第8話
お名前は?
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2連休が明けて、翌日ーー。
天気は
『はぁ…何か憂鬱だな…』
私はこの間の轟くんとの事で、ずっと気持ちが晴れずモヤモヤしていた。
…轟くんのこの前話してた意味って、私との過去を無かったことにするって事なんだよね…?
それじゃあ、今まで記憶を呼び戻すために私と一緒に居ようとしてくれた意味も…もう無くなるって事なのかな…。
……何か、それは……嫌、だな…。
そうこうしている内に教室に辿り着く。
チラリと中を覗くと、心操くんが席に着いていた。
このままの感じだとまたすぐにバレちゃうな…。
よし、気持ち切り替えて行こう!
私はふぅ…と一呼吸置いてから、教室に入った。普通に接するんだ、名前!
『おはよう!心操くん!』
「…何だよその作り笑い」
『エッ…⁉︎』
ーー光の速さでバレたんだけどッ⁉︎
『な、何を言ってるんだい心操くん!至って普通じゃないか!』
「やめろその喋り方。気色悪い…」
『きっ…気色悪いはヒドイ!』
心操くんは眉をひそめながら、怪訝な顔で私を見る。
「何なんだよさっきから。いつにも増して変だぞお前」
『いつにもって何ッ⁉︎ 私いつも変なの⁉︎』
「自覚なかったのか?」
『えっ…嘘だよね?』
地味にショックを受けていると、フッと心操くんは口元を緩める。
「やっと普通に戻ったな」
『…!』
あぁ…もう。
心操くんには敵わないや…。
『何か…心操くんっていつも私より一歩先にいるよね。ずるい。何でそんなに余裕あるの?』
「ずるいって何だよ。別に…余裕ぶってもないし。まぁ苗字よりかは落ち着いてるかもな」
得意げにニヤリと笑う心操くんが、憎たらしいのに…何故か憎みきれない。
それが心操くんの人徳なのか何なのか…。
「おはよー。ホームルーム始めるぞー。みんな席に着けよー」
教室の扉を開けて入って来る担任の掛け声に、クラスのみんなが自分の席へと座る。
「みんな、2連休はゆっくり休めたか?初めての体育祭だったからな。緊張したと思う。だが、そんな中特に頑張っていたのはーー」
そう言ってコチラに視線を向ける担任とパチリと目が合った。
「苗字!」
『はっ、はい!』
「そして心操!」
「…はい」
名指しで先生は私達を呼ぶと、嬉しそうに拍手を送ってくれた。
「お前たちは本当に良く頑張ったな!担任として誇らしく思うよ。みんなも2人に盛大な拍手を!」
「カッコ良かったぜ!2人とも!」
「ヒーロー科編入もありえるんじゃない⁉︎」
『…あ、ありがとうございます!』
「…どうも」
クラスのみんなから盛大な拍手と共に、激励の言葉をもらい、嬉しさで胸がじわりと熱くなる。
心操くんは相変わらずのポーカーフェイスだったけど、きっと私と同じ気持ちだろうと思った。
「それでだ、肝心のプロヒーローからの指名だがーー」
『…!』
「……」
そうだ…!
この体育祭では多くのプロヒーローが観に来ていて、御眼鏡に叶えばサイドキック入りも夢じゃない!
もし、もし指名が来ていたらーー…!
「残念だが、1人もいない」
『えっ…⁉︎』
「……」
まさかの指名0人にショックを受ける。
私は予選敗退だし仕方ないとして、トーナメントで活躍した心操くんまでも指名無しなのは驚いた。
「まぁ、指名が本格化するのは経験を積んだ2、3年からだからな。しかも普通科のお前たちにその経験なんて機会ないから、これは致し方ない事だ」
『…そ…そうですよね…』
当然だ…。
ヒーローへの道のりはそんなに甘くはない。
そんな簡単になれる訳がーー…
「ーーただし、お前たちに是非とも会いたいと言うお方がいる。今日の放課後、会議室に部屋を借りてるそうだから、忘れずに行けよ」
『えっ?…は、はい!』
「…分かりました」
私達に会いたい…?
しかもわざわざ雄英に来てまで…⁉︎
一体、誰なんだろう?
はやる気持ちを抑えつつ、午前の授業を全て終え、昼休みの時間となった。
『心操くん!今日一緒にお昼食べよ?』
「はっ…?何で…」
私がそう言うと、心操くんは一瞬、ハトが豆鉄砲食ったみたいな顔をして、すぐに顔をしかめる。
『体育祭の時、誘ってくれたのに私、断っちゃったから申し訳なく思ってて……。だから一緒に食べよ?』
「……別に、あれはついでで誘っただけだったから、そこまで気にしてねぇよ」
『えっ、そうなの?拗ねてたんじゃなかったんだ』
「ーーっ…!、誰が拗ねるかバカッ!」
心操くんは顔を赤くして否定する。
その必死な姿が少し可愛く思えて、くすりと笑った。
『ごめんごめん、冗談だよ。お詫びに卵焼きあげるから許して?』
「……苗字のくせに、生意気」
『いつもの仕返しです!…はい、卵焼き。食べる?』
「………食う」
不貞腐れた顔で素直に卵焼きを受け取る心操くんを見て、少し心操くんの扱い方が分かったかもしれないと思った。
こういう時ストレートに感情をぶつける轟くんと違って、心操くんは少し
まぁ、心操くんらしいんだけど…。
「ニヤニヤするな。気持ち悪い」
『き、気持ち悪いってヒドイ!年頃の娘に向かって!』
「いちいちワードが古臭いんだよ」
『……ねぇ、泣いていい?』
まぁ…分かっててムキになる私も私なんだけど…。
『…それより、先生が言ってた人って誰なんだろうね⁉︎ さっきからずっと気になってて。外部からわざわざ私達に会いに来るなんて、やっぱスカウト目的なのかな?』
「……外部からだと思うか?」
『えっ……違うの?』
何かを察した様な心操くんの言葉に、私は意表を突かれる。
「いや…まだ確信じゃないけど。何となく違う気がする」
『へぇ…?まぁでも、放課後になれば分かるんだし楽しみだね!』
「……そうだな」
私達に会いたいと言ったその人は、一体どういう目的でそう言ったのか。
早く放課後にならないかなと思いながら、私は放課後まで時を過ごしたーー…。