怪異-異世界-

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君の名前は?

_



_「な、なにが…」

雲「静かにッ」


声を顰めて雲雀が言った。

障子戸に大きな影が映る、
ソイツは大きな鎌を持っている。

まるで死神の姿のようだ。


_「…ひ、し、しにがみ?」

_「そうだけど、あの姿は真の姿じゃないよ」


死神は、死期の近い者のイメージの形を取るらしい。

典型的な黒いフードローブに大鎌を持った姿は、***のイメージする死神の姿なのだろう。



ーーー死なせはしない、必ず守る!



雲雀は、自身に塩を振りかけ、札を巻いたトンファーを持って立ち上がる。


雲「キミは部屋から出るな」

_「た、戦うんですか?」

雲「ヤツの狙いはキミだ、キミが出てくると邪魔なんだよ。だから絶対に出ないで」

_「わ、分かりました」


雲雀は障子戸を開けて外に出て、閉めると札を貼り付けて封印した。


雲「私服のままで正解だったね、これで全力で戦える」

シ「…グルル、」

雲「やけに獣みたいな声じゃないか、キミの真の姿とやら暴かせてもらうよ」


戦闘が開始された。

激しく動く影と激音、***は障子越しに見ていることしか出来ない。

なんて歯がゆいんだろう、
自分の体質のせいで雲雀が面倒を引き受けてくれている。


ーーどうして自身の力で解決出来ないの?


_「雲雀さん…」


***は、昔貰ったお守りを強く握りしめて祈った。どうか、無事でありますように。





.




雲「なかなかやるね。でも、キミの力はそんなものなの?」

シ「ガルルルル」


死神が咆哮したかと思えば、巨大な骸骨が2体、浮かんでいる。

召喚したのだろう。


雲「ワォ、咬み殺し甲斐がありそうだ」


けれど、いくら雲雀が強いといえど人間と異形が3体。徐々に追い詰められていく雲雀。


雲「…厄介だな」


骸骨が腕や頭を飛ばして攻撃してくる、それらを防ぐ間にも死神の大鎌の猛攻が絶え間なく与えられる。弾き躱すので精一杯になってくる。

このままでは雲雀の方が絶えてしまいそうだ。


雲「仕方ない、これは取っておきたかったけど」


雲雀はトンファーを放り投げ、新しいトンファーを取り出した。対魔用の銀製トンファーだ。


雲「鋼鉄製に比べると強度が劣る、短期決戦用だ」


グワっと3体が一斉に襲いかかる。

銀は効果を発揮している様で、弾いた骨たちは力無く崩れ去った。

ガツッ、確かにローブを捉えた。
だが、その中身はダミーだったようだ。

後方で大鎌が振り下ろされる。


雲「くっ」


切られた右腕に裂傷はない、
ただし、神経が断ち切られたようにダラリと垂れて動かせない。

左手だけで素早い大鎌を防ぎきれず、右足を切られて地面に膝をつく。


雲「くそッ」


目の前で大鎌が振り上げられる。


もう、ダメか…
そう覚悟した時、




   ーーーーカッ!!!!




離れの中から眩い光が放たれて、目が眩む。

その光に死神もたじろいだ。


封印用のお札がハラリと落ちて、障子戸が開かれる。

中から出てきた***は、目を閉じている。
眠っているか、気を失っているように。


ブワァ..と***の足元に巨大な蓮の花が咲き開いた。

***の背後に浮かび上がるのは、仏の幻影。


シ「グオオッ」


雲雀の失われた体の生気が戻る。


雲「これで、終わりだッ」


バキィッ..大鎌とトンファーが同時に粉砕した。



シ「ギオオオオオオオアアアア!!!!」



死神は小さな獣の姿に変わった。

まるで兎のような大きさだ。


雲「はぁ、終わったのか…?」


小さな獣を幻影が拾い上げる。


仏『これは、こちらで処分しておきます。

彼女は天界に通じる素質を秘めた者、これからも守ってあげてください』


仏の幻影が獣と共に薄れて消えていく。

ハッとして雲雀は***の元に駆け寄り、抱きとめた。


_「…ん、」


***が目を覚ます。


_「あれ、ここは…」

雲「***…、」

_「あ!やだ、外じゃないですかー!!べ、別に約束を破ったわけじゃなくて」

雲「分かってる。今回はキミに助けられた」

_「…え?」


雲雀は大事そうに***を抱えて、離れに戻った。


雲「眠れそう?」

_「なんか、さっきまで寝てたみたいでー。あまり眠くないです」

雲「じゃ、良いことする?」


雲雀の細められる目には首を横に振って、


_「え、遠慮しますー!」


そう言っては布団を頭から被る***


雲「ふふ、」


まさか、あんな大物が***に憑いていようとは雲雀も想像しなかった。

初めて神というものに、2種類もの神に会ってしまった。


雲「ねぇ、写真、撮ろう」

_「…大丈夫ですかね」

雲「もう心配いらないと思うよ」

_「分かりました、ちょっと待ってください」


***はバッグから射影機を取り出して、自撮りの構えを取る。

そして、シャッターを押すと共に雲雀が***の頬にキスをした。


_「ふぇっ」


***が射影機を床に落とす。

雲雀は、それを拾いながら、


雲「古いものなんでしょ、大事にしなきゃ」

_「ひ、ひば、りさん…今、いまー!!」


ガーッ、排出された写真には薄らと色が付いていた。

これは、記念すべき一枚になりそうだ。





ED...2024.01.14
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