第3話
お名前は?
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校内に入るとすぐに聞き慣れた声が前方から聞こえた。
「名前ッ!!」
『……轟くん……』
心配そうな顔をしながら、轟くんが私に向かって走ってくる。
それだけで泣きそうになるのを必死に堪え、私は近付いてくる轟くんに声をかけた。
『…どうしたの、轟くん?』
「それはこっちのセリフだ!何かあったのか⁉︎ マスコミの中にお前がいたから慌てた」
『…ご、ごめん。心配かけて…』
「いや、無事ならいい。それより…何であんな所にいたんだ?」
『それはーー』
私は先程と同じように事の経緯を説明した。
その途中、男の後をつけた事を話すと轟くんは目の色を変えた。
「後を付けた⁉︎ 何でそんな無茶をッ…!何もされてねぇか⁉︎」
『だ、大丈夫だよ。…やっぱり無謀だったかな?さっきもその事で怒られちゃって…』
「怒られたって…誰にだ?」
『えっと…黒いロン毛の口髭を生やした…』
「…相澤先生か」
『えっ…知ってる人?』
「知ってるも何も、ヒーロー科の担任だ」
『えぇっ⁉︎ そうなんだ!』
まさかさっきの人がヒーロー科の先生だったとは!
……そっか。
だから余計に、私の行動が軽率に映ったのかな…。
さっきの厳しい忠告にも納得…。
「相澤先生も知ってるなら大丈夫そうだな」
『そうだね…』
ぐぅ〜〜
『わっ!』
突如鳴り響いた音の原因は私のお腹だった。
慌ててお腹を押さえるが、轟くんにはバッチリ聴こえてたようで、クスリと笑われた。
「結構デカかったな」
『い……言わないで…』
恥ずかしぃ〜〜!!
そういえば急いでて何も食べずに出て来たんだった……お腹空いた…。
「ちょうど昼だし、一緒に食堂にーー…」
そう言いかけた所で、轟くんはハッとした様子で、口元を手で押さえる。
『どうしたの?』
「……いや、もしかしてこうやって誘うの……迷惑、かもしれねぇって…」
『えっ⁉︎ 何で?』
意外過ぎる言葉に耳を疑ってしまった。
どうして急にそんなこと…?
轟くんは言いにくそうに言葉を切り出す。
「弁当……作ってきてんだろ?」
『…えっ…』
「……クラスの奴から聞いた」
私がお弁当を作って来てるのを知ってる人なんて、1人しかいない。
「俺に気ィ使って言えなかったんだろ…?悪ィ……俺、そういうの気付かねぇから迷惑ならハッキリ言ってくれればーー」
『迷惑なんて私、思ってないよ!』
「!」
思いのほか大きな声が出て自分でも驚いた。
轟くんも目を丸くして驚いている。
でも、今のは完全に轟くんの誤解だ。
そこは絶対に否定したい。
『そんなこと……微塵も感じたことないよ。昨日轟くんが言ってくれた言葉も、私すごく嬉しかったよ?』
「…昨日….」
「…少しでも、一緒にいてぇから」
『それに、私も轟くんの事を思い出したいのは本当だから…少しでも一緒の時間を過ごせる機会があるなら、私も轟くんとの時間が欲しい」
「ーーッ…!!」
唯一覚えているのは、悲しそうに泣いてる小さな轟くんだけ。
そんなの悲しいよ。
本当はもっと笑ったり、喜び合ったり、楽しい事も一緒に過ごしたはずだよね?
それに、轟くんが言ってた…大事な約束も、まだ何も思い出せてない!
『だからっ、全然迷惑なんて…!』
「分かった、分かったから…それ以上はもう止めてくれ」
『あっ…ごめん……ヒートアップしちゃった』
「いや、そうじゃ……違う。名前が悪いんじゃない。それ以上喋ると、俺の理性が抑えらんねぇ…」
『えっ………
ーーええっ⁉︎』
り、りりり理性⁉︎⁉︎
とと轟くんはいきなり何の話しをッ⁉︎⁉︎
ーーって、落ち着け私…!
『と、とにかく!全部誤解だから気にしないでね?』
「あぁ……分かった」
ふぅー……。
取り敢えず、誤解が解けて良かった…。
……あっ。
最後にこれだけ伝えておかないと。
『あのね、轟くん』
「何だ?」
『…お弁当作って来てるってのは本当なの。だから、毎日食堂だとお金かかっちゃうから…これからは行ける日限られると思う』
「……そう、か…」
あからさまに残念そうに呟く轟くん。
本当、感情が素直に表に出る人なんだなぁ。
『だからね、今度から行ける日は私から誘うから、連絡先……交換していいかな?』
「…!、いいのか…?」
『もちろんっ!』
さっきとは対照的に、嬉しそうな顔で携帯を取り出す轟くんが何だか可愛くて、思わず笑みがこぼれた。
それからすぐに2人で他愛のない話しをしながら食堂へと向かったーー。