第11話
お名前は?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ーー合宿3日目。
今日も朝早くから強化訓練は始まっていた。
流石に3日目となるとみんな顔に疲れが出て来ている。特に気になったのが…
『切島くんたち、大丈夫…?』
他に上鳴くんや芦戸さんも…。
明らかに他のみんなより顔色が悪い。
目元の隈もヤバイし。
「おぉ、ちっとな…。昨日遅くまで補習やっててよ」
「俺たち補習組なんだよ…。みんなが寝静まってる時、俺らは夜中の2時まで補習してたってわけ…」
『補習組⁉︎ そんなのあるんだ…!それはキツイね…』
「ふぁ〜……ダメだー、頭回んない…」
「補習組、動き止まってるぞ」
「オッス…!!」
突然背後から相澤先生の捕縛布が飛んで来たかと思うと、俯いていた切島くんの頭に絡まり、無理やり起こされていた。
うわぁ〜…容赦ないな、相澤先生…。
切島くん達に向けて相澤先生のお説教がコンコンと浴びせられている様子を尻目に、私はみんなが訓練に励んでいる姿を眺めていると、ふと…こちらを見ていた轟くんと目が合った。
『!』
「…!」
轟くんは一瞬ビックリした様子で目を見開くと、露骨に顔を逸らされる。
それが地味にショックだった。
昨日ーー…。
心操くんとのやり取りを見て、ショックを受けたような轟くんの顔が忘れられない。
それから少し避けられているみたいで、いつも轟くんから側に来てくれるのに、今日はまだ言葉すら交わしていない。
また、気まずくなっちゃったな…。
心操くんは普通にクラスメイトで、お友達なんだけどなぁ…。
でも、昨日轟くんが言ってた意味も気になる。
心操くんのこと、友達だと思ってるのは私だけだとしたら…って。
それって、心操くんも私のことをーー…?
『……まさか、ね…?』
「ねこねこねこ…。それよりみんな!」
『?』
不意に聞こえてきたピクシーボブの声にみんなが顔を上げる。ピクシーボブは何だか楽しそうな笑顔を私達に向けていた。
「今日の晩はねぇ…クラス対抗肝試しを決行するよ!
しっかり訓練した後は、しっかり楽しいことがある!ザ!アメとムチ!」
『……わ、忘れてた……最悪だ…!』
渡されたしおりに、そのような事を書かれていた事を思い出した。
嫌すぎて見ないフリしてすっかり頭から消えていた。
そう…私はお化けが大の苦手なのだ。
これって私も強制参加なのかな…?
後で相澤先生に確認しよう!
心の中でそう強く誓いながら、いつも通り刻々と時間は過ぎて行ったーー。
そんな感じで訪れた夕食時間。
日が傾きオレンジ色に染まる空の下で、私達は肉じゃがを作るため各々持ち場で準備をしていた。
さすがに2回目ともなると要領が分かり、みんな慣れた様子でテキパキ動いている。
そんな中、特に異彩を放っていたのはーー。
「爆豪くん包丁使うのウマ!意外やわ…!!」
「意外って何だコラ!包丁に上手い下手なんざねえだろ!!」
「出た!久々に才能マン」
みんなの驚く声に釣られ覗き見ると、爆豪さんが見事な包丁さばきで野菜を切っている姿が目に飛び込んできた。
『爆豪さん凄い!料理作れるんですか?』
あまりの
「あぁ⁉︎バカにしとんのか!それくらい出来るわッ!」
『えぇ⁉︎』
睨み付けながら言われたけど、それよりも料理が出来るという返答に仰天した。
意外な一面発見!
私より包丁さばき上手いし、もしかしたらかなり料理上手なのかもしれない…!
……私、爆豪さんの事ちょっと誤解してたかも?
話せば意外と良い人なのかもしれない。
これを期に少し私から距離を詰めてみよう…!
まずは、他人行儀なこの"さん"付けをやめなくちゃ!
『ば、爆豪…くん…!』
「…あ?」
『…って、呼んでも良いですか?』
「……好きにしろ。俺の許可取らねーと呼べんのかてめぇ」
『じ、じゃあ、敬語もやめて良い…?』
「だァから好きにしろっつってんだろクソが!!」
相変わらず口は悪いけど、拒否はされてない。
つまり別にいいよって事だよね?
良かった…。
『うん!じゃあそうするね。ありがとう爆豪くん』
「……チッ」
爆豪くんは面倒臭そうに舌打ちをすると、鋭い眼光を私に向ける。
「言っとくが…俺はまだてめェを認めた訳じゃねぇからな。てめェが俺を好きに呼ぶように、俺も俺の呼びたいように呼ぶ。それで文句ねぇだろ、"修復女"」
『…うん、文句ないよ。それじゃあーー』
私は怪訝な顔をする爆豪くんに向けて、ニカッと笑う。
『認めてくれたその時は、名前で呼んでくれると嬉しいな!』
「!」
爆豪くんは一瞬鳩が豆鉄砲を食ったような顔をすると、すぐに元の機嫌の悪そうな顔に戻った。
「…呼びたいように呼ぶっつってんだろ、アホが…」
『あはは…。そうだった』
ヒーロー科試験で出会ったあの頃は、まさか爆豪くんとこんな風に笑って話せる日が来るなんて思いもしていなかった…。
ただ、挫折と無力感を味わったあの頃の自分。
もしもあの時の自分に会えるなら、ギュッと抱きしめて、"大丈夫。あなたの未来は明るいよ"って励ましてあげたい。
…そんな風に思った。