第6話
お名前は?
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『あれ…?轟くんは…』
食堂に着いた私は、いつも待ち合わせする場所に向かうも、そこに轟くんの姿はなかった。
目立つ髪色を探そうと、ぐるりと辺りを見渡しても、それらしき人は見当たらない。
『まだ来てないのかな…?』
疑問に思いながらも、私は自分の分の学食を頼み、空いている席に座る。
今日はやっぱり混んでるなぁ……。
いっぱいになる前に、轟くんの分も用意してあげようかな?
私はまた席から立ち上がると、轟くんの好きなざる蕎麦を注文した。
轟くんはいつもざる蕎麦しか食べないから、今日もきっとそうだと思ったから。
用意したざる蕎麦を持って席に戻り、しばらく待っていると、見知った人物と目が合った。
その人物も、私に気付くと「おぉー!」と軽く手を振って近付いて来る。
その人物とはーー…。
「よっ!久しぶりじゃん。…アレ?今日は1人なん?」
それは、前に食堂で声を掛けて来たチャラ男くんだった。
『久しぶりです。轟くん…まだ来てないみたいで…』
あまりちゃんと話した事なかったから、
ちょっと緊張するな…。
「女の子待たせるなんて、アイツも罪な男だねぇ〜。…あ、そういや自己紹介まだだったよな?俺は上鳴電気。よろしくね〜」
そう言うと、上鳴くんは人懐っこい笑みを浮かべた。
『私は苗字名前です。よろしくお願いします』
「あぁ〜、そういう堅苦しいカンジ俺苦手だから、もっとラフに行こうぜ?同い年でしょ」
『そ、そうだね…』
…は、初めて絡むタイプの人だ…。
凄い気さくな人なんだなぁ…。
いや、馴れ馴れしいの方が合ってる?
「ーーところでさ…」
上鳴くんは区切る様にそう言うと、私の耳元にコソッと耳打ちする。
「轟とはどういう関係…?」
『えっ⁉︎』
予想外の一言に、私の心臓がドキリと跳ねる。
以前も同じ様な事を言われた気がする。
どうしてまた…?
『わ、私たちは幼馴染みだよ?』
そう言うと、上鳴くんは「そうなんだろうけどさぁ!」と納得しない様子で言葉を続ける。
「…なーんか腑に落ちねぇっつーの?どう見ても轟は、苗字の事好きなんじゃないのか…てさ?思うわけよ」
『えっ⁉︎』
ーーバ…バレてるッ⁉︎
……いや、轟くんの様子を見たらきっと誰でも分かる気がする。
私と、私以外の人に向ける眼差し。
どうして轟くんは、あそこまで冷たい目を他人に向けるんだろう…?
「…おっ?やっぱそうなん⁉もしかして告られた⁉︎」
私が何も言わないのを見て、上鳴くんは身を乗り出し、興奮した様子で聞いてくる。
「なぁなぁ!本当は付き合ってんだろ⁉︎」
『いやっ…付き合っては…』
「隠す必要ないじゃーん!教えてよ〜」
『ほ、本当にちがッ…!』
「ーー何してる…」
上鳴くんからの質問攻めに戸惑っていると、低く…冷たい声が耳に届いた。
声のした方を見ると、怒りを含んだ眼差しで上鳴くんを睨み付ける轟くんがいた。
『と…轟くん…』
「ひぃぃ⁉︎ ……またかよこの状況ッ…!」
怯えた顔した上鳴くんは、かなり焦った様子で轟くんに説明する。
「違うぞ轟⁉︎ ナンパじゃなくて、たまたま見かけて声かけただけだから!…なっ⁉︎ そうだよな⁉︎」
『えっ…⁉︎』
"そうだと言って!"…と、必死に訴え掛けてくる様な眼差しで見つめられ、取り敢えず話しを合わせる。
『う、うん。偶然さっき見かけたから、ちょっと話してて…』
「そうそう!そういう事だからさ!」
その様子をじっと見ていた轟くんは、上鳴くんを睨みながら低く唸る。
「…なら、用は済んだかよ?」
「済んだ済んだッ!!もう思い残す事なく逝ける!!じゃな苗字!!」
『あ、また…ね』
私の返事は聞かずに、上鳴くんは一目散にその場から去って行った。
上鳴くん……何か、