第8話
お名前は?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
雄英体育祭が終わった翌日。
学校は今日・明日と2連休となり、私は家で1人録画していた体育祭の映像を観ていた。
《何だぁ⁉︎せっかく倒したのにまた起き上がっちまったぞ⁉︎一体誰が…ンあ?あれは…!!バッドガールじゃねぇか!!これはまさかのダークホース登場かぁ⁉︎⁉︎》
『えぇぇ〜⁉︎ 私こんなドアップで映ってたんだ⁉︎ ヤバッ、家宝だコレ…!』
自分がテレビに…しかも毎年観ていた雄英体育祭に、こうして大々的に自分の姿が映る日が来るなんて思いもしていなかった。
人生何が起こるか分からないって本当だな。
私は暫し夢中で体育祭の録画を観ていた。一通り見終わった所でお腹の虫が鳴り、時計を確認すると時間はお昼の12時半を指していた。
わっ、夢中になり過ぎてご飯食べるの忘れてた!
何か食べ物あったっけ…?
私は立ち上がり、冷蔵庫の中を確認する。
中に入っていたのは飲み物と調味料類のみだった。
『何だこの給料日前のカツカツな暮らしみたいな……。はぁ…仕方ない、買い物行くか…』
面倒臭いが、放っておいてもお腹の虫が鳴き止むことはない。
私は財布と鞄を手に取ると、近くのスーパーへと向かったーー…。
ーーー✴︎✴︎✴︎
『いやぁ〜、体育祭の知名度
私はスーパーの帰り道、通り過ぎたお店の人達から「体育祭見たよ!」と声を掛けてもらい、「これサービスだよ!頑張ってな!」とたこ焼きやら缶ジュースなど頂いた品物を両手に抱えていた。
まだヒーローになれた訳じゃないのに、こんなにたくさん応援してくれる人がいるなんて…。
『嬉しいなぁ…』
益々頑張らなきゃ!という気持ちが湧いてくる。
人の温かさに触れて、ルンルン気分で帰路についていると、曲り角から突如現れた誰かに反応するのが遅れ、避けようとした足がもつれる。
『わわっ…⁉︎』
「!」
そのまま地面に倒れ込みそうになった瞬間、ぶつかりそうになった人が私の腰回りを片腕で支えてくれ、間一髪転ぶのは阻止された。
あ…危なかったーー!
もう少しで顔面から転ぶとこだった…。
『あ、ありがとうこざいーー』
ホッと一息吐いてその人を見上げた瞬間、まさかの人物に仰天した。
『ーー轟くんっ⁉︎』
「名前…⁉︎」
轟くんも私と同じ様にビックリした様子で目を見開いている。まさか、こんな場所で偶然会うとは思いもしなかった。
…てか、顔近ッ⁉︎
しかも手が!こ、ここ腰に触れて…!!
色々と意識した途端、火がついた様に一気に顔が熱くなり、私は慌てて轟くんから遠ざかった。
『ご、ごごごめんねッ⁉︎ 前ちゃんと見てなくて!大丈夫だった⁉︎』
「…あぁ。俺こそいきなり悪ィ。転ばなくて良かったな」
『うん!轟くんのおかげで…!本当、ありがとう』
「…いや、無事ならいい」
……何か、轟くんとこうやって普通に話すの凄く久しぶりな感じがする。
体育祭の時は気まずいままだったしな…。
「……久しぶりだな。こうやって話すの」
『!』
轟くんも私と全く同じ事を思っていたみたいで、少し気まずそうに視線を逸らしながらそう言った。
『…うん。私もそう思ってた。だから……嬉しい』
「…えっ…?」
『轟くんとこのまま話せなくなっちゃうの……嫌だと思ってたから…。だから、今こうやって話せるの凄く嬉しいよ』
「…っ…」
本心から出た気持ちを素直に伝えると、轟くんは少し唇を噛みしめ、顔を伏せた。
「悪かった…。俺、お前を傷付けるような事たくさん言ったよな」
『……ううん。何か、言えない事情があったんだよね? だから別にーー』
「ーー名前」
『…?』
轟くんは真剣な表情で私を見つめていた。
何かを決意した様な、そんな眼差し…。
「お前に、話しておきてぇ事がある。時間…少しもらっていいか?」
『…うん。大丈夫』
轟くんの雰囲気から、何か重要な事を聞かされる気がして、少し緊張しながらそう答えると、2人でいつもの公園へと足を運んだ。