聞こえた。
女は潤んだ瞳で縋るようにマイケルを見上げる。
私の気持ち…わかりませんか…?
そんな声が聞こえたような気がしてマイケルは首を傾げた。
この女は何を言いたいんだろう?
興味が湧いて、殺すのを待って見つめていると、女の瞳が徐々に潤んでいき、涙が溢れ出す。
震える淡い桜色の唇が、声にならない言葉を紡ごうとしていた。
私じゃ…
「…だ、ダメ…ですか?」
私じゃ、貴方の恋人にはなれませんか…?
また、声にならない声が聞こえた。
衝撃にマイケルが硬直していると、目にいっぱいの涙を溜めた女のは、何か諦めたようにマイケルの胸に顔を埋めた。
マスクの奥で、マイケルは目を見開いて、今目の前で真っ直ぐな想いをぶつけてくる女を見つめていた。
未だかつて、こんなに真っ直ぐに想いをぶつけられたことなどあっただろうか?
こんなにいじらしく、愛らしいと思う女など、存在しただろうか?
目の前のこの女が、妙に気になって、欲しくて仕方なくなった。
マイケルは包丁を握った手を離し、両の手で彼女の背中を強く抱き竦めた。
「っきゃっ!?」
しばらく固まっていたマイケルが、動き出してそのままネムリの背中に手を回した。
あ、これ担がれるっ!!
もがこうとする前に、マイケルの両腕にギュッと力が籠る。
「ひゃっ!?…な、なに?」
そのまま担がれると思ったら、マイケルはまたそのまま固まってしまった。
手のひらの感触がしていることから、どうやらナイフは持っていないらしい。
担ぎ上げられるでもなく、ナイフで刺されることもなく、ただマイケルに抱きしめられているような状態がしばらく続いた。
「えっと…見逃してくれるってことで…いいの?」
ネムリが恐る恐る様子を伺うと、マイケルの荒い呼吸音が一瞬止まった。
いつもの儀式の時のように、じぃっと心の奥底まで覗き込まれているように感じた。
しまった!失言だったかもっ…
慌ててごまかそうとしたがもう遅かった。
「きゃっ!?や、やぁ!!は、離してっ!」
ネムリを抱きしめたまま、マイケルは何処かに向けて歩き出す。
もがこうとするも、両手はマイケルの胸と自分の体の間に挟まれて動かせないし、足は完全に宙に浮いていてブラブラと揺らすくらいしか出来ない。
「ねぇ、離してよっ!お願いっ!!」
せめてもの抵抗に声を上げるが、マイケルはラバーマスク越しに荒い呼吸音をさせるだけで、なにも言わない。
ただ、また強く身体を抱きしめられた。
あぁ…助からない…吊られるっ…
またネムリの目から涙が溢れてくる。
恐怖と諦めで俯くと、ボソボソと何か聞こえる。
耳を、すましてみても、不明瞭で何の音なのかわからない。
頭上から聞こえてくる謎の音に、ネムリは微かに眉を潜めて顔を上げる。
マイケルが耳元へと口を寄せる。
不明瞭な音は、耳の直ぐそばでやっと囁き声とわかった。
ー…僕は君が欲しい…大丈夫、離さない…ー
「…ふぇ?…は!?い、いったい何を!?」
今殺人鬼から聞こえるはずの無い言葉を聞いた気がする。
なんだか一瞬、この世界に似つかわしくない甘ったるい雰囲気がしたような気がする。
まるで、まるで恋人に愛を囁くような…
「な、何を言ってるの?」
赤くなりかけた顔を誤魔化すように、ネムリはマイケルから身を離そうと無意味な足掻きを続ける。
マイケルはその様子をじっと見つめた。
恥ずかしがっている様子も嫌いじゃない。
むしろ、とても愛おしい…。
マスクの奥でマイケルは自身も気づかないうちに笑みを溢していた。
初めての恋の幸せに浸りながらマイケルはネムリを抱きしめて、自身の住居へと足取り軽く歩き出した。
「ま、まって!どこいくの!?ねぇってばぁ!」
殺人鬼に勘違いされた可哀想な彼女の悲鳴は、そのまま虚しく森に木霊して消えていった。