第13話
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『わざわざ見送ってくれてありがとう』
「いいんだ。俺がしたくてそうしてる」
そろそろ帰ろうとした私を、轟くんは玄関まで見送ると言って、A組の寮の玄関先まで付いて来てくれた。
『…それじゃあ、行くね?』
「あぁ。またいつでも来てくれ」
『うん…。ありがとう』
突然轟くんは小さなあくびをすると、ハッとした表情をして、慌てた様子で口元に手をやる。
「悪ィ…。油断した」
『あはは。大丈夫だよ。こっちこそ寝ようとしてたのにお邪魔しちゃってごめんね?それじゃあ、おやすみ!』
「あぁ。おやすみ」
私は背を向けると轟くんに手を振ってその場を離れた。
しばらく走って遠く離れたA組の寮を振り返り、ボソリと呟く。
『…私、ちゃんと笑えてたよね…?』
轟くんは気付いた様子はなかった。
じゃあきっと大丈夫…。
『ヒーローは、弱みを見せちゃダメなんだ…』
個性を使い過ぎると命に危険を及ぼすヒーローなんて
……そんなリスクの高い個性に、誰が救けを求めようとするの…?
だから、きっとこれは正しい判断をした。
そう思うのに、どうしようもなく心が痛かったーー…。
重い足取りのまま寮に着き、扉を開けて中に入ると、
ちょうど自販機で飲み物を購入していた心操くんと
「……よぉ」
『…たっ、ただいま…』
……何て間の悪いタイミング。
心操くんは今しがた購入した飲料水のフタを開けてゴクリと一口飲み込むと、またフタを閉めながらチラリと私に視線を向ける。
その視線が少し嫌で、私は心操くんを見ないようにエレベーターへと向かおうとすると、私の進路を妨害するように、心操くんが目の前に立ちはだかった。
「…早くこの場から立ち去りたいってカンジだな」
『!!』
「出て行く時はえらく嬉しそうな顔してたのに、帰りは随分と暗い雰囲気だな」
『そ、そんな事…』
「声が震えてる。分かりやすいんだよ…お前は本当に」
『…っ…』
だから嫌だったのに…!
心操くんには、私の繕った表面がいつも簡単に見透かされちゃうから…。
私の秘密にも、いつか気付かれそうで怖い…。
「…轟に何か言われたか?」
『えっ…?』
「お前、アイツに会いに行った後、たまに泣きそうな顔して帰って来るだろ。また酷い事言われたんじゃないのか?」
『違うよ、全然そんなんじゃなくて…』
「違う…?じゃあ何だよ?」
『………』
「……まぁ、いいや。アイツじゃないなら」
私が言葉に詰まっていると、心操くんはこれ以上は無駄だと判断したのか、軽くため息を吐きながら
『……心操くんは、何で轟くんと仲悪いの?』
さっきの言動から今までの2人の出来事を振り返り、
思わず本心から出た言葉を投げかける。
心操くんはその場に立ち止まると、肩越しに振り返り、不愉快そうに私を見た。
「…ムカつくんだよ。俺の知らない所でお前が傷付けられてんのが。こっちはお前のそういう顔、何度も見たくねぇんだよ」
『…!』
「………寝る。おやすみ」
『お、おやすみ…』
言いたい事を言い終えたのか、心操くんは話しを切り上げる様にそう言うと、サッサと自分の部屋へ戻って行った。
私は呆然とその場に立ち尽くす。
……意外な言葉過ぎて、頭の整理が追いつかない。
私が傷付けられるのが…嫌だった?
ど、どうして…?
ふと、合宿で轟くんに言われた言葉を思い出す。
『ーーでも、心操くんはただのクラスメイトだよ?』
「そう思ってるのが、お前だけだとしたら…?」
勘違いだと思っていた物が、段々と現実味を帯びて行く気がした。
どうしよう…。
私は今どうしようもなく、心操くんの気持ちを知りたいと思ってしまった…。
第13話 おわり