第10話
お名前は?
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ーー翌日、合宿2日目。
ヒーロー科のみんなと一緒に朝早く起きた私は、相澤先生から死ぬ程キツイと教えられた壮絶な強化訓練を
『…じ、地獄絵図だ…』
「これでもまだ生温いがな。まぁ、短期で個性の限界突破を目指すにはこれくらいが合理的だろう。死なれちゃ困る」
ーー死ぬ場合あるのこの合宿ッ!⁉︎
恐ろしい発言を耳にしてしまい怯えていると、限界突破し過ぎた人達がフラフラと私の元へやって来る。
「うっぷ…、もうアカン…吐き気が限界突破しそう……ゔっ」
『麗日さん限界突破待って⁉︎今治すから…!』
「ワリィー苗字、こっちもいいか⁉︎ 勢い余ってここの木なぎ倒しちまって…」
『大丈夫、元に戻すね!』
「オイラも頭皮が限界だ…」
『うわっ⁉︎ 血が出てるよ!大丈夫?』
「うェ〜い…(俺も)」
『誰ッ⁉︎』
その様子を遠くから見ていた相澤は、フッと僅かに口角を上げる。
「……随分頼りにされてるな」
PM:4:00
「さァ昨日言ったね"世話焼くのは今日だけ"って!!」
「己の食う飯くらい己で作れ!!カレー!!」
強化訓練の後はまさかの自炊という事で「イエッサ…」とみんな死にかけの声で返事する。
個性で回復してるとは言え、多分気持ちの問題なのだろう…。作るのも労力いるからね。
そんなこんなで、みんなと一緒にカレー作りをする事になった。
『ふぅ…。だいぶ煮えてきたかな…』
「名前、何か手伝う」
『轟くん…!ありがとう。じゃあお鍋にルー入れて貰っていい?」
「分かった」
『火、
私はお鍋を火から
「火点けたままじゃダメなのか?」
『うーん…火止めた方がルーが溶けやすくて、ダマになる心配がないかな』
「そうなのか。詳しいんだな」
『いやいや、そんな…』
そんな大した事言ってないのに、感心したように言う轟くんに少し照れ臭くなる。
「昨日の夕食も名前が手伝ったって聞いた。ありがとな、俺達のために」
『ううん、1人分だと面倒臭いんだけど、誰かのために料理するのは好きだから全然苦じゃなかったよ!』
「そうか。良い奥さんになりそうだな」
『へっ…⁉︎』
思わぬ一言にギョッとして轟くんを見ると、当の本人はキョトンとした顔で私を見つめ返す。
「どうした?」
『う…ううん、何でもっ…!』
「?」
轟くんって本当たまに天然でこういう事言うから心臓に悪い時がある…。
こんなの、意識するなって言う方が無理あるよ!
あれ…?
でも別に意識するのって悪い事じゃないよね?
何で私こんなに必死に拒もうとしてるんだっけ…?
「だから轟の事をそうやって意識する事で、自分も好きなんじゃないかって思い込んじまう、ただの錯覚なんだよ…」
そうだ…。
意識するのはただの思い込みで…、こうやってドキドキするのも全部錯覚だからーー…
ーー錯覚…?
ーー本当に…?
「名前、大丈夫か?」
『……えっ…』
「顔赤いぞ?熱あるんじゃないか?」
『ーー⁉︎』
気が付いたらさっきよりも近くに轟くんの心配そうな顔があって、伸ばされた手が私のおでこにそっと触れた瞬間、火が点いたかと思うくらい一気に顔に熱が集まった。
「やっぱ熱いぞ。顔も赤くなってる」
『だ、だだだ大丈夫ですーー!!』
「あっ…」
恥ずかしさでどうにかなりそうになり、私は逃げるようにその場から離れてしまった。
離れてからまだ料理が途中だった事を思い出し、でもまた元に戻るのは気まずかったので、私は視界に入った緑谷くんの元へ駆け寄った。
『緑谷くんっ!』
「ど、どうしたの苗字さん⁉︎」
『ごめん…!轟くんのカレー作り一緒に見てあげて欲しい…』
「えっ?い、いいけど…。何かあった?」
『……いや、メンタル的なアレでして…、詳しくはちょっと…』
「(一体何がッ⁉︎)……わ、分かった。手伝って来るよ」
『ありがとう!このお礼は必ず…!』
緑谷くんの優しさに救われ、何とかその場は取り繕う事が出来た。
本当に緑谷くんには迷惑をかけてしまったので、必ずお礼しなくては。
そしてみんなで作ったカレーは文句なしに美味しく出来上がり、みんなも満足気だった。
やっぱり1人で食べるより、みんなと一緒に食べる方が格段に美味しい。
まだ始まったばかりだけど、いつかこの楽しい時間が終わる時が来るのはちょっと寂しいなと思った…。