第10話
お名前は?
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「ここが、今回君達が1週間宿泊する施設ね」
『おぉ〜!思ってたより大きい建物ですね?中も広そう…』
「広いよー。この辺一帯温泉も湧いてて、うちにも露天風呂付いてるからね」
『露天風呂ですか⁉︎すごーい!』
旅館並の贅沢さ…!
何だか思ってたより色々楽しめそう!
「遊びに来てる訳じゃないからな。勘違いするなよ、
苗字」
『ーーッ⁉︎、……ハイ』
早速相澤先生に釘を刺されてしまった。
全てお見通しって訳ですね…。
何だかこの見透かされた感じ、心操くんと似てるな…。
と言うか、2人ともちょっと似た雰囲気あるよね?
両方目の下に
「早速で悪いんだけど、みんなが到着するまでの間に夕飯の準備をしなくちゃいけないの。少し手伝ってもらえる?」
『もちろんですよ!何なりと言って下さい!』
「ありがとう、助かるよ。じゃあ倉庫から食材運ぶの手伝ってもらおうかな?…あ、洸汰も運ぶの一緒に手伝って」
「……」
"洸汰"と呼ばれた子は、さっきの睨まれた男の子の名前らしい。洸汰くんは特に返事をするでもなく、黙って私達の後について来る。
倉庫に着くと、マンダレイから段ボールを渡される。
その中には美味しそうな野菜がたくさん入っていて、
私はそれを受け取ると、同じく野菜の入った段ボールを持った洸汰くんに話し掛けた。
『重たくない?大丈夫?』
「気安く話しかけるな。お前らと馴れ合うつもりはねぇよ」
『…!!』
洸汰くんは私を睨みながら冷たくそう言い放つと、慣れた様子で調理場へと足を運ぶ。
な…、何であんなに敵意を向けるんだろう…?
私はその様子に呆気に取られながら、胸の中のモヤモヤした感情を膨らませていた…。
「料理まで一緒に作ってもらってごめんね!テキパキ動いてくれるからつい頼んじゃって」
『大丈夫ですよ。家でもご飯作るので、これくらい朝飯前です!』
私は調理場でひたすら野菜を切り、みんなの分の夕飯の準備をしていた。
みんな頑張ってるかな。轟くんは怪我してないだろうか…などと考えていて、ふとさっきの洸汰くんの言動が気になり、私は意を決してマンダレイに質問する。
『あ、あの…マンダレイ』
「んー?どうしたの?」
マンダレイは手を止める事なく私の言葉に耳を傾ける。
『洸汰くんって、マンダレイのお子さんですか?』
マンダレイは私の言葉に手を止めると、すぐに手を顔の前にやってブンブンと横に振る。
「違う違う。あの子は私のいとこの子どもで、今うちで預かってるの」
『預かってる…?』
私が首を傾げると、マンダレイは少し目を伏せてその表情に暗い影を落とす。
「私のいとこ…つまり洸汰の両親ね、2年前……敵から市民を守って殉職したの」
『ーーえっ…』
思いがけない一言に、言葉が詰まる。
「ヒーローとしては名誉ある死だった。でも物心ついた子どもには親が全てだから……そんな綺麗事、理解できるわけなくてね…」
『……』
「だから洸汰にとってはヒーローという存在が、理解出来ない気持ち悪い人種なんだろうね」
『……そう、だったんですね…』
そうか…。
だからあの時、馴れ合うつもりはないだとか冷たい言葉を…。
"ヒーロー"と言う存在のせいで、両親を亡くしたと思っているんだ…。
…ようやく、腑に落ちた…。
『私と洸汰くん…少し境遇が似てるかもしれません』
「え?」
『私も両親が居ないんです。だから親がいない辛さは理解出来ます。ただ…決定的に違うのは、私はヒーローに助けられた側の人間なんです』
「…!」
私は、エンデヴァーに助けられた。
救われた命に今でもずっと感謝している。
立場は違うかもしれないけれど、私達はきっと共鳴出来る何かがあるはずだ。
『一度、洸汰くんとゆっくり話したいです…』
「……ありがとう」
少しでも気持ちに寄り添えるかもしれない。
ーー親を失った者にしか分からない、心の痛みが…。