桜の季節
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さくら「お待たせしました。準備をはじめますね?」
龍馬「おう!待っちょったんじゃ~。よろしく頼むぜよ。」
さくらが部屋に入ると、志士たちはみな座布団に座り落ち着きを払っていた。
さくらはその静けさに、緊張してきてしまったていた。
ドキドキと心臓がうるさい、と、心臓に手を当てた。
先ずはお皿を乗せる為の膳を並べ、照り焼きの皿を乗せていった。
「「「「おおお~」」」」
一斉に声をあげた事に、さくらはビクリと驚いてしまった。
料理を出すまでは大丈夫かどうか不安でもあるが、志士たちの顔を見て、キラキラした目を見て一安心をした。
そして、冷めないうちに次々に運んでいった。
お味噌汁もご飯もおひたしと、照り焼きもお茶も、全て並ぶと圧巻!
お腹が鳴りそうだった。
龍馬「おぉーこりゃ~まっこと綺麗ぜよ。」
中岡「はいっス!新しい盛り付けですね。あと、龍馬さんの大好きな鶏肉ですかね?なんか少し光っているっス」
大久保「小娘にしては、とても美しい盛り付けだな。褒めてやろう。」
武市「見た目にも気を使うのはとても良いことです。目で味わうと言う言葉を忘れてなかったようだね。」
さくら「はい。武市さんに以前教わったので、私がいた場所の盛り付けを再現してみました。」
武市「うん。とても美味しそうだ」
龍馬「まーた武市が抜け駆けしちゃるぜよ。」
以蔵「おい!龍馬!先生をバカにするな!」
高杉「おい、さくら!この料理はなんと言うんだ!」
さくら「テリヤキチキンです。…あ!鳥の照り焼きです。」
桂「テリヤキ…鳥。」
さくら「でも、自信作はお味噌汁です。さ、冷めないうちにどうぞ。」
さくらの掛け声に一斉に手を合わせいただきます。の声から箸をつけていく。
自信作と言っておきながら、実は心臓がドクンドクンと脈を打っているのが分かった。
家族以外の誰かに食べて貰うのは初めてだから緊張…。
そして、部屋はしーんと静まり返ってしまった。
さくら「(えっ!?やっぱり美味しくない??この無言は何!?怖い。泣いちゃいそう。)」
そう思うのも仕方なかった。
お味噌汁もったまま、龍馬は固まってしまっていた。
みな目を見開いて、凝視している。
あの高杉さんですら口に頬張ってやや上を向いたまま固まっている。
この有様はとても不安が募ってしまい、さくらは不安で泣きそうになっていた。
どうしよう…。
でも、その沈黙を破ったのは、龍馬だった。
さくら「あ、あの…」
龍馬「~~~っっぅうんまいぜよ!!!!!」
さくら「え!?」
龍馬「いんや、こん料理はまっこと美味いぜよ!!こんな料理食べた事がない!!まっこと、まっこと、美味いぜよ!!!!」
高杉「うーーーーーーーーんめぇーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!なんだこれは!美味すぎるぞ!!!流石は俺様の嫁だ!」
大久保「舌にのこる鳥の脂の旨味と、まったりとしたこの味わい深さ……美味だ。」
武市「あぁ、この料理は想像以上のものだ。皆が沈黙してしまうぐらいだからな。」
中岡「姉さんのこの自慢のお味噌汁が、本当に心から癒されます!胃の腑にゆっくりと染み渡る、優しい味です!!本当に美味しいっス!」
桂「確かに、このお味噌汁…是非教えて欲しいな。こんな優しいのに味噌の味と全てが合間って、こんなに落ち着く味は初めてだよ。さくらさん。」
さくら「ありがとうございますっ。良かった。本当に嬉しいです!!」
私は嬉しくて嬉しくて、お礼を伝えた。
みんなも同じように笑ってくれたり、顔を晒したり咳払いしたりと、反応が其々帰ってきた。実はこの時、一番の幸せはこれだなと、思っていたなんて私は知る由もなかった。
中岡「以蔵君も、姉さんになんか言ってあげたら?いつもより、箸が進むのは早いみたいだけど~」
以蔵「ぐ!!慎太っ、何をっ」
さくら「どーかな?以蔵。口に合う??」
以蔵「っ…!お、お前にしては上出来だ。…おかわり!」
顔をそらしながら、でも、顔を赤らめて椀を出してくる以蔵に、さくらも笑顔でそれを受け取るのだった。
中岡「まったく、素直じゃないんだから」
以蔵「う、煩い!!これ、貰うぞ!!」
中岡「あーーーーーーー!!!以蔵君酷い!!それ、オレの照り焼き!!!」
そうして、賑やかな夕餉は続くのであった。
夕餉を食べ終え、思った通りそのまま宴会モードへ。
膳だけ置いて、皿や椀を片付けた。
さくら「お酒と、つまみの用意をしているんですが、その前に少し他の物を準備してもよろしいでしょうか??」
龍馬「おう、ええよ。なんかあるんかの?」
さくら「はいっ」
笑顔で答え、例の物を用意した。
まず、綺麗な青色をした小皿を置き、水を少しづつ入れていった。
流石のみんなもこれにはハテナを浮かべ私を見ていた。
龍馬「何が始まるんか、わくわくするのー」
中岡「はいっス。これは何でしょうね。」
桂「ふむ。新しい試みだね。楽しみだ」
そして、さくらはその小皿の水に、昼間用意した、桜の花を一輪づつ浮かべていった。
花びらだけではない、そのまま綺麗な形で散ってしまった桜の楽しみ方だった。
これも、さくらの母に教わったものだった。
青いお皿を空に見立て、桜を咲かせる。
武市「これは、なんと言う趣きか」
桂「まるでさくらさんそのままだね。」
龍馬「まっこと、可愛らしい」
さくら「えっと、ちょっと恥ずかしいんですが、聞いてもらえますか?」
さくらの言葉に皆、静かに耳を傾けてくれたのだった。
一呼吸置いてから、私はゆっくりと話し始めた。
さくら「私がいたところでは、7歳と13歳になる年の、桜の咲く時期にある行事があるんです。その子ども達の門出を祝う物なんですが。
それで、私が中学…あ、その時に、初めて家族に感謝を伝えたくて、お味噌汁を一人で作ったんです。
あの時のお味噌汁は美味しくなかったんですけどね。お父さんとか成長したなって泣いちゃって。
それから毎日、お母さんが作り方を教えてくれて…そして、今の味になりました。」
さくらの紡ぐ言葉に、みんな耳を傾けてくれていた。
みんなはこの時、話を聞きながらゆっくりと先ほどの味が、さくらの故郷の味だと理解し、さらに耳を傾けてくれているようだった。
さくら「私、今日の桜を見ていて、その日を思い出したんです。とても綺麗な澄み切った晴天と、桜の色があの日にとても似ていたんです。」
わたしは想像し目を閉じた。
さらに言葉を紡ぎ、ゆっくりと話を進めて言った。
さくら「そして、ここに来て皆さんに出会って、今があって、本当に幸せだなって心から思ったんです!」
「「「「っ!!」」」」
この時、さくらの目がキラキラと輝き、目を離せなかったのは、さくらの本心が見えたからで、ここにいる志士たち皆、この危ない京の動乱の中、幸せだと言ってのけたさくらに愛おしさが募ったのを、本人は知る由もなかった。
さくら「だから、ちゃんとお礼がしたかったんです。なので、お登勢さんにお願いして、お台所を借りて料理をしたんです。」
なるほどと、これでみんなの所に行こうとしていた訳がわかり、ホッと胸を撫で下ろしたのだった。
さくら「みなさん。いつもいつもありがとうございます!これからも、よろしくお願いします!」
ちゃんと手をついて、お辞儀をするさくらにみな、顔がほころんだのだった。
そして、手前にいる龍馬から一人一人に花型の小さな手紙を手渡しで届け、一人一人にありがとうの感謝をそえていったのだった。
そして、最後の一人に渡した時、丁度お登勢が、酒とつまみを持って来て、中に入った時は、嬉しさと愛しさで悶絶する、志士たちの姿を見るのであった。
また桜が咲く頃にまたみんなで揃ってご飯食べたいですね!
と、さくらが伝えて、笑い合う志士に大好きだと伝えたことで、寺田屋から雄叫びが聞こえたと話題になるのは次の日の話。
完