第8話
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『ど、どうして急に…⁉︎』
突然の言葉に、私はかなり
だって、もともと轟くんは私との記憶を思い出させてくれようとして、今まで関わってくれていたのだ。
なのに、もう思い出さなくていいなんて…。
けれど轟くんは落ち着いた様子で言葉を続ける。
最初から何かを決意していたように…。
「俺はずっと、過去に縛られてた。お前との約束を思い出さそうと
『……』
「覚えてないって言われた時、何とか記憶を呼び戻して、繋がりを持とうとした。ガキの頃からずっとお前だけを想っていたから…。だから、最初覚えてないって言われた時、俺の存在がお前から無くなったのを素直に認めるのが……堪らなく不安で……怖かったんだ」
『ご、ごめんなさい…私っ…』
「謝るな。責めてる訳じゃねぇ。むしろ覚えてなくて当たり前なんだ。過ごした時間も夏の間の短い期間だし、忘れたって仕方ねぇ。約束だって……ガキがする約束なんて、一生の約束なわけないのに……俺はずっとそれに
『……っ』
「だから、もう俺との過去は無かったことにしてくれていい。俺も忘れなきゃならねぇ…。これは、過去の俺との決別でもあるんだ」
そう言った轟くんの表情は、どこかスッキリとしていて迷いなんてなくて…。
体育祭以降、やっぱり表情が変わった気がする。
だから私は何も言えずに、轟くんを見つめる事しか出来なかった。
きっと轟くんは、自分のために前に進もうとしているんだ…。
私がここで引き止めるのは違う…よね…?
『……そっか。轟くんはなりたい自分のために、過去を乗り越えようと頑張ってるんだね』
「あぁ…。ここからがきっと、俺のスタートラインなんだ」
スタートライン…。
自分の望むヒーローになるために…!
私は轟くんを見つめると、ニカッと笑ってみせた。
『私も、轟くんに追いつけるよう頑張るよ!将来は絶対に有名なプロヒーローになって、たくさんの人を助けるの!……だから、お互い頑張ろうねっ!』
「あぁ…!」
私たちしばらく他愛のない話しをしてからその場で別れると、自分たちの家へと向かう。
帰路に着きながら、私は先程の轟くんの言葉を思い出していた。
『…全部、忘れたままでいい…か』
確かに、あれから思い出せたのは小さな轟くんとの出会いだけ。
それ以降は思い出す
『結局、"約束"も思い出せないままだったな……』
轟くん、約束した事あんなに大事に思っていたはずなのに……もう忘れたままでいいんだ…。
私も気になっているけど、轟くんが忘れてくれって言うのならーー。
ーーポタッ…。
『…えっ…?』
その時、私の頬を何か温かい物が伝う。
そっと指先で触れると、水滴のようなモノが指先を濡らしていた。
『私…何で、泣いてるの…?』
それは、涙だった。
泣くつもりなんて全然なかったのに、涙は私の意に反してとめどなく溢れてきて、拭っても拭っても追いつかない。
『な、何で…っ…、ひっく…』
悲しくなかったのに、涙が流れるせいで段々と本当に悲しくなってくる。
訳が分からず、私は子供みたいに泣きじゃくった。
何故だか分からないけど、でもーー。
心の奥に潜むもう1人の私が、"忘れないで!"って必死に訴えてるみたいで、何故か胸が痛かった…。