第11話
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『…ハァッ、…みんな…どこ…⁉︎』
私は自分の胸に手を当て、常に"修復"を使い続けながらさっきより濃いガスの中を走る。
しばらく走り続けていると、ガスの中で倒れ込む誰かを発見した。
『大丈夫⁉︎ 動ける?』
「ん…」
急いで近寄ると、倒れてる人の側に黒髪の女の子が居た。見た事ない顔だし、恐らくB組の子だ。
その子の膝元には2人のB組の男女が仰向けになって倒れ込んでいた。
けれどみんな何故か顔にガスマスクを付けていて、見た感じ気を失っているだけで、そこまで重症の状態ではなさそうだった。
私は倒れている2人に力を使う。
『…よし。今は眠ってるけど、目が覚めたらきっと元に戻ってるハズだから、心配しないで?』
「んっ」
女の子は安心したように頷く。
『他の人達はどこに居るか知らない?』
女の子はガスが濃く漂ってる方向へと指差す。
『分かった、ありがとう!』
言われた方向へと走り続けていると、急にガスが晴れる。
不思議に思っていると、ガスが晴れた奥の方から誰かがこちらへ歩いて来るのが見え、すぐさま駆け寄った。
『大丈夫⁉︎』
「ん…?あ!アンタは確かサポートで来てたーー」
『苗字です!今みんなを救けに回ってて…』
「そっか…私は拳藤。有難いんだけど、1人で行動するのは危険だよ。……コイツみたいな奴がいるかもしれないからさ」
『?』
そう言って拳藤さんは、大きな手で掴んでいた何かに視線を向ける。
見ると、私達より少し幼い顔をした少年が気を失ったようにグッタリうなだれていた。
その頬は誰かに思いきり殴られたのか、たんこぶみたいに大きく腫れ上がっている。
『この人は…?』
「コイツがガスを撒き散らしていた元凶さ。鉄哲が殴って仕留めてくれたんだけど」
『鉄哲…?あ、体育祭で切島くんと戦ってた人!』
「その本人も今は気失ってんだけどな…」
拳藤さんは空いたもう片方の手に掴んでいた人物へ顔を向ける。
そこには敵と同じようにグッタリした様子で気を失っている鉄哲くんが居た。
『大丈夫。私の個性で治すね?』
「助かる!ありがとな」
私は鉄哲くんに触れて力を使う。
やっぱりみんな敵達に襲われて苦しんでたんだ。
……って事は、他にもまだ苦しんでいる人が居るかもしれないって事だよね…?
その人達も早く
私は立ち上がり、拳藤さんに顔を向ける。
『目が覚めたら動けるようになってると思う!私はもう少しこの辺りを探索してから戻るよ!』
「あっ、おい!1人は危ねぇってば!」
拳藤さんの制止の声が聞こえたけど、私は振り切って更に森の奥へと進んで行く。
『……っ…、嫌な臭い……』
ガスは晴れたが、以前このきな臭いにおいは消えていなかった。
なんなら、段々と強くなっていってる気がする。
『ーーゔっ…!』
瞬間、心臓がドクンと跳ね上がった。
胸の痛みに思わずしゃがみ込むと、胸元の服を手でギュッと握り締める。
『……さすがに…キツイか……』
今日は朝早くからぶっ通しで個性を使っている。
おまけにガスの中自分に使い続けていた事と、更にみんなに力を使った事で追い討ちをかけてしまったらしい。
完全に動けなくなる前に、1度施設に戻ろう。
あぁ…。
拳藤さんの言う事、素直に聞いとけば良かった。
ごめんなさい、拳藤さん…。
しばらくその場から動けずにいると、森の奥からコチラに近付いて来る足音が聞こえ、顔を上げる。
「集合場所、この辺りだったよな?違う!もっとあっちだ!」
「あぁ。確かここで合ってーー…トゥワイス、止まれ」
向こうも私の存在に気付いたのか、土を踏む足音がピタリと止まった。
誰…?
暗くて、よく見えない…。
暗い夜の森。
ただでさえ視界が悪いのに、その人達は全身黒っぽい服に身を包んでいるせいで、姿がハッキリ見えない。
すると、1人の影がゆっくり私へと近付いて来る。
暗くて良く見えないハズなのに、何故か近付いて来る気配から、背筋が凍りつく程の悪寒を感じた。
「…こんな所に雄英生が1人でお出迎えか?」
暗闇からゆっくり姿を現したその人物は、月明かりに照らされ、その全貌が不気味に浮かび上がる。
「わざわざ自分から殺されに来るなんてな。健気なこった」
『ーーぁ…』
可笑しそうに言いながら不敵に笑うその男の顔は継ぎ接ぎだらけで、目元や口元の皮膚が失われていた。
あまりの
逃げたいのに、体がいうことを聞かない。
「恐怖で声も出ねーってか。…まぁいい。すぐに声も必要なくなる」
男は継ぎ接ぎの手を私の目の前に
ーー殺される…!!
そう覚悟した時ーー。
「おい荼毘!そいつ、確か死柄木のリストに載ってた奴じゃないか⁉︎ 見つけたら生かして連れて来いって。とっとと
『ーーっ…⁉︎』
突然出てきた死柄木の名前に驚くと同時に、ショッピングモールでの出来事が頭の中でフラッシュバックする。
「みぃーーつけた…」
やっぱり、死柄木は私を狙っていたんだ!
でも、何故…⁉︎
「あぁいけね。もうちょっとで殺しちまうとこだった」
荼毘と呼ばれた男は翳していた手を下ろすと、冷めた目で私を見下した。
「ボスからの命令だ。大人しく俺達に付いて来てもらうぜ」
ーー逃げろ…。
「無駄な抵抗すんなよ。面倒クセェから」
ーー逃げろ…!
「しかし何でコイツがここにいるんだ?聞いてた話しと違ェ…」
ーー逃げろッ!!
『ーーッ!』
勇気を振り絞って、残った体力で駆け出す。
瞬間体が悲鳴を上げるが、そんなの構っていられない。
逃げなきゃ捕まる。そんなの死んでもごめんだ。
「逃がさねェーよ」
後ろから男の声が聞こえた瞬間、私の進行方向を遮る様に突如目の前に青い炎が現れた。
轟々と燃え盛る炎が私を襲う。
『…ぁ…、い、や……』
火を見た途端、足が
その間にも、燃え盛る炎は痛いほどの熱を帯びて体を覆い、堪らず自分の体を抱きしめた。
熱い…!
嫌だ…火は……嫌ッ!!
「火が怖いか、雄英生。……震えてるぜ?」
まるでこの状況を楽しんでいるかのように、男は背後から近付いて来る。けれど今の私にはそんな事どうでも良かった。
この苦しい感情をどうにかしたくて、震える手で必死に自分を抱きしめる。
『いや……熱いのはやだっ……!』
「燃やされたくなけりゃ、大人しく指示に従え」
『…熱いよ…、苦しいよ……助け…て…』
「…?」
『……エンデヴァー……』
「!」
急速に意識が薄れていく。
私は抗うことなくそのまま身を
意識を失ったーー…。
「なんだ、急に倒れたぞ⁉︎ラッキーだな荼毘!このまま連れて行こう!置いてけ、お荷物だ!」
「……」
「どうした荼毘?何だか嬉しそうだな?悲しいことでもあったのか?」
「いや…。面白れェ玩具を見つけたと思ってな」