第4話
お名前は?
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あれ……?
ここ…どこだろう…?
意識がぼぅっとしてる。
体もふわふわ浮いてるみたいだ。
すごく気持ちいい…。
「うぅっ……、ぐすっ…」
誰かが泣いてる声がする。
いったいどこから…?
誰が泣いてるの…?
だんだんと意識が鮮明になってくる。
ボヤけたカメラのレンズの焦点が合う様に、周りの景色が鮮明に見えてきた。
『…えっ……。ここって…』
私、何で公園にいるの⁉︎
てか、私の体浮いてるッ⁉︎⁉︎
本当に体がプカプカ浮いていた。
公園の木と同じ高さくらいまで体が浮かんでいる。
ま、まままさか、新しい個性が発動しちゃったッ⁉︎
私、複数の個性持ちだったのーー⁉︎
「うっ…ヒック…」
声のする方へと顔を向けると、木陰にうずくまる見覚えのある人物が目に飛び込んできた。
ーー⁉︎
あれって……もしかして、轟くん⁉︎
えっ、でも体が小さい…?
『どうしたの?』
「…!」
困惑していると、轟くんの目の前に同い年くらいの女の子が姿を現した。
轟くんも驚いた様子で女の子を見上げる。
『ビックリさせてごめんね?私は名前。あなたの名前は?』
「ぼくは…轟 焦凍…」
ーーあぁ…そうか…。
ーーこれは、私の中に眠ってる記憶なんだ。
そう確信した瞬間、やけに腑に落ちた。
『焦凍くん?カッコイイ名前だね!』
「あ…ありがとう…」
そうか…。
これが私たちの初めての出会いだったんだ。
『怪我してるの?私が治してあげるよ!手、貸して』
「えっ…?」
有無を言わさず、青痣になっていた轟くんの手を掴むと、淡い光が轟くんの手を包み込む。手を離すと痣は綺麗に消えていた。
『はいっ!もう大丈夫だよ』
「うわぁ……すごい!魔法みたい」
轟くんは治った手を空にかざしながら、キラキラした表情で喜んでいた。
嬉しそう…轟くん。
「…昔からそうだった。お前は、目の前で傷ついた人がいたらほっとけなくて、こうやって俺に優しく触れて癒してくれる」
初めて会った時から、轟くんに個性使ってあげてたんだ…。
2人は楽しそうに公園の遊具で遊んだり、追いかけっこしたりして遊んでいる。
私はしばらくそれを眺めていた。
心があったかくなるのに、なんだか切なかった。
「また、遊んでくれる…?」
『うん!もちろんだよ!今日から焦凍くんは私のお友達だよ』
「…っ!…ありがとうっ」
嬉しそうに笑う轟くん。
すると突然空間が眩しい光に包まれ、思わず目を瞑る。
次に目を開けた時は、2人で公園のベンチに座っていた。
……さっきとまた違う時…?
最初には無かったガーゼが轟くんの頬に貼り付いている。さっきまでの楽しそうな表情から一変、その顔は何故か悲しげだった。
『どうしていつも怪我してるの?』
「……ヒーローになるために、お父さんに特訓してもらってるんだ」
『お父さん、厳しいんだね』
「…ヒーローなんだ。ぼくのお父さん」
えっ…⁉︎そうなんだ!
そんな事、轟くん1度もーー…。
『そうなんだ!すごいね⁉︎』
「でも、ぼくはお父さんみたいなヒーローにはなりたくない…っ!」
『……お父さんのこと、嫌いなの?』
「大ッ嫌いだ!あんな奴、ヒーローなんかじゃない!」
その叫びは、怒りとか、憎しみとか、悲しさとか色んな感情が入り混じっているようだった…。
轟くん……。
お父さんとの間に、一体何があったんだろ…
『…じゃあ焦凍くんは、どんなヒーローになりたいの?』
幼い私は、ただ純粋にそう聞いていた。
轟くんも私の質問にうーんと考え込むと、固く何かを決意した眼差しで私をみる。
「ぼくは……自分の力で大事な人を守って、悪い奴らから救い出す、強いヒーローになりたい!」
なれるよ…。
轟くんなら、きっと…。
『焦凍くん頑張ってるから、絶対ヒーローになれるよ!』
「ありがとう…。名前ちゃんは、ヒーローにはならないの?」
『…アハハッ、私の力じゃヒーローにはなれないよ!』
幼い私は一瞬目を丸くして驚くと、すぐに吹き出して笑いながらそう言った。
ーー!!
……これって、前に轟くんが食堂で話してくれた事なんじゃ…。
「昔名前に聞いたことあったんだ。"ヒーローになりたくないのか?”って」
『そうなんだ…! 私、何て言ってた?』
「"私の力じゃヒーローにはなれない”って笑ってた。だから、何でヒーローを目指したのか気になったんだ」
そうだ…。
私、もうこの時から戦えないこと分かってて
諦めてたんだ…。
こんな小さい時から現実見えてたんだなぁ、私…。
「なれるよ!ヒーロー!」
『えっ…?』
見ていた私も、幼い私と同じ反応をしていた。轟くんは両手の拳を握りしめ、興奮した様子で力強く言葉を続けてくれる。
「ぼく、今までいっぱい怪我治してもらったし、名前ちゃんなら絶対みんなを助けられるヒーローになれるよ!だから諦めないでよ!」
ーー轟くん……。
小さな体で必死に応援してくれる轟くんの姿に胸を打たれる。
私が1番誰かに言って欲しかった言葉を、こんな前から轟くんは訴えかけてくれてたんだ。
ーーどうして、こんな大事な事を今まで忘れていたんだろう…。
『…ありがとう。じゃあもし私がヒーローになれたら、私は戦えないから…焦凍くん、
ーーー私とチーム組んでくれる?』
轟くんが答えるより早く、またその場の空間が光に包まれる。
わっ…!
また…⁉︎ 眩しい…っ!
「…うんっ!任せて!」
眩しさに目を細めていると、光の中で轟くんの声だけが頭の中で響いた。
「ぼくが名前ちゃんを守るよ」
『ーーーーハァッ…!…っ、』
目を開くと、次に目に映ったのは自分の部屋の天井だった。ゆっくり起き上がると、手に布団の感触と窓から差し込む日差しの暖かさが五感に伝わる。
……ここは、現実世界?
まだ夢と現実の区別がハッキリしなかったが、体も浮いてないし、手に伝わる布団の感触のリアルさに段々と冷静さを取り戻す。
『ーー夢…だったの…?』
妙にリアルな夢だった気がする。
というか、夢というより……昔の記憶を見たというべきなのか…。
『あれは、本当にあった事だったのかな…?』
気になった私は、1番この事に詳しい人物にメールを送る事にした。