第3話
お名前は?
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「名前…? どうした、顔色悪いぞ?」
『ーー!…っ、…大丈夫、何でもないよ。それより、轟くんが無事で良かった。どこも怪我とかしてない?』
「あ、あぁ…。かすり傷程度だ」
話を露骨に逸らしたからか、轟くんは訝しげに返事をしながらも、手の甲にあるかすり傷を見せてくれた。
『あ、待って…』
「!」
降ろそうとした手を両手で掴み、そのまま手の平を包み込むように優しく重ねた。
私の突然の行動にビックリしたのか、ピクリと轟くんの肩が小さく跳ねる。
『私の個性、使うね?』
そう。私の個性は"修復"だ。生物や物質、全ての物を元通りにすることが出来る。
私の手から淡い色の光が灯り、轟くんの手を覆う。
触れてからものの数秒で傷は綺麗に塞がった。
『はい!傷浅いからすぐに治っちゃった』
にこりと笑いながら轟くんの手を離そうとすると、今度は逆に私の手が轟くんに掴まれる。
『えっ…?と、轟くん…⁉︎』
突然の行動にビックリして轟くんを見ると、
手を握られる距離にいるせいで、いつもより轟くんが近い。
さっきまで距離なんて意識してなかったのに、気付いた瞬間急に体が熱くなった。
「……お前の手、あったかいな」
『ーーっ…』
掴まれた手を、もう片方の空いた手で指先に触れられる。感覚が敏感になってるせいで、触れられた箇所がくすぐったくて思わず身動いだ。
やだ…。
さっきまで平気だったのに、何で急にこんな恥ずかしいんだろう…⁉︎
轟くんの顔、見れない……。
ドクンッ、ドクンッと心臓が波打つ音が耳にまで響く。握られた手も、本当に熱くなってる気がした。
「…昔からそうだった。お前は、目の前で傷ついた人がいたらほっとけなくて、こうやって俺に優しく触れて癒してくれる」
『…!』
「そんなお前が、俺は好きだった」
『ーー!!』
"好き" という言葉に、全身が強張る。
その場の時が止まったかの様にさえ感じた。
「…名前、コッチ見てくれ」
『ーーっ…、』
敢えて見ないようにしていたのに、直接そう言われたら見ない訳にはいかないわけで…。
私は渋々轟くんの方へ顔を向ける。
その表情は、思ってたより切なく、苦しそうな顔で思わず動揺してしまった。
『…と、どろき…くん?』
「……名前…」
『えっ…?』
「名前で…呼んでくれねぇか…?」
か細い声で、切なそうにそう訴える轟くんが、何だか今にも壊れてしまいそうで、儚くて…。
理由は聞かずに素直に従う。
『……しょうと…くん…』
「…もう一度…」
『…焦凍くん』
「……っ」
戸惑いながらも、2度目はハッキリ名前を呼ぶと、轟くんは唇を噛み締める。そのまま顔を伏せると、フーっと小さく長い息を吐いた。
……轟くん…。
いきなりどうしたんだろう…?
何だか、一瞬泣きそうな顔してた…。
「…ありがとな。…少しだけ、昔のお前に会えた様な気がした」
『……そっか…』
顔を上げた轟くんは、優しく微笑んでくれるけど、対照的に私は少し複雑な心境だった。
今のは、やっぱり昔の私を思い出していたんだ。
轟くんだけが覚えている私との思い出。
一体何を思い出したんだろう…。
……おかしいな。
私との思い出のはずなのに、何でこんな複雑な気持ちになってるの…。
「そろそろ教室戻らねぇと。……悪ィ、俺行くわ」
『あっ…うん、そうだね。長く引き留めちゃってごめんね』
「大丈夫だ。気を付けて帰れよ…じゃあな」
『うん…!ありがとう』
教室へと戻って行く轟くんに、しばらく手を振って見送った。
遠く離れてようやく手を降ろすと、さっきまで握られていた感触がまだ残っているのか、じんと
『……』
じっと手の平を見つめていると、先程轟くんに言われた言葉がよみがえってくる。
「……お前の手、あったかいな」
「…昔からそうだった。お前は、目の前で傷ついた人がいたらほっとけなくて、こうやって俺に優しく触れて癒してくれる」
ーー私の個性で、癒す…。
「お前にはお前のやり方があるだろ」
ーー私のやり方…。
「諦めたら、もうそこで全部終わるんだよ。夢も、憧れも…救える命も」
ーーそうだ。
私の原点は、この個性でたくさんの人を救いたいと思ったからだ。
例え、戦えなくても。
戦うだけがヒーローの全てじゃない!
雄英に入ってからずっと
一度は諦めてしまったけど、いろんな人に言われて気付いた。
やっぱり、私はーーー…!!
ヒーローになりたい……!!
第3話 おわり