第6話
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『あぁ〜!悔しぃーー!!』
私は今、C組の観覧席へと足を運んでいた。
『…心操くんめ……』
結局あの後ーー。
私はコースを走って来た誰かにぶつかった瞬間、意識を取り戻した。
その後、急いでゴールまで走ったけど、結局順位は圏外となり予選敗退ーー…。
ちなみに1位緑谷くん、2位轟くん、3位爆豪さんという結果になった。
上位3名に至っては文句の付けようがない。
けれど…。
心操くんが27位というのは、多分あのまま洗脳にかからなければ、私が取れていたかもしれない順位…。
『……洗脳なんて…ズルイよ……』
心操くんの戦略にハマってしまったのは私だけど、もう少しで掴めたチャンスを逃してしまった事が、たまらなく悔しかった。
沈んだ気持ちを抱えたまま、私は観覧席へと戻る。
すると、私に気付いたクラスの人達が、興奮した様子で近付いて来るのが見えた。
「苗字さん!凄かったよ!」
『えっ…?』
「うん!仮想敵の所とか、結構目立ってたよ⁉︎カッコ良かった!」
『ほっ…本当…⁉︎』
激励の言葉をくれるクラスの人達に、先程までの暗い気持ちが吹っ飛んで行く気がした。
「今までちょっと変わった子なのかな?って思ってたけど、かなり印象変わった!ヒーロー科編入目指してるんだね⁉︎ 頑張って!」
『うっ…うん!ありがとう!』
ーーやっぱり変な子って思われてたんだッ⁉︎
……そんなこんなで、私の体育祭への挑戦は結果には残せなかったかもしれないけど、観てくれた人の記憶には残った形となった。
第一種目が終わり、続いて第二種目の"騎馬戦"もとても白熱した物となった。
私は観覧席からその様子を眺め、みんなが必死にポイントを奪い合う光景を、始終興奮して観ていた。
特に緑谷くんと轟くんの戦略のやり合いには、目が離せなかった。
そして着実にポイントを奪い取って行く心操くんにも、ライバルながらも感心させられっぱなしだった。
こうして
《1時間程昼休憩挟んでから午後の部だぜ!じゃあな!!!…オイ、イレイザーヘッド、飯行こうぜ…!》
『ふぅ〜…午前の部凄かったなぁ〜…』
やっぱりヒーロー科の人達は観ていて興奮しちゃったな〜。
目指すべき人達なんだけど、やっぱり一味違う!
個性も使い慣れてるし!
私も早くみんなと一緒に学びたいな。
『…の前に、まずはヒーロー科編入が先なんだけど…』
「何さっきからぶつぶつ言ってんの?」
『うぁっ⁉︎心操くん!いつの間に…⁉︎』
「今だよ、イマ。何回やるんだよこのくだり…」
呆れた様に頭をポリポリ掻きながら、心操くんは観覧席へと戻って来ると私の隣に座った。
『…あれ?今からお昼休憩だよ?控え室行かないの?』
荷物類は全部控え室にあるのに…。
「……………それよりーー」
『⁉︎』
ーー露骨に話し逸らされたッ⁉︎
「惜しかったな、障害物競走」
『ーー!、惜しかったなって…心操くんのせいで予選敗退しちゃったんだけど⁉︎』
何で他人事のように話せるの⁉︎
「まぁ結果そうだけど、正直苗字があそこまで実力発揮してくると思ってなかったから、俺も焦ってつい、な…?」
心操くんはいつもの意地悪そうな顔ではなく、少し困った様な顔でそう言うから、本心で言ってくれてような気がした。
『……驚異に感じたってこと?』
「まぁ、そんなとこ」
……そうなんだ。
あの時は、私を
『ありがとう…。私も、心操くんがあんなに強力な個性だったなんてビックリしたよ!それに、騎馬戦も見事3位だったし、ヒーロー科に劣ってないなんて凄いと思う!』
「…苗字…」
『……悔しいけど、やっぱり心操くんは強い!絶対、ヒーローになるべく人だよ!』
「ーーっ…」
私の言葉に心操くんは一瞬目を見開くと、すぐに顔を伏せて、少し恥ずかしそうに…けれど嬉しそうな顔をしてくれた。
「………ありがと」
『ふふっ…。どういたしまして』
それが何だか嬉しくて、私も自然と笑みが
「……腹減ったな」
照れ臭くなったのか、心操くんは取り繕うように話しを切り出す。
『あ、そうだ!早くお昼休憩取らないと』
「……あのさ」
『ん?』
呼びかけに顔を向けると、何故か心操くんは頬を少し赤らめながら、視線を彷徨わせていた。
「……ついでだし、一緒に…食う…?」
『えっ…?』
まさかの心操くんからのお誘いに驚いていると、私の反応を見た心操くんは急に焦り出す。
「いや、ついでだから…!どうせお前も控え室行くだろ?」
『あ、えっと……私…今日轟くんと食堂行く約束しちゃってて。だから、その…ごめんね?』
そう言うと、心操くんはピクリと表情を強張らせる。
そして段々眉を吊り上がらせると、凄く不機嫌そうな顔で私を見た。
「別に……こっちもついでで誘っただけだから。待たせてるんじゃねぇの?……早く行けば?」
『うっ…うん…、ごめん!』
そう言い残して、私は急いでその場を離れた。
心操くん、ちょっと怒ってた…?
仕方ないとは言え、何か申し訳ない事しちゃったな…。
今度また私から誘ってあげよう。
罪悪感を抱きながら、私は食堂へと向かった。