第8話
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時間はあっという間に過ぎ、待ち望んだ放課後。
私達は先生に言われた通り、会議室へと向かっていた。
『何か急に緊張してきたぁ〜…凄い有名な人だったらどうしよう!』
「それはないだろ。有名な事務所だったらまずヒーロー科から選ぶ」
『た、確かに…』
なんて会話をしている内に、目的の会議室へと着いた。私達はお互い顔を見合わせて頷き合うと、緊張して震える手で扉をノックする。
「入れ」
『失礼します!』
中から低めの男の人の声がして、緊張した面持ちで扉を開けると、そこにいたのは意外な人物だった。
「来たか」
『えぇっ⁉︎ あなたは確か…!』
「1-Aヒーロー科担任の相澤消太だ。よろしくね」
そこにいたのは、以前不気味な男と出会った時にプレゼント・マイク先生と一緒にいた先生だった。
轟くんの担任の先生が、何でここに…⁉︎
「…ヒーロー科の先生が居るって事は、ヒーロー科編入に関わる事ですか?」
『えっ⁉︎ そ、そうなんですか⁉︎』
「察しがいいな心操。ま、その事も含めて今から追々話す…早く座れ。時間は有限だ」
『は、はいっ!』
相澤先生は顎で席に座るよう促し、私達は相澤先生と向き合う形で用意された席に並んで座った。
「この間の体育祭、君達の活躍も観させてもらった。単刀直入に言う。君らの個性は充分ヒーロー活動に応用できる。よって、ヒーロー科編入の見込みがあると判断した」
「!」
『本当ですか⁉︎』
まさかの展開に思わず身を乗り出す。
信じられない…!夢じゃないよね…⁉︎
私達、本当にヒーロー科に編入出来るんだ!
ようやく夢が叶った…!!
「ただし、これはまだ決定事項じゃない。今後お前たちの成長が"見込みゼロ"と判断した場合は、容赦なく切り捨てる」
『…えっ…?』
「……」
決定事項だと思っていた手前、まさかの一言に背筋が凍りついた。
相澤先生は少し神妙な面持ちで私達を見つめる。
「半端な期待を持たせる事ほど残酷な物はないからな。いつでも切り捨てられる覚悟はしとけ」
「じゃあどうやって成長した姿を見せればいいんですか?」
心操くんは落ち着いた様子で、相澤先生に言葉を投げかける。
確かにそうだ。私達普通科じゃ、ヒーロー科みたいに活躍出来る場なんて…。
「その事についてはちゃんと考えてある。例えば心操、お前の個性は対敵用に関してはかなり有効な個性だ。だが、一芸だけでヒーローは務まらん。1人で打開する適応力も必要だ」
「……」
相澤先生の言葉にピクリと心操くんの肩が揺れる。
チラリと横目で見ると、少し痛いとこを突かれた様な表情をしていた。
「今後、そこを強化する訓練を俺がお前に直々に教える。それに付いて来れるかはお前次第だがな」
「…必ず、付いていきます」
さすがヒーロー科の先生…!
体育祭の短い間で、
もう個性の弱点まで見抜いてるんだ…。
しかもプロヒーローにマンツーマンで教えてもらえるなんて、羨ましいなぁ。
「それから苗字」
『…ハ、ハイッ!』
「お前の個性は心操と違って、事故や災害の人命救助に非常に有力な個性だ。それに市民を救うだけじゃない。お前の力はヒーローも救える立派な個性だ」
『…ヒーローも…救う…?』
「ようは、ヒーローをも救えるヒーローになれるって事だ」
『ーー!』
ーーヒーローをも救える…ヒーローに…!
そんな事を言われたのは生まれて初めてで、目の前の視界が本当にキラキラと開けたような気がした。
プロのヒーローに…そんな風に言ってもらえるなんて!嬉し過ぎる…!
『ありがとうございます…!』
「その代わり責任も重大だぞ。お前の判断で命を生かすも殺すも出来る。
『……はい。分かってます』
「そこの強化は俺以外に13号先生やリカバリーガールにも協力してもらうつもりだ。心してかかれよ」
『はいっ!頑張ります!』
相澤先生は言い終わると、気が抜けた様にポリポリと髭を搔く。
「話は以上だ。ちなみに今の話しは内密にな。ヒーロー科編入は決定事項になってからコッチで発表するから」
「はい」
『了解です!』
先生は椅子から立ち上がると、何かを思い出した様に私達に振り返る。
「ちなみに、雄英生と言えど学業も学生の本分。成績悪い奴は問答無用で切り捨てるから。分かったか、苗字」
『わ、私ですかッ⁉︎』
「お前、普通科の中で合格ラインギリギリで受かったそうだな。次の期末試験までに赤点取ったら終わりだから」
『そんなっ…!』
確かに学業は得意分野ではないけど…!
てか、そんなギリギリだったんだ私⁉︎
「俺は暫くヒーロー科の職場体験で忙しくなる。強化訓練はその後だ。それまでにしっかり勉強しろよ、バッドガール」
そう言い残して、相澤先生は会議室を出て行った。
…それ、マイク先生が言ってたやつ…。
相澤先生にもイジられた…。
「苗字、お前………やっぱバカだったんだな」
『うん!そう言うと思った!』
期待を裏切らないね、心操くん⁉︎
傷口に塩塗って来るよね⁉︎
『はぁ〜…どうしよう…。私1人で勉強するの苦手なんだよなぁ〜…』
「………」
『……心操くんってーー』
「教えるとかダルイから無理」
『ーーまだ何も言ってないよッ⁉︎』
人が言い終わる前に被せて来たよこの人!
いやまぁ…合ってるんだけどさ…。
そんなとこまでお見通しなんだ。
どんだけ分かりやすいの私…。
『はぁ……そうだよね…。他に教えてくれそうな人……轟くんは…』
「…!」
無理、だよね…。
職場体験で忙しくなるって相澤先生も言ってたし、それに…私とはあまり関わりたくないかもしれないし…。
「やっぱ教えてやる」
『…えっ?』
悶々としていると、まさかの心操くんの言葉に目を丸くする。
『あれ…?だって今、ダルイから無理って…』
「…………気が変わった」
そんな180度意見変わる事ある⁉︎
全くの真逆なんだけどな…。
「何だよ…。勉強しないとヤバイんだろ。赤点取ってヒーロー科編入出来なくてなっても知らねぇからな」
『あぁ、嘘ですっ!ありがとうございます、お願いします心操先生!』
「先生はやめろ、ウザい」
何はともあれ、まさかの心操くんのご指導により期末試験までみっちり勉強を教えてもらう事になった。