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「あの……なんで俺たちはこんなにキラキラしたお店で男二人で居るんでしょうか……あっ、先生と二人で居るのが嫌だと言うわけではなくて……っ」
「構わないよ。私もまさか女性客ばかりだとは思わなかったよ」
苦笑いを浮かべる先生は参ったねと言いながら珈琲を口にする。
とある休日。シンジュク・ディビジョンにあるお洒落なカフェに俺と先生は居た。
なんで俺たちはこんな所に居るんだろう?
周りは女の人ばかりでめちゃくちゃ浮いてる。あちこちから刺さる視線が痛い。そもそも、ここを待ち合わせにした張本人が居ない。何で居ないんだ? 電車遅延? もっと早く家出て来いよ。なんで30分も並ばなきゃならないんだ。先生は優しいから「到着するまでに入れるように先に並んでおこう」て言ってくださったのに席に案内されてもまだ来ないなんて……! 俺か? 俺が悪いのか? あの人は俺が嫌いだからこんな事をするのか……?!
「俺が俺が俺が……」
「独歩くん。何を考えてるかだいたい予想は付くけど、また悪い癖が出ているよ」
「っ! すみません……」
「お待たせしましたー!」
自己嫌悪に陥っていると聞き慣れた声が入り口から響いた。
「遅かったね、名前くん」
「ホントすみません、山手線なかなか動かなく……」
苗字さんは俺と目が合うと「ぶっ!」と噴き出した。
「……帰る」
「ご、ごめんて……っぶふ」
「笑いながら謝るな!」
席を立とうとした俺をまあまあと宥めながら肩を押さえ座らせると苗字さんも隣に座った。クロークバスケットに鞄を置くとメニュー表を開いた。
「先生たちははもう頼んだんですか?」
「いや、もうすぐ到着すると連絡をくれたから飲み物だけ頼んであるよ。名前くんのお薦めはどれだい?」
「そうですね~……」
苗字さんは見やすいようにメニュー表を先生のほうに向けると、先生は身を乗り出して説明を聞き頷く。
パンケーキ食べに行こうよ!
そう提案したのは苗字さんだった。
なぜ突然、と思ったが先生も誘ったらオッケーしてくれたし三人で行こうよと誘われた。ホストモードの一二三にもダメ元で誘ったが、
「ごめんね子猫ちゃん……。もちろん僕も一緒に行きたいけれど、苗字さんとオフで出かけてしまうと、他の子猫ちゃんたちを嫉妬させてしまうから遠慮しておくよ」
と断られたそうだ。それ以前にそのスーツ脱いだら苗字さんに近づく事さえできないだろ。
俺も断ろうと思ったが、一二三と違い釣りに参加してなかった俺は先生とオフで出かけることが今まで一度も無かった。だからかもしれない。「先生もオッケーした」というフレーズに不覚にも惹かれてしまった。まさかこんな女の人ばかりの店だとは思わなかった。なんで休日にこんな苦行を強いられないといけないんだ? だからって先生を巻き込むなんて……!!
「――で、お願いします」
「かしこまりました」
「えっ?」
俺が先日のやり取りを思い出している間に苗字さんは注文を終わらせていた。待て、俺は何も言ってないぞ。
「俺の分はどうしたんですか?」
「ん? 勝手に頼んだ」
「勝手に頼むなよ! ……はぁ、もう何でもいいや」
気が抜けて背もたれに身体を預けて天井を仰ぐと、視界の端に映った客がこちらを見ている事に気づきまた周囲が気になってしまった。女たちがひそひそ言っている。きっと俺たちの悪口だ。俺なんかがこんなお洒落なカフェに居る事がいけないんだ……。
「なんか改めて見るとこの構図すごいね……」
「すごい、とはどういう意味だい?」
先生も少なからず苗字さんが来たことでホッとしたのか先程よりも気が緩んでるみたいだった。
それよりも構図がすごいってなんだ?
「いや、なんていうか……ここ入ってきた時にぽつんと男二人でテーブル囲んでる姿見て『あ、やば……』て思ったので」
「今更かよっ……」
両手を合わせてゴメンねって謝られても積もり積もった苛立ちは収まらない。俺たちがどんな思いで入店したと思ってるんだ……っ!! そーいうところ一二三と被るんだよっ……!
「そうだね、名前くんが来てくれて安心したよ」
「先生……、そもそもこの人が誘った癖に時間通り来なかったのが原因ですからね」
「そうだけど名前くんは……」
「あー! いいのいいの! 全部わたしが悪いんだから! ここはおごるから勘弁して。ね!」
先生の会話を遮って苗字さんはどうどう~と俺を宥めた。俺は動物か何かか。
「それにさ、よく見ると男性客も居るでしょ? カップルだけど。別に男がパンケーキ食べに来ても悪い事じゃないんだから」
「男二人で待たせてたくせによく言うよ……」
「それはもう謝ったじゃん。根に持つなぁ~。そんなんじゃ彼女できないよ!」
「っ、ア・ナ・タは~~~!!」
「まあまあ独歩くん。名前くんもそのくらいにしなさい」
困ったように俺たちを宥める先生をこれ以上困らせたくないので黙ったが、苗字さんは何のために俺を誘ったんだ。まさか怒らせる為じゃないだろうな? 休日を使ってまですることか?
苗字さんも先生にごめんなさいと謝った直後に注文していたパンケーキがテーブルに運ばれてきた。
3皿がテーブルに並ぶと全て同じ物だった。あれほどメニューを見てあれだこれだと言っていたから何種類か違うものが出てくるのかと思っていた。俺の思ってることを察したのか、苗字さんは「ここにあるやつをトッピングするんだよ」と、パンケーキとはまた別の3種類のプレートを指差した。
「ストロベリーとマンゴーとチョコバナナ」
「どれもとても美味しそうだね」
先生は目の前に並んだパンケーキを見て顔をほころばせた。
「でしょう? 友達に教えてもらってずっと来たいと思ってたので」
3種類とも食べたかったから、と3皿のパンケーキにちょっとずつトッピングをしていく。勝手にするなと言いたかったが、先生も特に止めないし苗字さんもニコニコと楽しそうにトッピングをしていたので勝手にさせることにした。器用にも苗字さんはジャムやチョコですらどれとも混ざらないように一皿ずつ乗せていく。謎の器用さだ。
「私もお店でパンケーキを食べるのは初めてだから、どんな味がするのかとても興味深いよ。けど、こんなに食べれるかな……?」
「あ、大丈夫ですよ。これすっごくふわとろで重くないし、甘すぎないんで見た目より食べれちゃうんですよ」
て、友達からの情報ですが。と付け加えトッピングを終えた苗字さんは自分のパンケーキにナイフを入れ一口ぱくりと食べた。
俺も目の前のパンケーキにナイフを入れた。ナイフなんて必要ないくらい生地は柔らくて、苗字さんの言うとおり甘すぎず、ほとんど噛まずに飲み込んだ。トッピングされたストロベリーの酸味もいい具合に甘さを抑えていた。
「美味しい……」
ぽろっと無意識に出た言葉に、隣に居た苗字さんはふっと笑った。
「良かった」
俺が反射的に苗字さんを見ると、もう視線は目の前の皿でマンゴーゾーンに取り掛かっていた。
今のは幻聴か?
先生も「今まで味わったことの無い舌触りと食感だ」とか色々興味深く味わっている。
その後は3人で黙々とパンケーキを口に運んだ。甘くて暖かい時間だった。
「今日はありがとう。とても楽しい時間だったよ」
「わたしもです。お付き合いありがとうございました」
店を出て挨拶するとそれぞれ解散となった。先生は用事があるという事で苗字さんと二人になって駅まで歩いた。
既に日も傾いていて、ビルから覗く空はうっすらと赤紫色に染まっていた。
「……何で今日、俺を誘ったんですか?」
別に聞かなくていいことだったかもしれない。けど、聞かずにはいられなかった。
「だって独歩くん、先生とデーとしたがってたじゃん」
「でっ……ちがっ……」
「一二三だけ抜け駆けして二人で出かけて……とかなんとか。まぁ、わたしも先生とデートしたかったし」
先生とデートとか、男同士ではデートって言わないだろ。しかも苗字さんが先生とデートしたいだけなら尚更意味がわからない。
「だったら俺を誘う理由無いんじゃないか……」
「いやいや! 独歩くんが居ることに意味があるんだよ!?」
反射的に俺の言葉を否定してくる苗字さんに思わず体を反らせた。び、びっくりした。
「なんで……」
「いいからいいから。年上の言う事は黙って聞いときなさい。――はいコレ」
「?」
なんだろう。差し出されたのは小ぶりの紙の箱。その箱からは先ほど自分たちが食べていた物と同じ匂いがした。
「これ……、もしかして……」
俺はその箱をそっと両手で受け取った。持ち手を離すと苗字さんはにっと口角を上げた。
「一二三くんにお土産。帰ったら渡してあげて」
いつの間に買ったんだろう。お会計は苗字さんがしてくれたからその時かもしれない。
「ありがとう、ございます……。一二三もきっと喜びます……」
「うん」
本当は四人で来たかったんだけどね~。
そう言って苗字さんは先に歩き出した。
一二三は相変わらず女性恐怖症だし仕方が無いといえばそうなのだが、一二三のためにこうして苗字さんが気を遣ってテイクアウトしてくれた事が素直に嬉しかった。
後日、仕事で先生に会った時に教えてもらった。
苗字さんはお勧めのスイーツ店を片っ端から調べて誘ってくれたんだと。友達からの情報じゃなかったのか。
「何でわざわざそんなことを……?」
どんだけパンケーキ食べたかったんだ?
「まあそれもあると思うけど、そうじゃないよ独歩くん」
「……?」
「直接言わないからとてもわかりづらいけれど、彼女なりの優しさだね」
『疲れた時は甘い物が一番だよね!』
「構わないよ。私もまさか女性客ばかりだとは思わなかったよ」
苦笑いを浮かべる先生は参ったねと言いながら珈琲を口にする。
とある休日。シンジュク・ディビジョンにあるお洒落なカフェに俺と先生は居た。
なんで俺たちはこんな所に居るんだろう?
周りは女の人ばかりでめちゃくちゃ浮いてる。あちこちから刺さる視線が痛い。そもそも、ここを待ち合わせにした張本人が居ない。何で居ないんだ? 電車遅延? もっと早く家出て来いよ。なんで30分も並ばなきゃならないんだ。先生は優しいから「到着するまでに入れるように先に並んでおこう」て言ってくださったのに席に案内されてもまだ来ないなんて……! 俺か? 俺が悪いのか? あの人は俺が嫌いだからこんな事をするのか……?!
「俺が俺が俺が……」
「独歩くん。何を考えてるかだいたい予想は付くけど、また悪い癖が出ているよ」
「っ! すみません……」
「お待たせしましたー!」
自己嫌悪に陥っていると聞き慣れた声が入り口から響いた。
「遅かったね、名前くん」
「ホントすみません、山手線なかなか動かなく……」
苗字さんは俺と目が合うと「ぶっ!」と噴き出した。
「……帰る」
「ご、ごめんて……っぶふ」
「笑いながら謝るな!」
席を立とうとした俺をまあまあと宥めながら肩を押さえ座らせると苗字さんも隣に座った。クロークバスケットに鞄を置くとメニュー表を開いた。
「先生たちははもう頼んだんですか?」
「いや、もうすぐ到着すると連絡をくれたから飲み物だけ頼んであるよ。名前くんのお薦めはどれだい?」
「そうですね~……」
苗字さんは見やすいようにメニュー表を先生のほうに向けると、先生は身を乗り出して説明を聞き頷く。
パンケーキ食べに行こうよ!
そう提案したのは苗字さんだった。
なぜ突然、と思ったが先生も誘ったらオッケーしてくれたし三人で行こうよと誘われた。ホストモードの一二三にもダメ元で誘ったが、
「ごめんね子猫ちゃん……。もちろん僕も一緒に行きたいけれど、苗字さんとオフで出かけてしまうと、他の子猫ちゃんたちを嫉妬させてしまうから遠慮しておくよ」
と断られたそうだ。それ以前にそのスーツ脱いだら苗字さんに近づく事さえできないだろ。
俺も断ろうと思ったが、一二三と違い釣りに参加してなかった俺は先生とオフで出かけることが今まで一度も無かった。だからかもしれない。「先生もオッケーした」というフレーズに不覚にも惹かれてしまった。まさかこんな女の人ばかりの店だとは思わなかった。なんで休日にこんな苦行を強いられないといけないんだ? だからって先生を巻き込むなんて……!!
「――で、お願いします」
「かしこまりました」
「えっ?」
俺が先日のやり取りを思い出している間に苗字さんは注文を終わらせていた。待て、俺は何も言ってないぞ。
「俺の分はどうしたんですか?」
「ん? 勝手に頼んだ」
「勝手に頼むなよ! ……はぁ、もう何でもいいや」
気が抜けて背もたれに身体を預けて天井を仰ぐと、視界の端に映った客がこちらを見ている事に気づきまた周囲が気になってしまった。女たちがひそひそ言っている。きっと俺たちの悪口だ。俺なんかがこんなお洒落なカフェに居る事がいけないんだ……。
「なんか改めて見るとこの構図すごいね……」
「すごい、とはどういう意味だい?」
先生も少なからず苗字さんが来たことでホッとしたのか先程よりも気が緩んでるみたいだった。
それよりも構図がすごいってなんだ?
「いや、なんていうか……ここ入ってきた時にぽつんと男二人でテーブル囲んでる姿見て『あ、やば……』て思ったので」
「今更かよっ……」
両手を合わせてゴメンねって謝られても積もり積もった苛立ちは収まらない。俺たちがどんな思いで入店したと思ってるんだ……っ!! そーいうところ一二三と被るんだよっ……!
「そうだね、名前くんが来てくれて安心したよ」
「先生……、そもそもこの人が誘った癖に時間通り来なかったのが原因ですからね」
「そうだけど名前くんは……」
「あー! いいのいいの! 全部わたしが悪いんだから! ここはおごるから勘弁して。ね!」
先生の会話を遮って苗字さんはどうどう~と俺を宥めた。俺は動物か何かか。
「それにさ、よく見ると男性客も居るでしょ? カップルだけど。別に男がパンケーキ食べに来ても悪い事じゃないんだから」
「男二人で待たせてたくせによく言うよ……」
「それはもう謝ったじゃん。根に持つなぁ~。そんなんじゃ彼女できないよ!」
「っ、ア・ナ・タは~~~!!」
「まあまあ独歩くん。名前くんもそのくらいにしなさい」
困ったように俺たちを宥める先生をこれ以上困らせたくないので黙ったが、苗字さんは何のために俺を誘ったんだ。まさか怒らせる為じゃないだろうな? 休日を使ってまですることか?
苗字さんも先生にごめんなさいと謝った直後に注文していたパンケーキがテーブルに運ばれてきた。
3皿がテーブルに並ぶと全て同じ物だった。あれほどメニューを見てあれだこれだと言っていたから何種類か違うものが出てくるのかと思っていた。俺の思ってることを察したのか、苗字さんは「ここにあるやつをトッピングするんだよ」と、パンケーキとはまた別の3種類のプレートを指差した。
「ストロベリーとマンゴーとチョコバナナ」
「どれもとても美味しそうだね」
先生は目の前に並んだパンケーキを見て顔をほころばせた。
「でしょう? 友達に教えてもらってずっと来たいと思ってたので」
3種類とも食べたかったから、と3皿のパンケーキにちょっとずつトッピングをしていく。勝手にするなと言いたかったが、先生も特に止めないし苗字さんもニコニコと楽しそうにトッピングをしていたので勝手にさせることにした。器用にも苗字さんはジャムやチョコですらどれとも混ざらないように一皿ずつ乗せていく。謎の器用さだ。
「私もお店でパンケーキを食べるのは初めてだから、どんな味がするのかとても興味深いよ。けど、こんなに食べれるかな……?」
「あ、大丈夫ですよ。これすっごくふわとろで重くないし、甘すぎないんで見た目より食べれちゃうんですよ」
て、友達からの情報ですが。と付け加えトッピングを終えた苗字さんは自分のパンケーキにナイフを入れ一口ぱくりと食べた。
俺も目の前のパンケーキにナイフを入れた。ナイフなんて必要ないくらい生地は柔らくて、苗字さんの言うとおり甘すぎず、ほとんど噛まずに飲み込んだ。トッピングされたストロベリーの酸味もいい具合に甘さを抑えていた。
「美味しい……」
ぽろっと無意識に出た言葉に、隣に居た苗字さんはふっと笑った。
「良かった」
俺が反射的に苗字さんを見ると、もう視線は目の前の皿でマンゴーゾーンに取り掛かっていた。
今のは幻聴か?
先生も「今まで味わったことの無い舌触りと食感だ」とか色々興味深く味わっている。
その後は3人で黙々とパンケーキを口に運んだ。甘くて暖かい時間だった。
「今日はありがとう。とても楽しい時間だったよ」
「わたしもです。お付き合いありがとうございました」
店を出て挨拶するとそれぞれ解散となった。先生は用事があるという事で苗字さんと二人になって駅まで歩いた。
既に日も傾いていて、ビルから覗く空はうっすらと赤紫色に染まっていた。
「……何で今日、俺を誘ったんですか?」
別に聞かなくていいことだったかもしれない。けど、聞かずにはいられなかった。
「だって独歩くん、先生とデーとしたがってたじゃん」
「でっ……ちがっ……」
「一二三だけ抜け駆けして二人で出かけて……とかなんとか。まぁ、わたしも先生とデートしたかったし」
先生とデートとか、男同士ではデートって言わないだろ。しかも苗字さんが先生とデートしたいだけなら尚更意味がわからない。
「だったら俺を誘う理由無いんじゃないか……」
「いやいや! 独歩くんが居ることに意味があるんだよ!?」
反射的に俺の言葉を否定してくる苗字さんに思わず体を反らせた。び、びっくりした。
「なんで……」
「いいからいいから。年上の言う事は黙って聞いときなさい。――はいコレ」
「?」
なんだろう。差し出されたのは小ぶりの紙の箱。その箱からは先ほど自分たちが食べていた物と同じ匂いがした。
「これ……、もしかして……」
俺はその箱をそっと両手で受け取った。持ち手を離すと苗字さんはにっと口角を上げた。
「一二三くんにお土産。帰ったら渡してあげて」
いつの間に買ったんだろう。お会計は苗字さんがしてくれたからその時かもしれない。
「ありがとう、ございます……。一二三もきっと喜びます……」
「うん」
本当は四人で来たかったんだけどね~。
そう言って苗字さんは先に歩き出した。
一二三は相変わらず女性恐怖症だし仕方が無いといえばそうなのだが、一二三のためにこうして苗字さんが気を遣ってテイクアウトしてくれた事が素直に嬉しかった。
後日、仕事で先生に会った時に教えてもらった。
苗字さんはお勧めのスイーツ店を片っ端から調べて誘ってくれたんだと。友達からの情報じゃなかったのか。
「何でわざわざそんなことを……?」
どんだけパンケーキ食べたかったんだ?
「まあそれもあると思うけど、そうじゃないよ独歩くん」
「……?」
「直接言わないからとてもわかりづらいけれど、彼女なりの優しさだね」
『疲れた時は甘い物が一番だよね!』
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