第7話
お名前は?
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*轟視点*
「ゴホッ、ケホッ…!」
俺は緑谷からもらった重い拳の一撃に、吐きそうになるのを何とか堪える。
チクショウ…。
ボロボロのくせに、反撃してきやがって。
とっくに限界は超えてんだろ…?
「何でそこまで…」
「期待に応えたいんだ…!笑って応えられるような…カッコイイ人に……"なりたいんだ"!」
「!」
「焦凍…」
『焦凍くん』
その時、脳裏に懐かしい声が響いた。
「だから全力で!やってんだ、皆!」
緑谷の強い体当たりに、俺の体が弾き飛ぶ。
転びそうになるのを何とか堪えて体勢を立て直した。
「君の境遇も、君の"決心"も、僕なんかに計り知れるもんじゃない……でも……」
そう言って、緑谷は俺をグッと睨む。
「全力も出さないで1番になって完全否定なんて、フザけるなって今は思ってる!」
「うるせぇ……」
頭の中で、幼い頃の辛い記憶がよみがえる。
けれどその中で、お母さんに頭を撫でながら言われた一言だけは…何故かその先が思い出せない。
「だから……僕が勝つ!!君を超えてっ!!」
緑谷の重い拳をまた腹に食らう。
その瞬間、ふわりと何かが宙を舞うのが見えた。
ーーあれは……ハンカチ…。
それは前に名前から貸してもらったハンカチだった。
洗って返そうと思って、渡すタイミングを見計らってずっと持っていた。
けれど、それを見た瞬間、懐かしい感覚に襲われる。
ーーそうか…。
あの時…ハンカチを渡された時、
何故か懐かしい感覚がした。
それが何でなのかよく分からなかったが、
……今、思い出した。
俺は、以前にも名前から
ハンカチを借りた事があったんだーー…。
幼い頃、いつものように公園で遊んでいると、急に雨が降ってきて、俺達は公園の遊具で雨宿りをしていた。
「うわ、冷た…!」
『急に降ってきたね……大丈夫?ハイ、これ使って』
「えっ…。いいの?」
『うん!このままじゃ濡れて風邪ひいちゃうよ。ヒーロー活動は体が資本だからってお母さん言ってた』
「シホン…?」
『ふふっ…。風邪引いちゃ、大事な人を守れないってってことだよ!焦凍くん、ヒーローになるんでしょ?』
ーー俺は…ヒーローに……。
「見るな焦凍。
「私…もう育てられない…育てちゃダメなの…」
ーー俺は……親父を……親父の力を…
「ーー君の!力じゃないか!!」
「ーー!!」
「でも、ヒーローにはなりたいんでしょう?いいのよ、おまえは」
ーーいつの間にか、忘れてしまった。
「血に囚われることなんかない。なりたい自分に、なっていいんだよ」
ーーなりたい、自分…。
『焦凍くんは、どんなヒーローになりたいの?』
ーー俺は…!
「ぼくは……自分の力で大事な人を守って、悪い奴らから救い出す、強いヒーローになりたい!」
ーー俺がなりたいヒーローは…!!