第12話
お名前は?
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扉を開けた先に待っていたのは、目を疑う光景だった。
「…やっぱアンタだったか。声が聞こえた瞬間そうだと思ったよ」
そこにいたのは、ベッドの側にある椅子に座ってコチラを見つめる心操の姿だった。
しかも名前はまだ意識が戻っていないのか、ベッドの上で眠った様に瞳を閉じている。
色んな期待が同時に裏切られたようだった。
「何で…お前がここに…⁉︎」
「何でって……そりゃ、ニュース見てコイツに連絡しても繋がらないから、心配して見に来たに決まってんでしょ」
当然だと言いた気に心操は俺に向かって言い放つ。
コイツがただの名前のクラスメイトだったら、俺も友達思いの奴なんだなと特に気にしなかっただろう。
けど、コイツは違う…。
コイツは…名前の事をーー。
「敵連合…」
「!」
「また襲って来たんだろ…?やっぱ、苗字の事狙って来たのか?」
「やっぱ…?どういう意味だ?」
「え?……そうか。アンタには言ってなかったんだな」
「…だからッ、どういう意味だ⁉︎」
勿体ぶった言い方に少し苛立ち、語気が荒くなる。
それ以前からむしゃくしゃはしていたが。
心操は俺の方を見ると、ムッとした表情をする。
「落ち着けよ。今から順を追って話す。……コイツが合宿に行く前、
「何だと…⁉︎」
まさかの事実に俺はかなり動揺していた。
雄英襲撃の時は直接名前から死柄木に会っていた事は聞いていた。
しかし、2度も会っている事は知らない。
緑谷が接触したあの日、名前も死柄木に会っていたのか⁉︎
しかも連合に狙われていた事など、名前から1度も聞いていなかった。
その時、脳裏に合宿での出来事がよみがえる。
継ぎ接ぎの男達が名前を
じゃあ、あのまま俺達があそこに現れなけりゃ、名前は今頃爆豪のようにーー…。
想像してゾッとした。
何でそんな大事な事を今まで黙っていたのか、心操が知っていて何で俺が知らないのか…怒りを通り越して自分でもよく分からない感情になっていた。
「何が狙いなのかは知らねぇけど、苗字から目を離すのは危険だと思う。だから相澤先生にも伝えるよう言ったんだけど……合宿先に現れるのは先生も予想外だったんだろうな…」
「……」
「コイツ…親御さんも亡くなってるし、ずっと1人なんだろ?守ってやれる奴が側にいないとーー」
「ーー待て」
「?」
聞き逃せない言葉に、思わず制止した。
心操は怪訝な顔で俺を見つめる。俺はもう一度心操にゆっくり確認した。
「今…名前の親が亡くなってるって言ったか…?」
「言ったけど……何、まさか知らなかったの?」
「……知らねぇ」
聞いていなかったし、名前の幼い時は親が居た。
確か最初にハンカチを貸してくれた時に、母親の話しをしていたはずだ。
じゃあ一体…いつ…?
「ハァ…。あんまこーいう事言いたくないんだけどさ」
心操は呆れた様にポリポリと頭を掻くと、その手を下ろし、冷たい眼差しを俺に向ける。
「アンタ、幼馴染みの割にコイツの事何も知らないんだな。よくそれで俺に"アイツは俺が守ってやらないとダメなんだ"とか、偉そうな事言えるね?」
「ーーっ…!」
言われた言葉があまりにも的を得ていて、俺は言い返す事が出来ない。
その時、後ろの方で扉をノックする音が聞こえた。
「ごめんねー。苗字さん今から診察の時間なんだけど…いい?」
扉から入って来たのは白衣を着た男性だった。
姿から見るに医者なのだろう。
「すみません。もう帰ります」
心操は椅子から立ち上がり、
俺の横を通り過ぎる瞬間ーー。
「やっぱアンタに苗字は渡せない」
俺にだけ聞こえる声でそう言い残し、さっさと病室から出て行った。
名前の病室を出た後すぐに切島と合流したが、俺は半ば放心状態だった。
切島が心配そうに俺の様子を聞いてきたが、正直何を言われていたのかあまり覚えていない。
ただその時の俺は、心操に言われた言葉に深く心を
俺は、ずっと子どもの頃から名前が好きだった。
ずっと大切に思い続けていたのに…俺は"今の名前"の事を何一つ分かっちゃいない…。
心操の言う通りだ。
俺は何も知らない。
お前の事、何も知らなかった…!