第4話
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次の日、臨時休校が明け、私たちはまた通常の学校生活に戻ろうとしていたーーー。
「昨日のニュース見た⁉︎ワイドショーずっと雄英の事件取り上げてたよな!」
「見た見た!ヒーロー科もちょい映ってたよな?羨ましい〜!」
クラスは朝から雄英襲撃事件について盛り上がっていた。もちろん、私も昨日のニュースの事は知っている。
……ヒーロー科、みんな強そうな人たちだったな。私と同じ1年なのに、堂々と敵と戦えるなんて凄いよ。
けど、これからはそれで終わりじゃない!
私もヒーロー科に追い付ける様に頑張らないといけないんだ!
『よぉーし……頑張るぞ!』
「何を?」
『うわぁっ⁉︎ し、しし心操くんッ⁉︎いつの間に…⁉︎』
隣には、いつの間にか心操くんが席に着いて鞄を降ろしている所だった。
心操くんは私の言葉に目を細める。
「今だよ、イマ。いちいち驚き方がオーバーだな」
『だ…だって、急に現れるから…』
「急じゃねぇよ。普通に来たし。お前が気付いてないだけだ」
『ごっ…ごめん』
「……別に謝んなくていいけど」
そう言って心操くんは席に着くと、私の視線が気になるのか、チラリと顔だけ向けて眉をひそめる。
「…何?」
『えっ…、あ、ううん!今日は普通だなって思って』
「はっ?」
『……一昨日、何か機嫌悪そうだったから、私嫌われちゃったのかなって、思って…』
そう言うと、心操くんはバツが悪そうな顔をし、言いにくそうに話し始めた。
「アレは……、悪かった。別に苗字が悪いとか、そんなんじゃないから気にすんな」
『そっか…!良かったぁ〜。それ聞いて安心したよ。嫌われたらどうしようかと思っちゃった』
「……っ!」
ホッとして思わず笑みが溢れると、何故か心操くんは頬を赤らめ、私から視線を逸らすと取り繕う様に口を開く。
「そ、それより…さっきの“頑張る”って何の事だよ?」
『えっ…?……あぁ、あれはーーー』
そうだ。
心操くんにも言わなきゃいけない。
ヒーローを目指すきっかけを思い出させてくれた人だから…!
『ーー私ね、一昨日心操くんにヒーローを諦めた話しをした時に、気付かされた事があるの…』
「…?」
『私が“ヒーロー向きの個性じゃない"って言ったら、“お前にはお前のやり方がある”って…言ってくれたよね?』
ーーそう、例え戦えなくたって…!
『だから、戦う事以外にもヒーロー活動は出来るんだって思った。私は、救える命があるなら、全力でそれを守りたい!』
ーーそれが私の“
『だから、もう二度と諦めたりなんかしない…!私も、もう一度…、ヒーローになりたいんだって!』
「……」
『きっかけに…気付かせてくれて、ありがとう…!』
私の話しを黙って聞いていた心操くんは、それまで無表情だった口元に、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「ーーーなら、今日から俺たちは”ライバル”だな」
『ーー!!』
挑発的なその目や言葉に、私の中で静かな闘志が燃える。
『…うんっ!絶対、負けないよ!』
「俺だって、お前より立派にヒーローやってやる」
お互い、譲れないヒーローへの熱い想い。
高め合う事のできる存在が側にいるというのは、こんなにも向上心が掻き立てられるんだと知ったーー。
ーーー✴︎✴︎✴︎
「ーーで、もうすぐ雄英体育祭があるわけだが……例年通り遂行するとの事だ。まぁ、警備は通常の5倍らしいがな」
私たちは今、担任から2週間後に開催される雄英の最大イベント“体育祭”についての説明を受けていた。
とうとう来た…!
ずっとテレビで見ていた雄英体育祭に出場出来るなんて……感慨深いなぁ…。
「知っての通り、体育祭は大勢のプロヒーロー達も観に来る!いい成績を残せばサイドキック入りも夢じゃないぞー。もちろん、普通科だからって手を抜くんじゃないぞ?成績次第では、ヒーロー科編入もありえるからな!」
ーーーーーーーーえっ?
「まぁ、皆んな知ってるとは思うがな。一応言っとかないと、たまに知らない奴いるから」
ーーーーそれ私の事だぁぁ〜〜〜!!!
キーンコーンカーンコーン…。
私の心の叫びを打ち消すように、昼休みのチャイムが虚しく鳴った。
「ヒーロー科編入とかマジ夢の話しだな」
「体育祭でよっぽど活躍しないと無理だろ〜」
などと話すクラスの男子たちを横目に、私は鞄からお弁当を取り出す。
…まさか、知らなかったの私だけなのかな?
どうしよう…。完全にアウェイだ…。
「……今日は食堂じゃないんだな」
『えっ?…あぁ、うん。今日はお弁当作ってきたから』
心操くんは私のお弁当をチラリと眺めると、そのまま私に顔を向ける。
「…アイツは知ってんの?」
『それは大丈夫。朝にメールしといたから』
「フーーン………あっそ」
何となく素っ気ない反応に違和感を抱きながらも、私は先程の先生の言葉を口にする。
『さっきのさ、ヒーロー科編入の話しって…心操くん知ってた…?』
「当然だろ」
『だっ、だよねー!ハハッ、知らない方がおかしいよねぇ⁉︎』
「……お前、まさか……」
けど勘の良い心操くんにはすぐにバレる訳で…かなりドン引きしたご様子。
『……その、まさかです……』
「……」
『……』
「前から鈍間な奴だとは思ってたが…まさかここまでバカだったとはな」
『前から思ってたんだッ⁉︎ ショック!』
「何も知らないでよく普通科受けたな…」
かなり呆れた顔をされたけれど、心操くんは何か考え込む様に沈黙すると、少し首を傾げた。
「苗字の個性って“修復”だったよな…?」
『そ、そうだけど…?』
「…試験はロボットの破壊ポイントだけじゃなかった。お前の個性だったらレスキューポイントで充分稼げたハズだろ。個性使わなかったのか?」
『…!』
さすが心操くん。
洞察力と記憶力も抜群なんだね。
そう…。
私も助けようと思ってたよ。
でもーー…。
『ーー使おうと、したんだけどね……』
「?」
『実はーー』
あの日の苦い記憶がよみがえってくるーーー。
ヒーローになろうと純粋な気持ちで挑んでいたあの日、一体何が起きたのかを……。