第14話
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それは、夏休みが明けた始業式の日の出来事だった。
「ーーでは、兼ねてよりお前達に与えていた課題がクリア出来ているかどうか試させてもらう…準備は良いな?」
『はいっ!』
「行けます」
相澤先生の掛け声に大きく頷くと同時に、グッと身が引き締まるのを感じた。
ようやくこの時が来たんだ…!
今までの成果を、ここで証明してみせる!
私達が今から何を始めようとしているのか…。
その事の発端は、寮生活が始まった翌日まで
『えっ⁉︎ 相澤先生から呼び出し⁉︎』
「あぁ。今日の夕飯食い終わったら教員寮に来いって伝言預かった」
朝食を食べ終わり、自分の部屋へ向かおうとした所で
心操くんに呼び止められ、何かと思えばまさかの一言だった。
何も悪い事してないのに、何故か動悸が止まらない。
『な、何だろう…。私何かしたかな…』
「思い当たる節でもあんの?」
『いや、無いとは思うけど…!何かわざわざ呼び出されるってのが怖いなって…』
「まぁそこは安心して良いと思うぜ。俺も一緒に呼び出されたから」
『えっ!心操くんも一緒ってこと? 何だ〜……じゃあ、ますます何の用事だろ?』
「詳しくは分からないけど、恐らく俺らの今後について何かしら話しがあるのは間違いないだろ」
『あ、そう言う事か…!』
ヒーローになる術を教えるって言ってもらえたけど、
それはあくまで私にその見込みがある場合であって、
まだ決定事項じゃない。
いつでも切り捨てられる覚悟はしとけって言われてたもんね…。
油断しちゃダメだな…!
「取り敢えず伝えたから。じゃあな」
『あ、うん!ありがとう…』
心操くんは用件だけ伝えると、背を向けて早々に立ち去って行く。
私は遠くなる後ろ姿を暫しぼんやりと眺めていた。
…心操くん。
昨日言った言葉の意味って、どう言う意味で言ったんだろ…。
実は昨日言われた言葉がずっと気になっていて、朝起きた時もその事で頭がいっぱいだった。
なので心操くんから話しかけられた時はかなりビックリしたのだけれど、まさかの相澤先生からの呼び出しで、途中からは別の意味のドキドキに変わってしまった…。
ーーでも……やっぱり、気になる。
けど、それをどうやって確認すれば良いのかが分からない。気持ちを確かめたい時、ストレートに聞いてもいいモノなのだろうか…?
"心操くんは私の事どう思ってるの?"ってーー…
『違う違うッ!これじゃ自意識過剰のイタイ奴だ!』
「苗字さん…?どうしたの急に?」
『!!』
心の声が思わず口から出てしまい、周りにいたクラスの女子達がギョッとした顔で私に不審な視線を送る。
『ごめんなさい!何でもないです…っ!』
いたたまれなくなり、私は逃げるようにその場から立ち去った…。
ーーそして迎えた約束の時間。
何だかんだありつつも、言われた通り私達は相澤先生のいる教員寮へと足を運んでいた。
『…あっ。相澤先生!』
「来たか」
教員寮の目の前まで来ると、柱にもたれ掛かる様にして、両腕を組んだ相澤先生が私達を待ち構えていた。
格好もいつもの捕縛布は無く、長い髪を後ろに束ねてアップにされた、完全にオフモードのスタイル。
貴重な相澤先生の姿をマジマジと見つめていると、先生は私達へ体を向き直した。
「わざわざ呼び出して悪かったな。今ヒーロー科は仮免取得に向けて忙しい。だからお前らに当てる時間が中々取れなくてな」
「いえ…」
『大丈夫です!お忙しいのは重々承知の上なので!』
時間を作って私達を見てくれようとしてくれるだけで有難い事だ。
ヒーロー科に休みがないのは合宿で身をもって体験したしね…。
「今君らはヒーロー科と違ってまだ夏休み期間中だ。
なので是非ともこの時間を有効に使ってもらいたい。
そこで、残りの休暇中に君達に課題を与える事にした」
『課題…ですか?』
何を言われるのだろうとドキドキしながら身構えていると、相澤先生はふと心操くんに視線を向ける。
「どうだ心操。捕縛布の扱いには慣れたか?」
「…いえ、まだ不十分です。標的への捕縛がまだ上手く定まりません」
「ならそこを重点的に練習だ。教えた通りに練習を続けろ。何度も繰り返して体で覚えるしかない」
「はい…」
『…?』
ん…?
捕縛布の扱い…?
それって相澤先生の武器の事だよね?
…えっ。どう言う事⁉︎
私の知らない間に心操くんが相澤先生と師弟関係を結んでいる…!!
話しについていけず、完全に置いけてけぼりの私を他所に、2人は淡々と話しを進める。
「心操、お前への課題は標的を捕縛する事だ。いつまでも出来ないでは通らん。残りの時間それだけに時間を費やせ。いいな?」
「……分かりました」
厳しッ!
心操くんめちゃくちゃ渋い顔してるよ⁉︎
かなりキツイのでは…?
「それから、苗字」
『は、はいっ…!』
相澤先生は今度は私に視線を向けると、険しい表情を見せる。その反応に何だか嫌な予感が走った。
「お前の課題は、まず自分の個性の容量を把握出来る様になれ。また無茶して倒れる事がないように、自分で個性をしっかり扱える様にしろ」
『!』
個性を扱えるようにする…⁉︎
自分であとどれくらいなら大丈夫だとか、そう言うのを把握出来るようにしろって事だよね?
言われてる意味は分かるのだが、実際個性を使おうとする時はハッキリとした数値が見えないので、把握するのが難しい。
だからいつも個性を使い過ぎてから、容量をオーバーしていたのだと気付く。確かにそうなってからでは遅いのだけれど。
どうしよう…。
かなり難しいぞ、コレ…!