第7話
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《さァさァ!皆楽しく競えよレクリエーション!それが終われば最終種目、進出4チーム、総勢16名からなるトーナメント形式!!1対1のガチバトルだ!!》
トーナメント…!
毎年テレビで放送してたけど、やっぱり何やかんや1番盛り上がるんだよね!
まぁ…私は出れないんだけど…。
「それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きしちゃうわよ。組が決まったら、レクリエーションを挟んで開始になります!」
ミッドナイト先生は、くじ引きの箱を手にして、内容を丁寧に説明してくれる。
「レクに関して進出者16人は、参加するもしないも、個人の判断に任せるわ。息抜きしたい人も、温存したい人もいるしね」
『…心操くんは、レクリエーション出るの?』
隣にいる心操くんにこっそり聞くと、物凄く面倒臭そうな顔をされた。
「出るわけないだろ。そうじゃなくても、そーいうの苦手だし」
『あぁ…確かに』
頭の中で心操くんが大玉転がしや玉入れなどをしている様子を想像して、思わず吹き出しそうになるのを必死で堪えた。
レクしてる姿、似合わな過ぎる…!
「あの…!すみません」
『…?』
すると突然、ヒーロー科の1人が、複雑な顔をしながら手を上げている姿が目に入った。
「俺、辞退します」
ーーえっ…⁉︎
まさかの一言に、周りにいたヒーロー科の人達も「尾白くん!何で…⁉︎」「せっかくプロに見てもらえる場なのに!!」とみんな驚いてる様子だった。
「騎馬戦の記憶…終盤ギリギリまで、ほぼボンヤリとしか覚えてないんだ。多分、奴の"個性"で…」
そう言った彼の言葉に、騎馬戦で一緒に組んでた人が心操くんだった事を思い出した。
……そっか…。
やっぱりあの人も、心操くんの洗脳に掛かってたんだ…。
「皆が力を出し合い、争ってきた座なんだ。こんな…こんなわけわかんないままそこに並ぶなんて…俺は出来ない」
彼が言わんとする事が、何となく理解出来る。
自分の実力で勝ち上がれたわけじゃない。
正々堂々、真っ向からぶつかって勝利を勝ち取りたいと…誰だってそう思うはず。
分かるよ…。
悔しいよね…。
するとまた、ヒーロー科の1人が「僕も同様の理由から棄権したい!」と名乗りを上げ、結局ミッドナイト先生の判断で2人とも棄権が受容された。
まさかの展開だったけど、それだけみんながこの体育祭に向けて本気で挑んでいるんだと言うこと。
何だか、見ているこっちの方が胸が熱くなった。
「ーーというわけで、鉄哲と塩崎が繰り上がって16名!!組はこうなりました!」
モニターに映し出されたトーナメント表を見ると、第一試合に心操くん、第二試合に轟くんの名前が書いてあるのが目に飛び込んできた。
『心操くん1回戦なんだ⁉︎ しかも予選通過1位の緑谷くんと!』
「緑谷って…アイツか」
心操くんは緑谷くんに近付くと、何かを話している様子だった。
けれど、緑谷くんが答えようとした瞬間、さっきの棄権した人に尻尾で口を塞がれる。
…もしかして、心操くんの洗脳を警戒してる?
私も心操くんの言葉に反応した瞬間、洗脳に掛かったから…恐らくそういうカラクリなんだ。
心操くんも諦めた様子で、すぐにその場を離れる。
私は今の様子が気になったので、心操くんの元へと駆け寄った。
『心操くん!……もしかして今、洗脳掛けようとしたの?』
「あわよくば…な。けど、さすがにクラスの奴に警戒されてる。恐らくネタは割れたな」
『えっ…それってキツくない?初見殺し通じなくなっちゃうよ?』
…かなりの痛手だと思うけど…。
「まぁ、そこは何とか誘導して口開かせるよ。ここで焦ったってしょうがないし」
冷静沈着な態度で話す心操くんを見てると、凄いなって思う。
本当に何とかなるんじゃないかって気さえしてくる。
…というか、心操くんならきっと大丈夫だと思った。
『心操くん』
「?」
私の呼びかけに振り返る心操くんに、私は握った右手の拳を前へと突き出した。
『応援してるよっ!』
「!」
そう言ってニカッと笑うと、心操くんは一瞬驚いた顔をして、すぐにフッと表情を緩めた。
「…あぁ。絶対、勝つ」
コツン、と心操くんの握った拳が私の拳を小突く。
それが何だか相棒みたいで嬉しくて、くすぐったい気持ちになった…。
《よーしそれじゃあトーナメントはひとまず置いといて、イッツ束の間!楽しく遊ぶぞレクリエーション!》
心操くんとはその場で別れ、私はクラスの人達とレクリエーションに参加し、それぞれみんな思いのままに時を過ごしたーー。
ーーそして…。
《ヘイガイズ!アァユゥレディ⁉︎色々やってきましたが!!結局これだぜ、ガチンコ勝負!!》
ーーとうとう、体育祭のメインがやって来た!
《1回戦!!成績の割に何だその顔⁉︎ ヒーロー科、緑谷出久!!
『頑張れ、心操くん…!』
2人はリングに上がると、お互いに顔を見合わせる。
2人から負けたくないと言う強い想いが、遠くからでも感じ取れた。
《ルールは簡単!相手を場外に落とすか、行動不能にする!あとは「まいった」とか言わせても勝ちのガチンコだ!!》
『…心操くん…何か喋ってる…?』
マイク先生がルールを説明している間、心操くんは緑谷くんに何かを話しているみたいだった。
大人しくそれを聞いている緑谷くんの表情が、どんどん曇って行く。
…何の話しをしてるんだろう?
《ーーそんじゃ、早速始めよか!!レディィィィイSTART!!》
「何てこと言うんだ!!」
『⁉︎』
緑谷くんは、開始の掛け声と共に、怒りをあらわにしながら心操くんへと駆け出して行きそして、突然体を停止させた。
ーー心操くんの洗脳が掛かった⁉︎
《オイオイどうした、大事な
緑谷くんは、恐らく心操くんからの指示で、くるりと背を向けると、リングから出て行こうとする。
『…凄い……瞬殺だ…』
心操くんの洗脳…最強過ぎる…!
私なら分かってても、うっかり誘導されて喋っちゃいそう…。
……なにはともあれーー。
『心操くんの、勝ちだ…!』
ーーそう確信した瞬間だった。