第1話
お名前は?
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入学式は滞りなく進められ、校長先生(ねずみ⁉︎クマ⁈)の歓迎の言葉も頂き、無事に式を終えた私たちは、再び教室に戻ってきた。
「じゃあ今から順番に1人ずつ自己紹介と個性の発表をしていってもらうぞ」
自己紹介かぁ…。
そういうのチョット苦手だな…。
ふと窓の外を眺めると、グラウンドに集まるヒーロー科の生徒たちに目が止まる。
てか、まだグラウンドにいたんだ!
ヒーロー科すごいなぁ…。
体力テストをしているのか、走ったり砲丸投げをしたりしている。みんな個性を使って記録を伸ばしてるみたいで、様々な結果が見て取れた。
ヒーロー科に受かれば、私もあそこにいたのかな…?
いやでも、私の力なんかじゃきっと…。
「おい、苗字」
『ーー⁉︎ は、はいっ!』
「次、お前の番だぞ」
先生の声にハッとすると、いつの間にか自己紹介がスタートしていたみたいで、順番が回ってきた私が何も言わないのを、クラスのみんなが不思議そうにこっちを見ていた。
『す、すみません!』
ぎゃー!!
めっちゃみんなに見られてる!!
絶対変なヤツって思われてる!!
すぐに席から立ち上がり、緊張しながら口を開いた。
『苗字 名前です!この春から引っ越して来ました。色々教えてもらえると嬉しいです…!えっと…個性は "修復" です。物や怪我はすぐに直せるので、困ったら言って下さい』
「はい、じゃあ次ーー」
何とか自己紹介を終えると、全身から力が抜けてへなへなと椅子に座り込む。
初日からやらかした…。
恥ずかしい。
なんか、最近こんなんばっかな気がする。
少し落ち込んでると、隣の席のクールな人が椅子から立ち上がった。
「心操人使です。個性は…… "洗脳" です。洗脳に掛かった人は何でも言いなりにできます」
"洗脳" と言った途端、教室が少しざわつく。
「ヤバイじゃん!やりたい放題じゃん」「羨まし過ぎだろ」なんて嬉しそうに話す男子の会話も聞こえる。
「はーい、静かに。じゃあ次の人ーー」
先生のおかげですぐにその場は収まったけど、チラリと心操くんを見ると、何だか少し暗い表情をしている気がした…。
「それじゃあ今日はこれで終わりだ。明日から普通に授業始まるから遅刻するなよー」
LHRが終わり、一応なんとか入学式は無事に終わった。
下校時間となり生徒がゾロゾロと教室を出て行く。
さて、私も帰る準備しなきゃ…。
…あっ!その前にーー。
『心操くん』
「?」
隣で帰り支度をしていた心操くんに声を掛けると、少し驚いた様子で私を見る。
『今日色々ありがとう!すごく助かったよ。明日からも隣同士仲良くしてね!』
「あぁ…別に礼なんていいのに」
『いやでも、実際すごく助けられたから。やっぱりちゃんとお礼言っとかないと!』
「フッ…結構律儀なんだな」
『…!』
あっ…笑った顔、ようやく見れた。
よかった。ちゃんと笑える人なんだ。
和やかムードの中、2人組の男子が心操くんの席へと近づいてくるのが見えた。
心操くんもそれに気付くと、視線を男子に向ける。
「心操…だっけ?さっきの個性 "洗脳" ってマジなの⁈」
「…そうだけど」
この人…さっき心操くんが自己紹介してた時に羨ましいとか言ってた人だ。
「スゲーじゃん!俺もそーいう個性が良かったよ!」
「なっ!何したって分からないよなぁ〜。やりたいことし放題じゃん!」
「……まぁね」
そう答える心操くんの横顔は、さっきと同じ暗い表情をしていた。
心操くん…。
今すごく傷付いた顔してるよ。
さっきまで笑ってくれてたのに…。
私はキュッと拳を握り締めると、精一杯の笑顔で言い放つ。
『すごくカッコイイ個性だね!!それって、対敵用にすごく向いてるヒーロー向きの個性だよ!』
「!」
私の言葉に、心操くんは目を剥いて驚いていた。
心操くんはクールな人だけど、ちゃんと笑えるし、傷付くことだってある!
だから、少しでも辛い気持ちを緩和してあげたい。
私の言葉が届くかわからないけど…
でも、それでも!
そんなことないよって、言ってあげたい!
『凄く羨ましいよ!ねっ⁉ 2人ともそう思うよね⁉︎』
「お、おぉ…そうだな」
私の圧力に若干引き気味の2人。それを見てハッと我に返った。
しまった…また、余計なことを!
『な、何か急に偉そうにごめんね⁉︎ さてと!用事あるしもう帰らなきゃ〜……じ、じゃあさよならっ!!』
一刻もその場を離れたくて、脇目も振らずに全力疾走で教室から出て行った。
「何だ…アイツ?」
「苗字だっけ?何かちょい浮いたカンジだよな。顔可愛いのに
「………」
心操は名前が出て行った教室の扉をただ呆然と見つめていた。