第7話
お名前は?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
*轟視点*
幼い頃から何度も俺を助けてくれた。
そんなお前に俺はずっと恩返しがしたいと思っていた。
何でもいい。
欲しい何かがあれば手に入れるまでそれを探すし、お前を傷付ける奴がいれば、絶対に俺が助けに行く。
名前が望む物なら何だって叶えてやりてぇって思った。
俺はずっと…お前の望むヒーローになりたかったんだ。
『火事に巻き込まれた時、私を助けてくれたのはーーーエンデヴァーなのっ…!!』
名前からそう聞かされた時、俺は耳を疑った。
アイツが…… 名前を救っていただと…?
俺がずっと欲しかった物を、何でアイツが持ってる…⁉︎
『今、私がここで…こうやって生きていられるのは、エンデヴァーが助けてくれたから…!』
ーー何で…ッ…!
「……めろ…」
『私はエンデヴァーに、凄く感謝してる…!だって、ヒーローを目指したのは…エンデヴァーが私をーー』
「ーーやめろッ!!」
ーー何で、よりによってあのクソ親父がッ!!
認めたくなくて、受け入れられなくて、俺は名前を置いて食堂を出て行った。
俺は1度だって、アイツをヒーローだと思った事はねぇ。
お母さんを傷付け、自分が叶えられなかった野望を俺に無理やり押し付けるアイツが、ずっとずっと憎かった…!
なのに何でアイツなんだ…名前ッ…!!
俺がヒーローじゃダメなのか…?
お前が辛いこと、苦しいこと、全部俺が取っ払ってやるから。
だから…。
お前はずっと俺だけを見て、俺のそばで笑ってくれるだけでいい。
それだけで、俺の心は満たされるんだ…。
そう思っているのにーー…
控え室で見た、心操と名前の姿。
ずっと俺のために使ってくれたその力を、お前は他の男にも使うのか…?
俺の中で、また黒い感情がフツフツと湧き起こる。
お前も、お前の個性も、全部俺だけの物だろ…?
他の奴に向ける感情なんか何もいらない。
その優しさも、俺だけに見せてくれよ…!!
「ーー苗字に、何してる…!」
心操の声にハッと意識を取り戻す。
気付いたら俺は、名前を押さえ付けていた。
恐怖に染まった瞳で俺を見つめる名前の姿に、俺の心がズキリと痛む。
違う…。
俺は、そんな顔をお前にさせたい訳じゃない。
「……俺は…、何を……」
ーー俺が望んでいるのは…
「こんな所で何をしているーーー焦凍」
ーー望んでいる事は…
「もうすぐ出番だろう。こんな所で油を売ってる場合か」
ーーコイツを超えて、俺がお前の救いのヒーローになる…!
だから、絶対にお前の"個性"なんざ使わねぇよ……クソ親父ッ!!
ーーー✴︎✴︎✴︎
《今回の体育祭、両者トップクラスの成績!!まさしく両雄並び立ち今!!緑谷
『緑谷くんと、轟くんの戦い…』
色んな人達の試合を観て来て、たくさんの人達の想いを感じ取る事が出来たこの体育祭。
その中でも、この試合は
《
開始の合図の瞬間、轟くんの氷結が緑谷くんを襲う。
けれど、緑谷くんが指を弾いた瞬間、物凄い風圧が発生し、轟くんの氷結を砕いた。
『あれが、緑谷くんの個性…!』
心操くんの試合でも観たけど、それよりも更に強力…⁉︎
凄いな…ヒーロー科!
それから何度も轟くんの氷結が緑谷くんを襲うけど、その度に個性で氷を破壊する。
けれど、氷結が緑谷くんの足を捕らえ、それを個性で砕いた後にようやく緑谷くんの異変に気付いた。
『…あれ?緑谷くんの腕が…!』
見ると、緑谷くんが力を放っていた腕がボロボロになり、なんとも痛ましい見た目になっていた。
個性を使うだけで、あんなにボロボロになるなんて…!あんな状態じゃあもう…。
轟くんもそれが分かっているのか、氷結で更に緑谷くんに追い討ちを掛ける。
もう無理だーー。
そう思った瞬間、
ブォン!!
また高威力な風圧が放たれ、轟くんの氷結を撃ち砕く。
『…!、まさか、ボロボロの腕で…⁉︎』
今し方ボロボロになった腕で力を使ったであろう緑谷くんは、その腕を握り締めながら、轟くんをキツく睨みつけていた。
「……っ!!皆…本気でやってる。勝って、目標に近付く為に…っ、1番になる為に!」
『!』
「半分の力で勝つ⁉︎ まだ僕は君に傷一つつけられちゃいないぞ!」
ーー"半分"の力…。
そうか…。
轟くんは、2つの個性を持っているんだ。
1つが氷結で、もう1つが…
ーー…エンデヴァーの炎。
「"全力"でかかって来い!!」
そう叫ぶ緑谷くんに、轟くんの表情が憎悪に満ち溢れて行くのが分かった。
轟くんは緑谷くんに駆け寄って行くけれど、その動きは先程よりも、少し鈍くなっている。
緑谷くんは、轟くんの懐に入ると、重いストレートパンチを轟くんのお腹に食らわした。
《モロだぁーー!生々しいの入ったぁ!!》
観覧席にいた人達も、反撃に出る緑谷くんに至極驚いた様子だった。
苦しそうに