第2話
お名前は?
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朝起きた時も、学校に登校する時も、考えるのは昨日の事ばかり。
「俺は名前が好きだ…子どもの頃からずっと。それは今も変わらねぇ」
今思い出しても顔が熱くなる。
雄英の推薦入学者でもある凄い人が、どうして私なんかを…?
しかも、子どもの頃から幼馴染みだったらしいけど……どうして私はこんなにも覚えてないんだろう?
昔の事だから…?
それにしては、あまりにもーー…
「オイ」
『⁉︎……あ、心操くん』
急に声をかけられ驚いて振り向くと、不機嫌そうな顔をした心操くんが、何か言いたげに私を見ていた。
『ど、どうしたの?』
「どうしたのって……挨拶してんだけど?」
『えっ!ごめん、気付かなかった!』
「だろうな。何か思い詰めた顔してたけど……何かあった?」
な……何て言えば良いんだろう。
幼馴染みに告白されて?
いやいや!いきなりそんな事言えない!
『大丈夫!な、何でもないからっ!』
「何でもない……ねぇ?」
すっごい疑いの眼差しッ⁉︎
やめてー!そんな目で見ないでー!
「…まぁ、いいけど。アンタ考え込むと周り見えなくなるみたいだから気をつけなよ。結構
『ーーの、のろ…ッ⁉︎』
今サラリと毒吐いたよね⁉︎
心操くんってもしかして毒舌キャラ?
『う…うん、気を付けるよ…』
「それと…」
ーーまだ何か⁉︎
「……昨日は、ありがと」
『………へっ?』
構えていたら、予想だにしなかった言葉に拍子抜けして、間抜けな声が出てしまった。
『ありがとうって……私、何かお礼される様な事したっけ?』
「昨日言ってくれただろ。俺はヒーロー向きの個性だって」
『……あぁ!その事?そんなっ、お礼言われる程の事じゃーー』
「事だったんだよ」
ピシャリと私の言葉を打ち消す様に、心操くんは真剣な眼差しで私を見つめていた。
その姿に少し驚いて、私もマジマジと心操くんを見つめ返す。
「……アンタにとっては何でもない一言だったかもしれないけど、俺にとってはかなり救われた言葉だったんだ。今までそんな事言う奴は1人もいなかったから。……アンタが、初めてだったんだ」
『心操くん……』
静かに話し続ける心操くんの言葉には、きっと今までたくさん辛い経験をしてきた想いが詰まってるんだと思った。
…あの時、私も心操くんの悲しそうな顔を見て、黙って見ていることが出来なかった。
誰かが悲しむ顔は、見たくないって思ったから。
あの時の言葉……ちゃんと届いて良かった。
『心操くんって、意外と正義感に溢れた人なんだね』
「意外は余計」
『すみません』
間髪なくツッコまれた。
確かに余計な一言だったかな…。
「別に…、恩を感じた相手には筋を通さないと気が済まないタチなだけだ」
『そっか…』
それを人は正義感とか義理堅いって言うのだけど……それは言わないでおこう。
『ふふっ…。私の言葉が力になれたんなら良かった!改めて、これからもよろしくね。心操くん』
「あぁ…。よろしく、苗字」
その時、初めて名前を呼ばれた事と、少し照れ臭そうに微笑む心操くんを見れた事が、閉ざされていた扉が開けた様な気がして嬉しかった。