第4話
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『ーーてな感じで、ヒーロー科試験は私のトラウマになっちゃったんだよねっ!』
ははっ、と笑ってごまかしたけど、心操くんは茶化す事なく真剣な表情で話しを聞いてくれた。
「…なんだソイツ。ムカつくな。ホントにヒーロー科志望かよ」
『私が見た限りでも、その人が1番ポイント稼いでたし、多分ヒーロー科受かってるんじゃないかな…?』
言動や雰囲気は確かにヒーローらしくはないけど、戦闘におけるスキルやセンスは確実に群を抜いてたもんね…。
「そんな奴がヒーロー科にいるのか…。雄英襲撃事件もほぼ全員無傷らしいしな………」
心操くんは俯き加減に考え込むような仕草をすると、何かを決意した眼差しで私を見る。
「よし、放課後ヒーロー科行くぞ」
『…えぇっ⁉︎ な、何でッ⁉︎』
「何だよ。ヒーロー本気で目指すんじゃなかったのか?俺らのライバルがどんなもんか見に行ってやろうぜ」
心操くんはそう言って挑発的な目線を私に送るけど、その瞳の奥には静かな闘志が燃えているように見えた。
『……分かったよ。一緒に行く』
そんなこんなで、私たちは突如ヒーロー科に放課後突撃する事となったーー…。
ーーー✴︎✴︎✴︎
『ほ…本当に今から行くんだよね?』
約束した放課後となり、私たちはヒーロー科へと向かうため、廊下を歩いていた。
「ずいぶん弱気だな?別に喧嘩しに行くわけじゃないんだし、怖気付くなよ」
『お、怖気付いてないよ!大丈夫っ!さぁ、ヒーロー科がどんなに凄いのか見に行っちゃおう!』
「……お前、ホント下手だな、嘘」
『ーーん? 心操くん、あれ…』
「?」
指差した方向には、"1-A“と書かれた教室の前に大勢の人だかりが出来ている。
そこは私たちが出向こうとしていたヒーロー科の教室だった。
『えっ…!私たちの他にもこんなにいっぱい人が集まってるの⁉︎』
「……考える事は同じってか」
周囲に圧倒されていると、前方から素っ頓狂な声が聞こえて来た。
「何ごとだあ!!!?」
声のした方を見ると、茶髪のボブヘアの女の子が周りの光景にビックリした様子で驚いている。
「出れねーじゃん!何しに来たんだよ」
「敵情視察だろ、ザコ」
ーーこの声は…!!
聞き覚えのある声がした。
耳に届いた瞬間、ドクンッと心臓が脈打つ。
よみがえるトラウマ。
そこにいた人物はーー……
「敵の襲撃を耐え抜いた連中だもんな。
トラウマを植え付けられてしまった、今1番会いたくない人だった…。
「意味ねェからどけ、モブ共」
ギロリと周囲を睨みつけるその目が、恐怖と威圧感を植え付ける。初めて会った時からこの目が少し苦手だった。
ーーいつかは会うかもしれないって思ってたけど、まさかそれが今日だなんて…!
恐怖を感じているのは私だけじゃないみたいで、みんな怖気付いているのか、さっきより全員一歩下がってるような…。
『ーーぇっ…?』
…と思っていたら、相反する様に隣にいた心操くんが一歩前へと踏み込んで行くのが目に入った。
「どんなもんかと見に来たが、ずいぶん偉そうだなぁ。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?」
「あぁ⁉︎」
『ちょっ…心操くーー』
私が止めに入るよりも早く、心操くんはどんどん集団を掻き分けて前に進んで行き、ついには1番先頭へと抜け出してしまった。
「こういうの見ちゃうと、ちょっと幻滅するなぁ」
ちょっと何してんの心操くん〜⁉︎
喧嘩しに行くわけじゃないって、さっき言ったばかりじゃんっ!!
しかも、めちゃくちゃ煽ってる…!
「普通科とか他の科って、ヒーロー科落ちたから入ったって奴けっこういるんだ。知ってた?」
粗暴な人は心操くんの言葉が初耳だったのか少し意外そうな顔をする。
「体育祭のリザルトによっちゃ、ヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もまた
先程の担任の先生が言っていた言葉を、心操くんはヒーロー科に淡々と浴びせる。
「敵情視察?少なくとも俺は、調子のってっと足元ゴッソリ
心操くんの発言に、ヒーロー科の生徒たちがギョッと固まるのが分かった。
うわぁ〜!
大胆不敵すぎるよ!心操くんっ!
「隣のB組のモンだけどよぅ!!」
『ーー⁉︎』
今度は群衆から勇み良い声が聞こえ、驚いて声の出どころを探すと、左手を高々と上げながら存在をアピールする人物がいた。
「敵と戦ったっつうから、話聞こうと思ってたんだがよぅ!!エラく調子づいちゃってんなオイ!!!」
また凄い大胆不敵な人っ⁉︎
みんな言いたい事ハッキリ言えて凄いな…!
…いや、これが本気でプロヒーローを目指している人たちの意思の強さなの…?
「ーー関係ねぇよ……」
『…!』
「上にあがりゃ、関係ねぇ」
てっきり…こんなに煽られてるんだから、もっと感情的になって言い返すのかと思っていたら、意外にも粗暴な人は静かに……けど、反論できない絶対的王者の様な気迫が感じられた。
……確かに。
何言われたって、結局は結果が全て。
文句があるなら結果を残せ…って事かな?
何だか、あの人らしい。
「オイお前ッ!」
『…えっ?』
物思いにふけていると、いつの間にか集団を掻き分けて来た粗暴な人が、私の目前で仁王立ちになっていた。
「通行の邪魔なんだよ、どけ」
『ヒィッ⁉︎ す、すすすみませんっ!!』
恐怖で顔が引きつりながらも、すぐにその場をどくと、チッと舌打ちされる。
キツく睨み付けてくるその瞳が私を映すと、一瞬……瞳が揺らいだ気がした。
「……てめェは……どっかで見た顔だな」