第1話
お名前は?
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『はぁ、はぁ…っ!』
教室から正面玄関まで一直線に走り抜け、さすがに息が切れる。
…私のよくないクセだ。
昔からそうだった。
辛そうにしてる人がいるとほっとけなくなりなんとかしてあげたいと思う。
素性も何も知らないのに余計な首突っ込むなって思われちゃうよね…。
『明日からもっと普通にしなきゃ…』
トボトボと帰路についていると、また懐かしい感覚に
顔を上げた視線の先には、あの公園があった。
『あれ?この公園、学校の道なりにあったんだ。行きしな急いでて気付かなかった…』
そして、何故だかその公園に自然と体が引き寄せられる。
何でだろう…?
ここに来るとすごく心が落ち着いてくる。
公園に近付いて行く刹那、数日前の光景が蘇ってくる。
ーーベンチに座る、赤と白の髪の人。
まさか、あの人も来てたり……
『あれ?……いない』
ベンチには誰も座っていなかった。辺りを見渡しても、それらしき人はいない。
『…って、何を期待してーー』
「お前もよくここ来るのか?」
『ぎゃあ!!』
背後から突然発する声に驚いて腰を抜かしてしまい、その場で盛大に尻餅を着いた。
『あいたたた…』
「
『あ、すみませーー』
差し出された手に触れようと顔を上げると、そこにいたのは、正に今思い描いてた人物…
雄英の推薦入学者の人だった。
えっ?えっ?
何で後ろにいるの⁉︎
いつからそこにいたの⁉
全く気配感じなかった!
完全に掴むタイミングを見失った手をあたふた漂わせていると、向こうから手を掴んで引き上げてくれた。
『わっ、と!…ど、どうも、すみません』
「………」
『……あ、あの?』
何故か手を掴まれたまま離す気配はなく、じーっと私を見つめたまま微動だにしない。
ど、どういうことー⁉︎
何で離してくれないのー⁉︎
表情一つ崩すことなく端正な顔立ちでじっと見つめられると、好きとか関係なしに胸が高鳴ってくる。
どうしたらいいか戸惑っていると、真っ直ぐに私を映すオッドアイの瞳が
「……名前、なのか…?」
『えっ…何で、私の名前知ってーー』
言い終わるより先に、私の体は男の人に引き寄せられ、気づいた時には腕の中に抱き締められていた。
……えっ。
えぇぇぇ〜〜〜ッ!⁉︎?
状況が掴めず頭がパニックになる。
必死に押し返そうとするが、更に強く抱き締められる。
『ちょっ、…!』
「…ずっと探してた」
『……えっ?』
私を…探してた?
どうして?
「ようやく…会えた…。ずっと、お前に会いたかった……」
抱き締められた腕に力が
「ーー約束、守れなくて悪かった」
まるで少女漫画みたいなセリフだ。
普通の人なら、こんなイケメンに言われたら即イチコロだ。
でも………
私、あなたと話すの初めましてだよねッ⁉︎
『ちょっとストーーーップ!!』
やっとの思いで体を引き離すと、ゼェゼェと肩で息をする。男の人はキョトンとした表情で私を見つめていた。
深い深呼吸をして心を落ち着かせ、目の前の人物に視線を戻す。
『あ、あのっ!多分人違いしてるよ!私、あなたと約束なんてしてないし、話すのもこれが初めてだし…』
「人違い?………いや、そんなはずねぇ。俺がお前を他の奴と見間違うはずがねぇ」
……その自信はどこから来るんだろう?
『で、でもっ……私は覚えてないから…』
「……忘れたのか?……俺のこと……」
うっ…。
そんな悲しい顔されると、物凄い罪悪感が…
けれどその表情を見た瞬間、懐かしい感覚に襲われた。
ーーあれ…?
ーーこの感覚、どこかで……。
脳裏に忘れられていた記憶がよみがえってくる。
小さかった頃、公園でよく泣いていた男の子。
ほっとけなくなって声をかけると、その子は酷く怯えていて…。
『ビックリさせてごめんね?私は名前。あなたの名前は?』
「ぼくは…
ーーー轟 焦凍」
サラサラした赤と白の髪が印象的な男の子。
それが今目の前にいる人物と重なった。