「あれ？梅田さん？」

「深澤先生！」

俺が担当つかせて貰っている生徒の1人である梅田さん
と、その他数人
彼女達はクラスで目立つわけでもなく、影が薄いわけでもなく、いわゆる中枢グループといったところ
自分から俺によってくることはあまりないが、俺が近くにいると話かけてくることは多く、むしろ他の女の子達よりもグイグイくるなって感じで…

「何してるんですか〜？」

「部活動だよ、部活動」

「部活動って言っても仁那だけでしょ？」

仁那、と呼ぶ彼女はその本人と仲が良かったはず
いつも一緒に居て、普段は青海もこのグループの中に居たはずなんだけど…

「仁那だけ特別扱いしてるの？何で？」

そう問いかけてくる彼女は顔は笑っているが目は笑っていない
他の子達も同じだ

「そんなことないよ。顧問として、生徒の面倒を見るのは当たり前でしょ？」

きっと彼女達が求めているのはこの回答
まぁ、別に嘘ついてるわけじゃないけど

「そうだよね〜仁那、大会張り切ってるもんね〜」

「最近付き合い悪かったし！」

「カラオケ全然来ないし〜」

付き合いが悪い、カラオケに来ない
それは大会に向けて頑張っている証拠だろう
どうやら彼女達が今日の青海の様子の原因なんだろう

「それだけ大会に真剣なんだろうね。付き合い悪いのはわかるけど、友達なんだから応援してあげなよ〜」

本当は怒りたいとこだが、この場をなるべく穏和にするのが正しいだろう
そう判断する俺は、教師を目指す者をしては失格かもしれないな

「深澤先生優しいよね〜でも、気をつけてね…？」

「何が？」

梅田が俺との距離を詰める

「仁那って、男たらしなの。本人は無自覚みたいなんだけどね？でもそれが尚更周りから反感買いやすいんだよね〜」

「無自覚だからって全て許されるわけじゃないしね」

「実際仁那に泣かされた男子いるもんね」

女子の嫉妬というのは、これほどまでに怖いのか…
何を言われるのかと思ったら、友達のことを男たらし…

「大丈夫だよ。あくまでも、先生と生徒だから」

「そうだよね〜深澤先生は仁那のこと生徒としか思ってないよね〜！」

だよね〜！などと盛り上がっているが俺の目には青海をバカにしているようにしか見えない
別に、本当に青海にそんな感情を持っているわけではないが…

「ほら、皆んな暗くなる前に帰りな？」

「はぁ〜い」

「バイバイっ深澤先生」

「また明日〜」

ゾロゾロと去っていく彼女達の背中を見つめながら思う

『何でっ、私が……』

扉越しに聞いた青海の声
アレは明らかに泣いていた
原因は俺かな…
詳しいことはわかないが、青海と彼女達の間で衝突があったんだろう
今日の昼休みも、別の子とご飯食べてたし…

「ふっか？何してんの」

「あ、照…」

日中来ているスーツから、トレーニングウェアに着替え、いかにもコレから運動しますっという格好

「これから部活？」

「そうだけど…そんなとこに突っ立ってどうした？」

そういえば、照って俺らの隣のクラス担当で、教科は体育だから3年生全員わかるはず…
何なら青海さん運動神経悪すぎるってこないだ言ってたな…

「照、今日夜暇？」

「まぁ、特に予定はないかな」

「飯行こ」

「おう」

長年の付き合いでもあるから話はすぐに終わり照は部活へ向かう
さて、俺は…

「ふっかぁ！？仕事手伝うなんてなんの風の吹き回し！？」

「失礼な！」