第14話
お名前は?
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ーー翌日。
私は与えられた課題をクリアするため、昨日相澤先生に教えてもらった1階の開発工房前に来ていた。
『ここか…。何か凄い迫力ある扉だな…』
重厚感のある扉を前にして、少し緊張した面持ちで扉をノックする。
だが、扉が分厚いからか何なのか、中からは何の反応も返って来ない。
勝手に開けちゃっていいかな…?
私は扉に手を掛ける。
重たそうに見えた扉は意外にも簡単に開いた。空いた隙間からそっと顔を覗かせる。
『失礼しまーー』
【不法侵入者発見!!】
『!!?』
まず、最初に視界に飛び込んで来たのは、私に向かって勢いよく突っ込んで来るドローンの様なモノ。
しかも何故かそこから手の様な物が生え、赤いボクシンググローブが取り付けられていた。
『ヒィッ⁉︎』
ビュンッ!
咄嗟の反射神経で頭を伏せると、頭上を風を切るようにドローンが通り過ぎて行く。
ーー危なッ⁉︎ 何、今の⁉︎
怯えながら見上げると、ドローンはすぐに方向転換をして私を捉えたように向き直り、再び凄いスピードで突っ込んで来る。
『ちょっと待って⁉︎ また来るーー!!』
頭を抱えて再びしゃがみ込むと、何故かドローンはスイッチが切れたように突然停止し、私の目の前でボトッと落ちた。
『えっ…?一体、何が…』
「突然の奇襲、失礼しました!」
何が起こったのか分からず困惑していると、明るく元気な声が頭上から降り注ぎ、驚いて声のした方へ顔を向ける。
そこには頭に暗視ゴーグルの様な物を装着した派手な髪色の女子が、何故か笑顔で私を見下ろしていた。
けれどその風貌にどこか既視感を覚える。
あれ…?
私、どこかでこの人を見た様な…。
『…あっ!思い出した!体育祭で飯田くんと一緒に戦っーー…てはなかったか。…えっと、発目さん…だっけ?』
「覚えて頂けて光栄です!いかにも、私が発目 明です!宣伝効果ありましたね」
『うん…凄く』
サポートアイテムがと言うより、この強烈なキャラクター性の方が記憶に残っている。
雄英って本当に"個性"よりも本人が個性的な方が多いと言うか…。
発目さんは私の顔をじっと見ると、小首を傾げた。
「えーーっと、あなたは確か………ごめんなさい、記憶にありません!」
悪びれる様子もなくキッパリ言い切る彼女は、逆に清々しささえ感じた。
思わずはは…っと空気が抜けたような笑いがこぼれる。そりゃこんなに個性が強い人に言われたら仕方がない。
『私は予選敗退しちゃったから、覚えてなくて当然だよ。初めまして。1年C組普通科の苗字名前です』
「そうですか。では、私はベイビーの改修作業に取り掛かるので!」
『本当に興味ない事に
発目さんは私に構う事なく床に落ちたドローンを拾い上げると、裏返したりしながら状態を確かめている。
私はそれが何なのか気になって仕方がなかった。
『あの……それ、何だったの?』
「よくぞ聞いてくれました!!」
先程までの興味無さげな態度から一変、発目さんはギラギラと効果音が聞こえそうな程に目を輝かせ、私にドローンを見せつける。
「フフフ…これはですね、"不審者撃退用防犯ドローン" 第42子です!!」
『ふ、不審者…』
私、不審者に見えたのかな…。
「怪しい動きをする人物を即座に捉えて攻撃を仕掛ける有能な子です!今はまだ試作段階で私しか顔認証していませんので、それ以外の人には攻撃します」
『そう言う事か…良かった』
「しかし、初手を躱されてしまいましたね…。次は軽く電流を放って相手を痺れさせる方向に改良してみましょう」
…な、何か段々と恐ろしい物に変貌しそうな予感が!
作業に取り掛かる発目さんを見て、ようやくここへ来た目的を思い出した。
『あの、私パワーローダー先生に用事があって来たんだけど…先生はどこに?』
「パワーローダー先生なら、急用で今工房にはいません!すみませんが、また日を改めて下さい」
工具を手にしながら発目さんは改修作業に夢中になっている。私は肩を落とすと、盛大にため息を吐いてしまった。
『そっかぁ…。個性の負担を軽減するサポートアイテムで相談があったんだけどなぁ…しょうがないか…』
「個性の負担を…軽減⁉︎」
それまで作業をしていた発目さんの動きが突然止まると、グリンと勢い良く体を捻りながら私に向き直り、
興味深げに言葉を続ける。
「ちなみに、一体どういった個性なんですか⁉︎」
『えっと…物や生物の"修復" なんだけど、範囲や状態によって消費するエネルギーが違うから、いつも自分のキャパを超えちゃって…容量オーバーしちゃうと体に負担が凄く掛かっちゃうから、それをなくしたいんだけど…』
「フムフム…なるほど」
気迫に気圧されて、思わず全部喋ってしまったけど、発目さんにそんな凄いサポートアイテムが作れるのだろうか。さっき身をもって危険な目に合っていたので、若干の不安が残る。
そんな気持ちを他所に、発目さんは少し考える素振りをしてすぐにニンマリと口角を上げた。
何故かその笑顔に恐怖心を煽られる。
「フフフフ……お任せ下さい!まずコチラのヘルメットを装着してーー」
『ちょっ!発目さん⁉︎ まず説明してくれない⁉︎ これは一体何ッ⁉︎』
いきなり持ち出して来たのは配線コードが飛び出した見た目の
それを頭に被せようとした所で、恐ろしさから必死に抵抗するも、見た目に相反して力技で装着された。
「ご安心を!これは体に起こる身体ダメージを記憶するデータみたいな物です!今から負荷試験をかけて行きますので、そのまま耐えていて下さればーー」
『負荷試験って何ッ⁉︎ え、ちょっ、待っ……イヤアァァァーーー!!!』
私の渾身の断末魔は、辺り一面に虚しく響き渡った…。