第12話
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『……私、昔エンデヴァーに救けられた事があるんです。その時私の親も居たんですが、2人共亡くなってしまって……そこから祖母に引き取られて2人で暮らしていました』
突然昔の話をしてしまったけど、相澤先生は何も言わずに、黙って私の話しに耳を傾けてくれていた。
『暫く祖母の家で過ごしていた時、玄関にツバメの雛が巣から落ちて死んじゃってたのを見つけたんです。可哀想で、お墓を作ってあけようと思って雛に触った時……思ったんです。"この子が生きてれば、親にいっぱい愛してもらえたんだろうな"…って』
……雛の死を自分の親と重ねていた。
命はこんなにも簡単に、奪われるんだと…。
もっと、生きていて欲しかったと…!
『ーーそんな風に思っていると、死んでいたはずの雛が突然生き返ったんです』
「生き返った…⁉︎」
驚いて目を見開く相澤先生に私は静かに頷くと、真っ直ぐに先生を見つめた。
『……それで私、気付いたんです。私の個性は、"死んだ人を蘇らせる"事が出来るんだって…』
「…!!」
こんな話し、
誰だって、死んだ人間は二度と蘇る事は出来ないと……そう思うはずだ。
『…だからっ、…私は親を生き返らせようとしました…。骨壷に入った2人に触れて、必死に生き返れって…。でも、無理だった。物質が変わってしまった物は、元には戻せないんです…』
私は唇を噛み締め、拳をキツく握り締める。
『分かりますか…?私は、両親が亡くなったあの日に力を使っていれば、生き返らせる事が出来たんです…っ!もっと早く、この力を知っていれば…私はっ…!!』
「…苗字…」
『…だから、その時に誓ったんです。これからは後悔しないよう、この力を人を救けるために使おう…!取りこぼさないように、今度は絶対、救える命を私が守るんだって…!』
…あの時、私だけが生かされた。
ずっとその意味を考えていた。
何で私は生きているんだろうと…。
でも、あなたに救われたあの一瞬は、生きていて良かったと心の底から思った。
その気持ちに、嘘はつきたくなかった…!
『私は…っ!誰かにとって大切な人を救けられるヒーローになりたいんですッ!!』
エンデヴァー…。
あの時、あなたに救われた命はそのためにあるんです。
私もあなたのように、誰かにとっての救いのヒーローになりたい。
私はベッドの上に正座すると、そのまま相澤先生に深く頭を下げた。
『相澤先生、お願いします!私に…っ、ヒーローになる術を教えて下さい…っ!お願いします…!お願いします、先生…っ!!』
しばらく沈黙が続き、病室内が静寂に包まれる。
すると、ハァ…。と溜め息を溢す相澤先生の呆れた様な声が頭上から降ってきた。
「顔上げろ」
『……』
私は言われた通りゆっくり顔を上げる。
目線の先には真剣な顔をした相澤先生が、私と同じ目線になり、真っ直ぐ私を見据えていた。
「さっき医者が言ってたよな?お前の力は命に危険を及ぼすって」
『…はい』
「俺は自分の教え子を死なせる様な真似したくはない。ましてや自分の危険を
『……っ…』
ーーだから、お前に教える気はない。
そう返ってくるのだと、覚悟していた。
私はギュッとベッドのシーツをキツく握り締め、相澤先生の次の言葉を待つ。
すると突然、私の頭をポンっと軽く叩く大きな手の感触に驚いて顔を上げる。
そこにあったのは口端を上げて薄く微笑む、優しい目をした相澤先生だった。
「だから俺が、お前を死なせないようにヒーローになる術を一から叩き込んでやる」
『ーーっ…!』
「俺の訓練はキツイぞ。覚悟しとけ」
『……はいっ!』
とびきりの笑顔でそう返事すると、相澤先生は「笑ってられるのも今の内だぞ」と呆れた顔で言われた。
私の原点は、この個性でみんなを救うこと。
悲しむ人が少しでも減るように…。
大切な人がずっと側にいれるように…。
誰かを救ける事で、あの時救えなかった自分の罪が少しでも報われる気がしてーー。
そのためだったら、これからどんな困難が待ち受けようと、乗り越えて行けるような気がした。
第12話 おわり