DbD短編
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キッチンに立って慌ただしくパタパタと走り回るネムリの姿を、ヒルビリーはにこにこしながら見ていた。
可愛らしい白いエプロンの胸元には、とうもろこしの刺繍がしてあった。
かわいいね、と褒めたらとびきり可愛い笑顔を浮かべて「頑張ったんだよー!」と言ったから、思わずぎゅーっと抱きしめてしまった。
「苦しいよー」なんていいながら、ボクを抱きしめ返してきたネムリは、きっと神様がこの世界に残した最後の天使なんだと本気で思ってしまった。
「待っててねヒルビリー!もうちょっとで焼けるから!」
ネムリはさっきまで慌ただしくかしょかしょと泡立て器でボールをかき混ぜていたのに、いつのまにかコンロの前に立って、にっこりとこちらに微笑みかけてきた。
ヒルビリーも同じくにっこりと笑ってネムリに手を振る。
ふーん♪ふふふーん♪なんて鼻歌を歌いながら、フライ返しを片手に楽しげにフライパンを眺めている。
本当になんて可愛くて、素敵な子なんだろう。
こんな素敵な子とずっと一緒に居られるなら、なんて幸せなことなんだろう。
ボクの人生は、きっとこの子に会うためにあったと言われたら、こんなに幸せなことはきっと無いと思う。
ネムリがボクのお嫁さんになってくれたらいいのになぁ
そうなって欲しいなぁと心の中で呟いてたら、目の前でがしゃん!!!と何かが落ちる音がした。
びっくりして目を開けると、真っ赤な顔でこちらを凝視しているネムリの姿があった。
「ど、どうしたのネムリ?何の音?」
ヒルビリーは慌てて立ち上がってネムリのそばへと駆け寄った。
どうやら、ネムリが手に持っていたフライ返しを落としてしまったみたいだった。
ネムリの手は何かを掴むような歪な形で宙に固まっている。
心なしか手まで赤くなっているように見える。
「大丈夫?もしかして、火傷しちゃったの?」
ヒルビリーはネムリの手をそっと握ると、心配そうにその顔を覗き込んだ。
ネムリの顔を近くで覗き込んで、改めて驚いた。
今まで見たことがないくらいに頬が真っ赤になって、大きな目が涙でうるうると波打っている。
心配な反面、ずっと見ていたいと思うほど可愛くて、ヒルビリーはどうしていいかわからず戸惑ってしまった。
「えっと、あのっ…と、とりあえず冷やす?」
視線を逸らしてわたわたと慌てて蛇口を捻ろうとするヒルビリーの手をネムリがそっと握りしめる。
とても弱くて、気を付けてないとわからないほどのか弱い力だった。
それでも大好きなネムリからのサインにヒルビリーはすぐに振り向いた。
「んっ?」
ネムリを見ると、ネムリは俯きがちにヒルビリーをじっと見上げていた。
ヒルビリーの心臓が、ドキドキと騒ぎ出す。
落ち着かない気持ちでじっとネムリを見つめていると、ネムリの唇が微かに動き、か細い消え入りそうな声がした。
「い、いま…なんて?」
「っへ?な、何?どうしたの?ネムリ?」
見上げてくるネムリの目を見つめ返すと、ネムリは半分泣き出しそうな顔でヒルビリーに詰め寄った。
ヒルビリーは驚きと緊張で体が強張ってしまった。
思わずネムリの手を強く握り返していた。
今度はネムリが手の力に驚いてはっと息を飲んで緊張の面持ちでネムリを見た。
ごくり、とどちらともなく唾を嚥下して、先に口を開いたのはネムリだった。
「っさっき!テーブルに座ってた時っ!ヒルビリーが言ったの…本当?」
「テーブル…?…えっ!?あっ!!」
ヒルビリーの顔が、ネムリに負けないくらいみるみる赤くなって行く。
さっき僕が考えていたことといえば…
いやでも!!あれは心の中で言ってたことでっ!!
いや、でも、もしそれならボク…ボクっ…!
「ボ、ボク…声に、出てた!?」
「…わ、わたしにっ…お嫁さんになって欲しいって…本当…?」
思わず視線を泳がせそうになったヒルビリーの手を、ネムリはぎゅっと両手で握りしめる。
緊張と恥ずかしさからか、ネムリの手は震えていた。
じっと見上げる潤んだ目に不安げな色が揺らめく。
それでもなお、ネムリは決して目を逸らすことなくヒルビリーをじっと見つめていた。
ヒルビリーの喉が震えた。
ごくり、と怯えと照れを唾と一緒に飲み下す。
そうだ… ネムリがこんなに必死にボクに聞いてくれているのに…ボクが恥ずかしがってちゃダメじゃないか!
言え…!言うんだっ!
…ボクだって、ボクだって男なんだから!!
ぎゅっとヒルビリーがネムリの両手を握りしめる。
じっとその目を見つめながら、ヒルビリーは口を開いた。
「…そうだよ。ネムリ。
ボクネムリとずっと一緒に居たいんだ…
ボクの、お嫁さんになって欲しい…!!」
じっとネムリの目を見つめると、ネムリの目から綺麗な滴がぽろりと零れ落ちた。
それは次々に溢れるように零れ落ちて行く。
ヒルビリーは、ネムリの目からまるで宝石がこぼれ出ているみたいに見えて、思わず手を伸ばして溢れでる滴を指で拭っていた。
ネムリは頬に添えられたヒルビリーの手にそっと頬をすり寄せ、とびきり美しい笑顔でヒルビリーに向かって微笑んだ。
「っ…嬉しい…!っ嬉しいよぉ!ヒルビリー!!」
両手を目一杯広げて、ヒルバリーの胸にネムリが飛び込んできた。
大きなヒルビリーの背中には、小さなネムリの腕はとてもじゃ無いけどまわりきらない。
それでも全力でヒルビリーを抱きしめようとしてきているのが伝わってくる。
ヒルビリーも胸に込み上げてくる嬉しさと、愛しさで思わずネムリを持ち上げるように抱きしめていた。
ヒルビリーの頬に柔らかい感触と、可愛らしいチュ、というリップ音がした。
耳元で小鳥のような可愛らしい笑い声と、
「ずっと一緒に居ようね。ヒルビリー」
これ以上無いくらい幸せな言葉が聞こえた。
幸せで胸が詰まってうまく言葉が出せない。
嬉しい。大好き。愛してる。ボクの全て。
愛しい。ずっと一緒にいよう。
言いたいことは溢れてくるのに、うまく言葉にできなくて、ヒルビリーはネムリを強く抱きしめて、頷いた。
「…うん。ずっと、一緒に居ようね。ネムリ」
やっとのことで喉から絞り出した言葉は、震えていて、ヒルビリーはなんだか恥ずかしくて、ネムリの肩に頭を埋めた。
優しくふふと笑って、ネムリはヒルビリーの頭を抱き締める。
幸せな2人の間に、幸せを表したような甘いふんわりとした香りが漂ってきた。
ヒルビリーがうっとりと目を細めると、腕の中のネムリがわたわたと慌て出した。
「あっ!いけない!ヒルビリー下ろして下ろして!」
「わわっ!どうしたの?ネムリ?」
呆気にとられながらも言われた通りネムリを下ろすと、ネムリは落としたフライ返しを拾い上げわたわたと洗うと、コンロに乗せたフライパンをじっと見つめた。
ほっとしたように微笑んで、ネムリはフライパンの中にフライ返しを差し込んで、直ぐ近くのお皿に出来立ての狐色をしたホットケーキを乗せた。
ふんわりと、また甘い幸せな香りが鼻をくすぐってくる。
ネムリがヒルビリーを見つめ、またにっこりと微笑んだ。
「よかった。ホットケーキ焦がしちゃったかと思った。」
お皿に乗せた美味しそうなホットケーキを差し出して、ネムリははにかみながらこういった。
「冷めないうちに食べてね。…ダーリン」
最後はやっぱり恥ずかしかったのか、小さな小さな声になっていた。
ヒルビリーは幸せとネムリの可愛さに、その場に倒れそうになるのをなんとか踏みとどまっていた。
幸せをたっぷり詰め込んだホットケーキは、きっと甘くて、とびきり美味しい事だろう。
幸せを噛み締めるのでいっぱいいっぱいの2人がその味を楽しめるのは、もう少し先の話になるようだ。