第10話
お名前は?
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PM 5:20
辺りはすっかり夕暮れ時になっていた。
私達はピクシーボブからそろそろ着く頃だと教えられ、しばらく外で待機していると、森の奥からユラリと揺れる人影が視界に入った。
「やーーっと来たにゃん」
『あっ…轟くん!』
最初に姿を現したのは轟くんだった。
その姿は遠くから見ても分かるくらい
制服も土で汚れてボロボロになっていた。
こんな
相当キツかったんだろうなぁ…。
轟くんを皮切りに、同じくボロボロに疲弊したみんながヨロヨロとおぼつかない足取りで目的地へと辿り着く。
「何が"3時間"ですか…」
「腹減った…死ぬ」
「悪いね。私達ならって意味、アレ」
「実力差自慢のためか…」
「ねこねこねこ…でも、正直もっとかかると思ってた。私の土魔獣が思ったより簡単に攻略されちゃった。いいよ君ら……特に」
ピクシーボブは舌舐めずりをしながら轟くんや緑谷くん達を指差す。
「そこ4人。
「うわっ!」
「やめろ!」
『……賑やかだなぁ…』
もっと殺伐とした感じになるのかなと思っていたけど、意外と穏やかな感じだ。
この感じのまま合宿が終わればいいのになと私は心の中で呟く。
その後すぐ緑谷くんが洸汰くんから急所にストレートパンチを喰らわされた所を見てしまい、逆にコッチは殺伐としているな…と思っていると、相澤先生がみんなに声を掛ける。
「怪我した奴は苗字に治してもらえ。部屋に荷物運んだら食堂にて夕食。その後入浴で就寝だ。本格的なスタートは明日からだ。さァ早くしろ」
えぇっ…!
これまだ序章に過ぎないんだ⁉︎
今でこれなら明日は一体どうなっちゃうんだろう…?
何はともあれーー。
『みんなお疲れ様でした!怪我した人は遠慮なく言って下さい』
「おぉ!頼む苗字!」
「俺もお願いしていい?」
「私も〜!」
「オイラもー!」
「オイ峰田!余計なマネすると轟に殺されるぞ!」
殆どの人が一斉に私に集まって来て私は圧に圧倒されながらも、頼りにされている事が嬉しくて、1人1人丹念に個性を使っていく。
「わぁ〜凄い!本当に疲れが吹っ飛んだ⁉︎ありがとう名前ちゃん!」
「俺もだぜ!死にかけてたけど、苗字のおかげで生き返った!ありがとな!」
『こちらこそ、お役に立てて光栄です』
みんなの嬉しそうな表情に私自身も嬉しくなって喜びを噛み締めていると、私の横をボロボロの爆豪さんが通り過ぎようとする。
『…あっ、爆豪さーー』
「いらねー」
『…は、はい』
ですよねー…。
私も苦手意識はあるけど、それ以上に爆豪さんにも随分嫌われてるなぁ、私…。
「名前、頼んでいいか?」
振り返ると、順番を待っていた轟くんが佇んでいた。
『轟くん…!お疲れ様。今治すね?』
「あぁ。頼む」
私は轟くんの手に触れて力を使う。
言ってもみんな擦り傷程度で、あっという間に傷は消えて無くなった。
ちなみに修復は怪我だけでなく、疲労回復にも効く。
正に疲れ知らずの個性で、自分でもなかなか便利なんじゃないかと思う。
『はい、もう大丈夫!元気出た?』
「あぁ。けど…」
『?』
そこで区切ってじっと私の顔を見つめるので不思議に思って首を傾げると、轟くんに優しく微笑まれた。
「お前の笑った顔見た方がずっと元気出るな」
『ーーえっ…⁉︎』
サラッと言われた言葉に、私の心臓がドキリと跳ねる。
「えぇ〜⁉︎なになに轟今の⁉︎」
「イケメンの笑顔初めて見た!」
その様子を側で見ていた2人組の女子がキャー!と盛り上がっていると、相澤先生が眉をひそめてこちらに顔を向ける。
「茶番はいいって言ってんだろ芦戸、葉隠。早く入れ」
「は〜い…」
「伸ばすな。"はい"だ芦戸。…それから轟、後ろがつっかえる。終わったらとっとと中入れ」
「はい」
轟くんは素直に返事すると、施設の中へと入って行く。
「見せつけてくれるねぇ?…お2人さん」
『上鳴くんっ⁉︎』
「やっぱ付き合ってんだろお前ら?」
『い、今のは違ッ…!』
「ーーお前ら……同じ事を何度も言わせるなッ!!」
「『すいませんでしたーー!!』」
この合宿で1つ分かった事がある。
……相澤先生を怒らせるとかなり怖い。
歯向かったりしたら何されるか分からない。
捕縛布で体を縛られた瞬間、そう悟った…。