第6話
お名前は?
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「さーてそれじゃあ早速、第一種目行きましょう!」
ミッドナイト先生がそう言うと、突如巨大なスクリーン映像が空間にヴンッ、と映し出される。
「運命の第一種目はコレ!」と映し出された文字は…
ーーー"障害物競走"だった。
ざっと受けた説明は、計11クラスによる総当たりレースで、コースはスタジアムの外周約4km。
コースさえ守れば"何をしたって"構わないと言うものだった。
「さぁさぁ位置につきまくりなさい!」
重厚感のある巨大なゲートの入り口前にみんな並ぶと、そのゲート上に埋め込まれた信号機の様なランプが点灯する。
…あれが、スタートの合図。
『……フゥー…』
私は最後に深呼吸をして、意識を集中させる。
……大丈夫、落ち着いて。
4kmなら普段トレーニングで鍛えてたし、
距離的には問題ない。
問題は、コースさえ守れば"何でもあり"と言う事!
個性をうまく使っていかないと、きっと予選通過は無理だ…!
「…なら、体育祭で証明してみろや。俺が必ずブッ潰したるからよォ…」
ふと、頭の中で、爆豪さんに言われた言葉を思い出した。
……戦う事以外でも出来る事はたくさんあるって所、
見せてやるんだ!この…体育祭で!!
「スターーート!!」
3つ目のランプが消えたと同時にミッドナイト先生の声が響き渡り、その場のみんなが一斉にスタート地点から走り出す。
まずは、このゲートをくぐり抜けてーー…
『いたたたたっ!』
…とはいかず。
全員一斉に走り出したため、ゲートの中はすし詰め状態になっていた。
みんな前に進もうとしてるのに、全くその場から進まない。
初っ端からこんなつまずくなんて…!
一体どうすれば⁉︎
…と、いうよりーー。
『……さむっ!』
突然、足元から凍えるくらいの冷気が吹き抜ける。
何事かと思った瞬間、地面が氷結で覆われ、そのまま足元もパキパキと氷で固められてしまった。
『なに、これ⁉︎』
誰かの個性⁉︎
う、動けない…!
「ってぇー!!何だ凍った!!動けん!!」
周りの人達も同じ状況で、嘆きの声が聞こえてくる。
一体…誰がこんな個性を…!
ふと顔を上げると、前方に見慣れ髪色の人物が先頭を走り抜けて行くのが見えた。
『ーー轟くん⁉︎』
それは紛れもなく轟くんで、地面を凍らせながら、いの一番に走り抜けて行く。
この個性って轟くんの個性だったんだ⁉︎
…つ、強過ぎない?
さすが推薦入学者…!
「そう上手く行かせねぇよ半分野郎!!」
『!』
爆豪さんの威勢の良い声が聞こえ顔を上げると、私たちの頭上を両手の爆発で軽々と飛び超え、轟くんの後を追いかけて行く。
その他にも何人かのヒーロー科の人達が、自力で氷の足止めを打ち破り、轟くんの後に続いて行くのが見えた。
『みんな…スゴイ…!』
さすがヒーロー科…!
私たち他の科は手も足も出ない。
ーーけれど……私だって、負けたくない!!
私は凍った足に手を這わせ、意識を集中させる。
『足を…修復!』
その瞬間、足に固まっていた氷がパリン!と音を鳴らして粉々に砕け散った。
『よしっ!』
私は自由になった足を動かし、動けなくなっている他の人達を避けてコースを走り抜ける。
少し出遅れたけど、それでもヒーロー科のすぐ後を追いかける形だ。
まだまだチャンスはある!
走り続けていた途中、ぶどう頭の小さな男の人が地面を転がって行くのが見えた。
ーーなっ、何今のッ⁉︎
驚いて思わず二度見していると、前方から巨大な物体の影が姿を現した。
『あれは…!』
入試の時の仮想敵ッ⁉︎
なんで、あんな物が…!
《さぁいきなり障害物だ!!まずは手始め…第一関門、ロボ・インフェルノ!!》
あれが障害物⁉︎
よりによって仮装敵なんて…!
嫌な思い出しかないよ!
心の中で嘆いていると、また周りを冷気が漂った。
ハッと前を見ると、轟くんが右腕を下から上へとなぎ払う様に振り
すると、轟くんの意思を継いだかの様に、氷結が仮想敵の足元からてっぺんまでを素早く凍らせた。
『……す、凄い…』
圧倒的強さ。本当にヒーロー向きの、バリバリ戦闘力高めの個性だ。
私…こんな凄い人と、いつも一緒にいたんだ…。
なんて、呑気な事を考えている間に、轟くんは凍って隙間が出来た通り道を走り抜けて行く。
「あいつが止めたぞ!!あの隙間だ!通れる!」
その様子を見ていた他の科の人達が轟くんの後に続こうとすると、それに気付いた轟くんが通ろうとした人達に向かって言い放つ。
「やめとけ。不安定な体勢ん時に凍らしたから
ーーー倒れるぞ」
言い終わると同時に、凍らせた仮想敵がゆっくり倒れ、大きな地響きを立てて崩れた。
《1-A轟!!攻略と妨害を1度に!!こいつぁシヴィー!!!すげえな!!一抜けだ!!アレだな、もうなんか…ズリィな!!》
『いや、ほんと…ズリィですよ…』
私には絶対無理なこと。本当に羨ましい。
…でも、だからって諦めちゃいけない!
もう二度と諦めないって決めたんだ!
「取り敢えず俺らは一時協力して、道
ヒーロー科が仮想敵を難なく倒して行く中、それに便乗して私も後に続く。
追い越すのは無理かもしれないけど、ライバルは少しでもーーー…削れた方が、良い!!
私は今し方倒した仮想敵に触れる。
『……動けッ!』
念じた瞬間、倒れた仮想敵が起き上がる。
ターゲットになる前にすぐにその場から離れた。
『動け!……こっちも!』
コースに倒れた仮想敵達を片っ端から修復して行く。
次々と起き上がる仮想敵の姿に、みんながギョッとするのが見えた。
「なっ⁉︎オイ、また動き出したぞ⁉︎」
「ヤバイ!ヒーロー科もう何人か先行っちまってるよ!どうやって倒すよ⁉︎」
焦るみんなの姿にちょっと心が傷んだが、予選を勝ち抜くためには致し方無い。
私は心を鬼にしながらその場を後にした。
「へぇ…?やるじゃん、苗字…」
心操はそんな名前の姿を面白そうに見つめ、不敵に笑っていた。
時を同じくして、実況室のマイクと相澤は、モニターに映し出されたその様子を眺めていた。
《何だぁ⁉︎せっかく倒したのにまた起き上がっちまったぞ⁉︎一体誰が…ンあ?あれは…!!》
モニターにアップで映されたのは、倒れた仮想敵に触れて修復している名前の姿だった。
「アイツは確か、普通科の……」
《バッドガールじゃねぇか!!これはまさかのダークホース登場かぁ⁉︎⁉︎》
盛り上がるマイクと相反して、相澤はじっとその様子を見つめ、静かに呟く。
「……苗字…アイツの個性、もしかしたら相当強力かもしれんな…」
《えっ?そうなの?》
「…つくづく、あの試験は合理性に欠ける」