第13話
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『ふぅ……よしっ、出来た!』
ようやく自分の部屋が完成し、私はベッドに座るとそのままバタリと仰向けに倒れた。
『はぁ〜…。疲れた〜』
荷物はそこまで多くはないけど、配置するのに中々苦労した。
しかし、1人一部屋。エアコン、トイレ、冷蔵庫、クローゼット付き。光熱費はもちろん雄英負担。
おまけに朝と夕方はランチラッシュによる手作り料理が配膳されるという豪華さ…贅沢過ぎる!
改めて雄英の財源はどうなってるんだと疑いたくなるレベルだった。
『外もう真っ暗だ…』
窓の外に視線を向けると、いつの間にか日は沈み、すっかり夜空になっていた。
『……あっ!轟くんの所に行かないと!』
顔見せに行こうと思ってたのに、
すっかり暗くなっちゃった!
今から行こう!
私は急いでベッドから起き上がり準備すると、慌てて
1階の談話スペースまで降りる。
…あれ、人居ないな。
もうみんな自分の部屋に戻っちゃったのかな?
取り敢えず、早くA組の所へーー…
「どこ行くんだよ。こんな時間に」
『わぁっ⁉︎ し、心操くん…⁉︎』
誰も居ないと思っていたら、急に後ろから呼び止められ、驚いて思いっきり叫んでしまう。
相変わらず気配を感じない彼は、何だか少し不機嫌そうに眉をひそめていた。
『ビックリした…もう、心臓に悪いから…!』
「お前がビビリ症なだけだろ。…で?紙袋なんか持って何処行くわけ?」
『ちょ、ちょっとA組の所までみんなに顔見せに行こうと思って…!合宿で心配かけちゃったし…』
「……アイツに会いに行くんじゃないのか?」
『えっ…?』
「………何でもない」
誤魔化す様に心操くんは私に背を向けると、そのままスタスタ歩きながら言い放つ。
「あんま遅くなるなよ」
『う、うん…』
心操くん……?
さっきの言葉が心に引っかかりつつも、私はみんなのいるA組の寮へと足を運んだ。
『はぁ…、ここだ…』
広い敷地を走ってようやく見つけたそれは、"1-A"と表示された私達と同じ作りをした立派な寮。
やっぱり、ちょっと緊張するな〜…!
ヒーロー科にお邪魔すると言う事で、少しドキドキした胸を落ち着かせるため、軽く深呼吸をしてから扉に手を掛ける。
『お…お邪魔しま〜す…』
遠慮気味に扉を開けると、思ったより多くの人が談笑スペースにいて、一斉に私へと視線が注がれる。
注目されて思わず体が硬直すると、私の顔を見たみんなの表情がパァと一気に明るくなったのが分かった。
「苗字さんっ⁉︎ 無事に退院出来たんだね!」
「良かったぁ〜!みんな心配してたんよ!」
「思ったより元気そうじゃねぇか!安心したぜ!」
みんなが嬉しそうに私に近寄って来る。
私はホッと一安心すると、ニコリと微笑んだ。
『みんな心配かけてごめんね?体も元通りになったから、もう大丈夫だよ!…あ、お詫びにと言ったらなんだけど、これ良かったらみんなで食べて?』
「菓子折りか⁉︎ そんな繊細な気遣いも出来るなんて、
うちの女子とはエライ違いだな!」
「それな!こっちの女子はみんな思いやりとか優しさが欠けちまってるから普通に感動するぜ…!」
「悪かったな。ウチらに優しさが足りなくて」
耳郎さんのイヤホンジャックが上鳴くんや峰田くんの頭部を突き刺し、2人がギャーギャー喚く姿を見て、相変わらずの賑やかさに自然と顔が
……やっぱりこの雰囲気、私好きだな。
この場にいるだけで、自然と明るい気持ちになれる。
そんなパワーがA組には備わってる気がした。
ーーあれ…?
そう言えば、轟くんの姿が見当たらない…。
そんな風に思っていると、誰かが私に近付くのが見えて
ふと目線を上げる。
『飯田くん…?』
そこにいたのは、思い詰めた表情をした飯田くんが、
じっと私を見据えていた。
「…っ、…苗字くん、君を危険な目に合わせてしまって本当にすまなかった!みんなの安全を守るのが俺の務めなのに…俺は…っ、…僕は委員長として失格だ…!」
頭を下げる飯田くんに、私や周りにいたみんなが驚いた表情を見せる。
私は慌てて首を横に振った。
『そんな…!飯田くんのせいじゃないよ!私の方こそごめんなさい…。あの時はみんなを救ける事しか頭になくて、飯田くんはちゃんと止めてくれていたのに、私が無理矢理ーー』
「違うんだ。…あの時、俺が君を止められなかったのは、"誰かが傷付く姿を見たくない"と言った君の言葉に、兄の姿を重ねたからなんだ…!」
『お兄さん…?』
「……僕の兄はインゲニウム。誇り高き、僕の敬愛する兄さんさ」
『!!』
インゲニウム…。
前に心操くんがヒーロー科にインゲニウムの弟がいるって話してたけど、飯田くんの事だったんだ…。
「…あの言葉に俺は動かされた。もしみんなが兄さんの様になってしまったら……そう考えたら怖くて、君を行かせてしまった。だが結果、君が危険な目に合ってしまい…、兄さんと同じ様に傷付けてしまう所だった!!」
『…飯田くん…』
飯田くんも、大切な人を傷付けられた悲しみを知ってる人だったんだね…。
だからあの時私をーー…。