DbD短編
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ざぁざぁざぁ
ネムリが寛いでいる家の屋根を激しく叩きつけるように、空から雨が降り注ぐ。
曇天としか言いようのない暗く澱んだ空を窓から見上げ、そっとため息を溢した。
せっかくの休日なのに、もうここ数日間お日様を拝めていない。
いい加減溜まりに溜まった洗濯物をすっきりさせたいし、暖かい日の光を浴びたい。
ベッドの上でゴロンと横になりながらだらけていると、急に後ろから身体がぎゅむっと拘束された。
「ぐぇ!?」
潰れるかと思うほどの力で腹部を締め上げられて、なんか首絞められた鳥みたいな声でた。
腹部にそれはもう逞しくて色の白い男の腕が巻きついている。
ていうか、きつい!いったい!!!
今ならめっちゃウエスト括れてるんじゃない?素直に喜べないけど。
「ま、マイケルマイケル!ギブ!きつい!きついって!」
腕を指先でとんとんと叩くとほんのちょっぴりだけ力が緩んだ。
見ると視界に映るいつものマスク、暑いせいかいつものつなぎじゃなくて、白いTシャツ姿なのが少し新鮮だ。
それなのにマスクは脱がないのが少し不思議だ…。
振り返ったのが嬉しかったのか、マイケルは私を引っ張り上げると、寝転んでた私は親猫に持ち上げられる子猫のように軽々とベッドの上に座るマイケルの足の間にすっぽり収まった。
肩口にマイケルの頭がのっかかって、グリグリと押しつけるように頬擦りされる。
マスクが張り付いて頬っぺたがすんごくグイグイ引っ張られていた。いてぇ。
「もー何何何?どうしたのマイケル?すごいご機嫌じゃん」
なすがままでマイケルの好きにさせていると、ベッドに投げ出されたままのネムリの足に、マイケルの筋肉の盛り上がった陸上選手みたいな足が巻きついてくる。
なんだろう、完全に絵面がアナコンダとかの大蛇に巻き付かれた枝みたいになってる。
完全に、マイケルに四肢を封じ込められたような体勢になってしまった。
「むぅー暑いよぉマイケルぅ!」
抜け出そうと身動ぐと、離したくないというように、余計に絡みついてくる。
汗もかいてるし、流石に勘弁して欲しい。
恥ずかしいし…
なんだか余計に暑く感じてしまう。
汗ばんだ肌が勝手にマイケルに吸い付いてしまって、いたたまれない。
「ひゃっ!?」
首筋に突如、ぬるりと生暖かいものが這った。
何かが這ったあと、妙に跡がひんやりと感じた。
首筋から背中にかけて、ぬるぬると自由に何かが這い回る。
「やっ!ダメだってばマイケル!汗かいてるのにぃ!」
抜け出そうともがいても、びくともしない。
くすぐったいし恥ずかしいしで、最初は必死にもがいていたネムリも、次第に諦めが出てきて、マイケルの好きにさせることにした。
ネムリが動かないのを良いことに、マイケルは首筋を軽く噛んで跡をつけたり、犬のようにぺろぺろと舐めたりと好き放題ネムリを堪能していた。
ネムリはくすぐったいのと多少気持ちいいと思いながらも、いかんせん湿度が高く蒸し暑いなかでくっつかれて、身体が快感とは別に火照るので嬉しいながらもげんなりとしていた。
「うー…マイケル、ストップ!」
いい加減暑苦しいし首の後ろがべっちゃべちゃで嫌じゃないけど気持ち悪い。
ぺしっと腕を叩くと、ようやくマイケルの動きが止まった。
後ろに無理やり身体を捻ってマイケルを見上げる。
思ってた通り、マイケルはマスクを顔半分までずらしていた。
首を傾げてネムリの動向をじっと見ている。
何?とでも言いたげな様子のマイケルのマスクをむんずと掴んで、
「おりゃー!!!」
グイッ!と思いっきり引っ剥がしてやった。
ばさり、とマスクの中から綺麗な金髪が落ちてくる。
予想もしてなかったのか、いつもはマスクの下も無表情なのに、心なしか目を見開いて呆然としているように見えた。
やっぱマイケルも熱かったんだなぁ。
色白な額に薄らと汗が滲んでいる。
マスク同様に綺麗に撫で付けられてるオールバックがちょっと崩れてて少し可愛く見えた。
あれだ、ギャップ萌え。
うんうんと1人納得してしているネムリに、一体どうしたの?というようにマイケルは首を傾げた。
暑さのせいかヨレヨレっとなった髪がマイケルの首にかかる。
畜生、何しても絵になるしカッコいいな、と思いながら、
「ん!」
ネムリは両手をマイケルへ伸ばす。
「…?」
「マイケルのせいでべっちゃべちゃだし、あっついからお風呂!水風呂入る!連れてって!」
一瞬だけ目を見開いたあと、マイケルはゆっくりと笑った。
暑さにかこつけて、甘えてくる彼女も愛らしくて堪らなかった。
暑さのせいか、それとも照れているのか、頬を赤くして、むくれたような顔のまま早く!と急かしてくる彼女を抱き上げてベッドから立ち上がる。
「あ!あと上がったらアイス食べたいから、アイス買ってきて!」
がっくりとマイケルは立ち上がりかけてまたベッドに座り込んだ。
完全に一緒に入るつもりだったマイケルは肩透かしを食らったような気がして思わずじと、っとネムリを凝視する。
今度はネムリが何?と言いたげに首を傾げた。
マイケルは無言でネムリの頭をグリグリと押す。
「むぅう!マイケルのせいで汗かいたんだもん!お詫びっ!」
ポカポカと可愛らしく胸元を叩いてくるネムリに、マイケルは確かに自分の体温が暑さとは別で上がった気がした。
もうこのまま問答無用で風呂場に連れ込んでやろうそうしよう、再び立ち上がろうとしたとき、耳元でボソリと、
「アイス買ってくれたら、お風呂の後好きにしていいよ…?」
彼女の方を見ると顔を逸らして、ハーゲンダッツね!!バーになってるやつ!と叫んでいた。
髪の隙間からちらりと見える耳が、真っ赤になっていた。
あまりに愛らしくて、マイケルはフッと笑った。
食べ頃で真っ赤なその耳にそっと口付け、囁く。
ーすぐに戻ってきて、僕は冷たくて食べ頃のネムリをいただくねー
「っ……す、すぐ上がるから!」
手の中の愛しい彼女がまた一段と熱くなっていた。
ゆっくりと風呂場に向けて歩き出す。
洗面台に彼女を座らせるように下ろして、汗ばんだ額にそっと口付ける。
未だに彼女の手の中にあったマスクを回収して手早く被りなおす。
「ほ、本当にすぐ上がるから!秒だから!せいぜいゆっくり買ってきなね!」
捲し立てるように喚くネムリの頭をぽんぽんとマイケルが叩く。
少し膨らんでいる頬にも口付けをしてから、マイケルは玄関へ向かっていく。
玄関の扉を閉めて、マイケルはいつものマスクの下で笑う。
頭に浮かぶのは、真っ赤な顔で騒いでいたネムリの姿。
あぁ、本当になんで可愛いんだろう。
ネムリの我儘なら、なんでも叶えたいと思ってしまう。
惚れた弱みってやつだろう。
…まぁ最も、願いには代償がつきものというもの。
僕がネムリの望み通り、ゆっくりとアイスを買いに行っている間に、僕を待ってひんやりと冷やされて食べ頃になったネムリを、思う存分味合わせて貰おう。
きっと、その頃にはアイスどころじゃなく、また暑いと言ってもう一度お風呂と言い出すだろうから。
土砂降りで鬱屈した天候とは裏腹に、ウキウキと楽しそうなハロウィンの殺人鬼は傘も持たずに愛しい人の我儘と自分の欲望を満たすために颯爽と歩き出すのだった。