第13話
お名前は?
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ピリッ…っと空気が張り詰めたのを感じた。
私は戸惑いながら相澤先生を見つめる。
けど、私に向けられるその眼差しは、どこか遠くを見ているようだった…。
「……お前のような奴を見てるとな、昔の知人を思い出すんだよ」
『…昔の…知人…?』
「……」
何の事か分からず聞き返すと、相澤先生は何も言わずに、苦虫を噛み潰したような表情を見せる。
「…いいか、苗字。自己犠牲と命を捨てて誰かを助ける事は同義じゃない。死んじまったら終わりなんだよ」
相澤先生は真剣な表情で、力強く言葉を続ける。
「お前の個性で人は生き返るのかもしれない。だが、お前が死んだら誰もお前を救えない。お前の命は唯一無二なんだ」
『ーー!!』
「命は本来、儚くて尊い物だ…。それはお前が1番良く知ってるだろう…だから、
ーーお前は死ぬな。何がなんでも生き抜け」
『ーーっ…!』
相澤先生の言葉が、私の胸に深く突き刺さる。
それは、心のどこかで思っていたから。
私は、この個性で人を救けられるなら、
いつ死んだって構わないって…。
「俺からヒーローの術を学びたいなら、今後絶対に無茶な真似はしないと誓え。それが出来ないならヒーローは諦めろ」
『ーー…誓います。絶対に、無茶はしません』
今の言葉は嘘じゃなかった。
私の本心から出た言葉。
生きるんだ。
私も、エンデヴァーに生かされた大切な命だから…。
「…よし」
相澤先生は安心した様に頷くと、席を立ち上がる。
「アパートの退去については、雄英から大家さんに事情を説明して連絡を入れる」
『あ、退去…!そっか、その事忘れてました。退去費用いくらだろう…』
「心配するな。それも雄英が負担する」
『えぇっ⁉︎ 本当ですか⁉︎』
そんな事までやってくれるの⁉︎
どんだけ
相澤先生は部屋を出て行こうとすると、急に立ち止まる。何だろうと思って相澤先生の視線の先を辿ると、
そこには棚に飾ってあった写真立てがあった。
「…御両親か」
『はい…。大切な写真なので飾ってるんです』
相澤先生は写真立てに近づくと、胸の前に両手を合わせて合掌する。
少しビックリしてそのまま見つめていると、相澤先生は静かに呟いた。
「…必ず、娘さんを立派なヒーローに育て上げます」
『…先生…』
私はその姿にじん…と胸が熱くなるのが分かった。
それと同時に、この人が雄英の先生で本当に良かったと…心の底から思ったーー。
ーーー✴︎✴︎✴︎
8月中旬。
雄英敷地内にある、校舎から徒歩5分の築3日…"ハイツアライアンス"
今日からここで、新生活が始まる!
「1年C組全員揃ったなー。今日からお前達はここで共同生活を送ってもらう。右が女子棟で左が男子棟だ。1階は共同スペースだからな。各自事前に送ってもらった荷物が部屋に届いてるから、今日は自分の部屋を作るように。以上、解散!」
担任の先生の掛け声により、クラスのみんなが各々自分の部屋へと向かおうとする。
私の部屋は確か、3階だったよね?
どんな部屋かな?楽しみー!
「苗字」
ウキウキしながら自分の部屋に向かおうとすると、後ろから聞き慣れた声で呼びかけられる。
『心操くん!』
「何だ。思ってたより元気そうだな」
私の顔を見るや、何だか少し安心したように心操くんは薄く微笑んだ。
そっか!
今日から心操くんとも同じ寮内で暮らすのか。
何か不思議な感覚…。
心操くんには病院から退院してすぐ連絡し、心配かけて申し訳ない旨を伝えていた。
意識がない間も心配のメールや着信がたくさん来てたんだよね…。
こんな事思うの心操くんに悪いのかもしれないけど、
心配してくれた事が申し訳なくもあり、ちょっと嬉しくもあった。
もちろん、轟くんにもすぐに連絡を入れた。
轟くんには救けてもらった恩もあるし、落ち着いたら
後で直接お礼を言いに行こうと思っていた。
みんなにも顔見せに行きたいしね…!
『うん、もう大丈夫だよ!本当、心配かけてごめんね?病院…来てくれてたんだよね?』
「……別に。どんな間抜けな顔して寝てんのかと思って見に行っただけだから」
『悪趣味ッ⁉︎ 私の感謝の気持ちを返して!』
「冗談に決まってんだろ」
そう言って私を見つめると、少しはにかんだ様な笑みを浮かべた。
「………おかえり」
『ーーっ…!』
不覚にも、その表情にドキリと胸が高鳴る。
それに、"おかえり"なんて言葉、久しく言われていなかったから、純粋に嬉しかった。
『…た…、ただいま…』
「…何、その顔。照れてんの?」
『えっ⁉︎ ち、違うよ!嬉しくてだから!』
「フーン…。誰にでもするなよ、そーいう顔」
『えっ…?』
「男が勘違いする顔だから…今の」
『ーー!!』
心操くんは驚いて固まる私の横を何食わぬ顔で通り過ぎ、自分の部屋へと向かって行った。
ーー私…今、どんな顔してたの…?