第1話
お名前は?
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『ーー!』
思い出した…。
最初に出会った時、何で胸がもやもやしてたのか不思議だったけど、今わかった…。
『しょ、しょうと…くん…?』
「ーー!!」
たどたどしく名前を呼ぶと、その人は目の色を変えた。
「思い出したのか⁈」
『う、うん…でもまだ名前しか思い出せなくて…約束したこととか、どんな風に一緒に過ごしてたかとか…まだハッキリ思い出せない……ごめんね?』
昔の記憶は断片的で、思い出そうとすると何かに阻まれるみたいに映像がそこで途切れてしまう。
私だけが覚えてないって、結構酷いよね…。
「…いいんだ」
『…えっ』
「俺のことを覚えてくれてただけで充分だ。それに、一緒に過ごせば俺の事もっと思い出せるかもしれない…………あっ」
『?』
何か思いついたのかな?
次に出てくる言葉を待っていると、衝撃の一言が返ってきた。
「俺と付き合って欲しい」
は、い……?
どういうことッ⁉︎⁉︎
色々ぶっ飛び過ぎて頭が混乱した。
『ちょちょちょっと待って!…な、何か急過ぎないかな⁉︎どういうことかな?』
「いや、単純にずっと一緒にいられる方法が何なのか考えたら、それが1番自然かなって」
どこが自然ッ⁉︎
話しの流れが超展開過ぎでしょ!
クールな顔して意外と天然⁉︎
『い、言いたいことは分かるけど、まだ会って間もないし急に付き合うとかは……ね?それに、そういうのはちゃんと好きになってから付き合いたいし…』
「……そうか、分かった」
よかった。
分かってくれた。
取り敢えずホッと一安心。
「じゃあ、俺のこと好きになってもらえるよう頑張る」
『いや頑張るとこそこッ⁉︎⁉︎』
思わず盛大に突っ込んでしまった。
轟くんはそれでも驚きもせず、キョトンとした表情で首を傾げる。
「違うのか?」
『いや、違うというか…思ってたのと違う応えが返ってきたからビックリして…』
「好きになったら俺と付き合ってくれるんだよな?」
『えぇっと……い、一応そういうことになる……のかな?』
「じゃあ頑張る」
『………』
……な、何か…
話がおかしな方向に向かってないですか?
そもそも何で付き合う話しになってるの⁉︎
記憶をどうやったら戻せるかって話しだったよね?
相変わらずポーカーフェイスな彼は、感情が表に出ないから何を考えているのか分からなくなる。
『どうして…私のためにそこまでするの?』
だから素直に感じた気持ちをぶつけた。
一体何を考えているのか知りたかった。
轟くんは一瞬驚いた顔をしたけど、少しの沈黙の後、私を真っ直ぐに見つめ直す。
それと同時に、サァっと柔らかい春の風が舞い、桜吹雪が私達の間を美しく舞い散った。
「お前が好きだから」
あまりにも唐突に言うもんだから、一瞬頭が真っ白になった。
今、"好き"って言った…?
え……聞き間違いじゃないよね?
『え……好きって……私のこと?』
「他に誰がいるんだ?今お前しかいねぇだろ」
フッ、と笑う優しい顔に思わず胸がときめいた。
「俺は名前が好きだ…子どもの頃からずっと。それは今も変わらねぇ」
『……っ』
なに、これ…。
これは…現実なの?
こんな展開ドラマとか少女漫画の世界でしか
ありえない。
心臓…痛い…。
『あ…えっ、あ…』
何て言えばいいのか分からなくて、言葉に詰まっているとまたクスリと笑われた。
「顔真っ赤…林檎みたいだな」
『えっ…そ、そんなに赤い、かな?』
「あぁ。可愛い」
『ーー⁉︎』
ちょっ…、さっきから何でこんなサラリと大胆なこと言えるの⁉︎
計算…してるようには見えないけど…。
全部天然…なんだよね?
だとしたらーー。
「ゆっくりでいいから、俺の事思い出してくれ。俺も名前に好きになってもらえるよう頑張るから」
既に心臓がもちそうにありません…!
こうして始まった私たちの奇妙な関係性
後に記憶を取り戻すに連れて
大きく私の人生に変化をもたらすことになることを
この時はまだ知らない
第1話 おわり