「仁那〜、ちょぉっと聞きたいことあんだけど」

「麗美ちゃん？どうしたの？」

裏庭から戻ってくると麗美ちゃんが話しかけにくる
もしかして、噂のこと？
確かに、麗美ちゃんは知ってる気がする…

「あのさぁ〜、…って、白石さん、そんなに警戒しなくていいから！」

「あぁ、ごめんね？」

「可愛いなオイ」

何か、コテンッと顔を傾けてるあざとい結ちゃんにやられてるんだけど…
口は悪いけどね

「で、仁那。あんた何か噂なってるよ」

「あ〜」

そんなに広まってるの？
ていうか内容がわかんないんだけど…

「私もさっき結ちゃんに教えてもらって…、ただ、内容は知らないんだよね」

「あ、そーなの。内容知らないんだ。教えようか？」

「うん、教えてほしいけど…」

“悪い”噂なんだよね…？
何を言われているのかは気になる
でも…

「仁那ちゃん、無理しなくていいんだよ」

「うん、仁那が嫌なら言わないよ」

「2人とも…」

正直、怖い
でも、何を言われているかわかんないのも、嫌だ
それに、2人みたいに、噂を鵜呑みにしない子達だっている
だから…

「麗美ちゃん、教えて？」

「……わかった。最初に言っとくけど、私は仁那を信じてるからね」

「私も！」

「2人とも、ありがとう」

私の返答を聞き、麗美ちゃんがゆっくりと口を開き始めた…

麗美said

「はぁ？何言ってんの」

「だから！青海さん、教育実習生達誑かしまくってるらしいよ」

何それ、どこ情報だよ
誑かしまくってるって何？
仁那がそんなことするわけないじゃん

「そんなんただの噂でしょ、鵜呑みにする方がダッサイよ」

そう吐き捨てて、無視しようとするが…

「でも！毎日深澤先生と放課後一緒にいるんだって！岩本先生にはクッキー渡したらしい！」

あ〜…
誑かしてるっていうよりは、タラシてるんだろうなぁ
仁那、無自覚だもん

「深澤先生は顧問でしょ？部活なんだからしゃあないじゃん」

「でも！岩本先生も…」

「岩本先生は確かに狙ってるかもね。仁那ああいうのタイプだし」

好みが変わってなければだけど

「ほら！岩本先生狙ってんじゃん」

「別に誰が誰を狙おうが関係なくない？大体、9人中2人だけじゃん。それで誑かしまくってるって？」

はっきりそう言うと黙り込む友達
皆んな噂好きだよね〜
所詮“噂”なのに
そんなん信じて、何が楽しいんだよ…
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「麗美！やっぱりそうだよ！」

「何が？」

「アレ見てよ！」

「……お〜」

目線の先には、仁那と、芽依
そして今日の挨拶当番の先生達
芽依、楽しそう…
私もだけど、表面だけで人を決めつけない仁那は、芽依にとって話しかけやすいんだろうな…
事情も知ってるし

「ねぇ！やっぱり青海さん、誑かしてる！」

「たまたまじゃないの？芽依もいるし」

「そういえば、芽依も目黒先生と…」

「うるっさい、行くよ」

仁那やら、芽依やら、噂になりすぎ
そして皆んな鵜呑みにしすぎ
ダサすぎる
ちゃんと本人に直接聞いてこいっつーの
仁那も、芽依も、そんなことするわけないじゃん…！
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「って感じ」

「なるほど…」

そういうこと……
今朝も、視線が痛かったし、学校の中でも知らない人からの視線を感じるのはそういうことだったんだ…

「仁那、大丈夫？」

「大丈夫だよ…ただ、…」

先生達にまで、迷惑かけちゃってるんだ…
もしかしたら、昨日の渡辺先生と、宮舘先生のことも…

「仁那は、誑かしてるつもりなんてないんだよね？」

「うん。でも、馴れ馴れしくしすぎたかなって…」

今日も、部室に行くのはやめよう
深澤先生は待っているかもしれないけど、会うことで、迷惑かけるぐらいなら…

「仁那ちゃんは何にも悪くないよ！」

「そーだよ仁那、堂々としてな」

堂々と…
でも、やっぱり先生達に迷惑かけるのはな…

「ちょっと、先生達との距離、気をつけよっかな」

「仁那ちゃん……」

「仁那、気にする必要ないよ」

「ありがとう、2人とも。私は大丈夫だよ」

納得してない様子の2人
2人は、私は悪くないって言うが、全く悪くないわけではない
だから…ね

「じゃあ、帰ろっか〜」

「…うん」

「じゃあ、私、他の子待たせてるから…白石さん、よろしく」

「2人とも過保護！！」

心配してくれる2人を横目に、帰る準備をし始める
家でも練習できる
元から今日は家でやろうかなって思ってたし！
深澤先生、待ってたら、ごめんね......